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私はビーチコーミングといって、浜辺に流れ着いた漂流物や貝を拾うことを趣味にしている。毎週のように行けるわけではないが、時折、首都圏のある海辺の街に向けて小さな旅をする。そして、浜辺を歩き、ときには珍しい貝を拾ったりして、一人微笑むのだ。
だが、悲しみを感じるときもある。それは流れ着いたゴミを見たときだ。発泡スチロールの破片から空き缶、炊飯器の部品にペットボトルまで、そういうものが浜辺で見つかるときぐらい、悲しいことはない。
釣り糸も少なくない。あるとき見つけた糸は、素麺ぐらいの太さがあったから、私はチャップリンの映画「黄金狂時代」を思い出した。あれには、靴を茹でて食べようとする場面があったけれど、私が見つけた釣り糸も、茹でたら食べられそうだった。
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イカ釣り用のエギ(餌木)と称するルアーの一種はカラフルで、見ていて楽しい。尾部に鋭い針の塊があることを除けば、コレクションしてもいいかなという気にはなるけれども、これもまた流れ着いたゴミなのだ。
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その他に、中国語らしき言葉が刻まれた漁具の類も多い。島崎藤村の歌「椰子の実」のように、ヤシの実でも落ちていれば、私の心も明るくなるのだが。
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特に気になるのは、数ミリ四方のプラスチックの破片、マイクロプラスチックだ。そういう物が、波打ち際に数えきれないくらい落ちている。私がビーチコーミングに通う場所は自然豊かで有名なのに、この有様だ。
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自然界に存在しない人造物であるプラスチックが、それもマイクロサイズのそれが、どうしてそんなに海にあるのだろう。その数の膨大さに言葉を失いつつ、そのような、人が拾うことが困難なマイクロプラスチックをどうやって回収すべきなのか考えてみるが、妙案などあるわけもない。だから、私は海に行くと、喜びと悲しみのカクテルを飲んだ気持ちになる。
それらは私が捨てた物ではない。だが、私と同じ人間が海に捨てた物だ。だから、どうにかしてそれらのゴミをなくしたいと思った。いつまでも美しい海を、生命溢れる母なる海を保てるか。それは私たち人間の意志にかかっている。決して、海をゴミ捨て場にはしない。そう思うことから始めることにしよう。
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