映画「ルート29」の感想文
綾瀬はるか主演「ルート29」を観ました。
修学旅行中の学生の優等生らしき3人組、優等生としてストレス発散を必要とする彼等だからこその行動によって、この映画は集団からから外れた彼等、彼女らの映画である事を象徴しているようでした。
清掃員をしている中井のり子は入院中の患者から「姫路にいる子供を鳥取に連れて来てほしい」と頼まれます。そのためには移動手段となる自動車が必要で、清掃員の立場を上手く利用して、それを調達します。姫路で子供を見つけて、鳥取に戻る途中で大型犬を散歩中の赤い服の老女、横転した車の中にいたカヌー好きの老人とその仲間たち、そして、教師をしているのり子の姉と関わりながら鳥取に戻ります。基本的に主な登場人物は外側の人間で、それぞれに悩みや不満を抱えています。そんな彼等の魅力を象徴するセリフがありました。
「典子は話を聞くのが上手だね。私に興味がないことはわかってる。」
確かに殆どの登場人物たちは他人に興味は殆どありせん。それにより彼等は自由に喋り、行動して、典子はそれを黙って聞いています。彼等は自由に意識の本音に近い部分を曝け出します。
もうひとつの魅力に音があります。音楽ではありません。背景に流れる音楽は徹底的に抑えられています。その代わり、ホイッスルの音、海の音、タバコに火を点ける時の微かな音が場面を盛り上げます。
映画の原作は詩集です。エピソードを積み重ねていって、その合間にトリッキーな要素を挟み込んでいく、最終的な謎解きは観客に任せる。結末を見た時には現代詩を目の前に突き付けられた現代の詩人、詩壇、愛好家、傍観者、その他、それぞれに違った反応を象徴しているようでした。賛否は完全にはっきりと分かれる映画だと思います。今回は新宿の歌舞伎町の映画館で観ました。いわゆる"トー横"エリアの規制用の柵を通り抜けて、紀伊國屋書店新宿本店に立ち寄ってから夕食を食べてから気付きました。自分は鯨に飲み込まれた人間である。時間を掛けてじんわりと染み込んでくるそんな映画です。
子供を連れて来るように依頼した母親役の市川日和子さんが特に良かった。誰だかキャストを確認するまで分からなかった。そして、綾瀬はるかさんの掠れたピンクの清掃服と演技は魅力的でした。
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