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「雲の裂け目」の読書感想文

原民喜著「雲の裂け目」を青空文庫で読みました。
作者は亡くした妻についてこう綴ります。
「僕たちは死のことを話すことによって、ほんとうに心が触れあうようにおもえたものだが……。」
とても不思議で、現実の会話が幻想的で浮遊感が漂います。
そして、作者は父親を亡くしてから自然の中に今は亡きのその人の存在を意識するようになったと記しています。
英会話教室でよく同席する知人とは「お正月にはには静岡までドライブしてお寿司を食べる。」、「イケメンの担当美容師がお店を辞めた」等々の会話はしていました。
彼女から「私は父親の幽霊に遭った事がある。」と言われたことがあります。
その時は父親の事を大切に思っていて、それが亡き父親に遭うことに繋がったのだと思っていました。それからの会話は相手に対する親しみと信頼感が起こって、楽になった事を覚えています。しかし、その理由は未だに上手く説明できません。
この作品を読むと彼女に起こった事を説明してくれて、腑に落ちる感覚があります。会えないからこそ、その存在を強く意識する。その時に相手の輪郭が見えてきて、会話を進める方向を見つけやすくなる。それはとても心地良く、気持ちを軽くしてくれます。それが良い化学反応に繋がったのでしょう。
「文学は実学」とはよく云われることです。とても深い部分を意識扠せられる作品でした。
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