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「夏の花」三部作の読書感想文


原民喜著「壊滅の序曲」、「夏の花」、「廃墟から」の「夏の花」三部作を青空文庫で読みました。
原子爆弾投下の40時間前までの街の様子を描写した「壊滅の序曲」。
昭和20年8月6日に著者が見たこと、聞いたことを記録した「夏の花」。
原爆投下後の約4ヶ月までを記録した「廃墟から」。
原民喜さんは感情を持たない機械のようにあの日に起きたことを記録していきます。その事により読者は自分の言葉で爆心地とその周辺で起きたことを整理する権利を与えられます。
「永遠のみどり」では著者は決して機械のように記録してわけではないことが伺えます。フランス留学が決まっているEはまだ何者でもありません。EさんとUさん、そして、井の頭公園のボートが遠藤周作さんと祖田祐子さんに宛てた遺書に繋がると考えると非常に興味深いです。
遠藤周作さんは自身のエッセイの中で原民喜さんとの思い出を聖域のように描いていました。親交のあったUさんを交えた思い出、フランス留学が決まったあとの最期の会話では原民喜さんの新しい作品を熱望していたことが伺えます。
その遠藤周作さんが原民喜さんの章で読者にぜひ「夏の花」を手にとってほしいと最後に書いていました。
本来ならば読書感想文はネタバレしない程度に内容に踏み込みます。しかし、この三部作はそれが絶対に許されない。全体を受け入れるのみで、内容の切り取りは絶対に許されないように思います。
現在の世界で起きている現状と合わせて考えると本当の意味での「戦後」に到達する困難さが思い知らされます。
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