詩集「透明ディライト」の読書感想文
一方井亜稀さんの「透明ディライト」を読みました。この詩集には多くの謎があります。
白いブックカバーの約8割の部分を覆う半透明のシートにはこの詩集を象徴するような言葉が印刷されています。そして、本体を覆う白いブックカバーは本体よりも上下で約3mmずつ小さくなっています。それによりカバーの下には白銀に包まれた本体がある事が分かります。白銀、純白、半透明が重なり合っています。
ページをめくると題名と目次よりも先に一遍の詩があります。ここから先は謎だらけです。
「セブンスター」は空白のページを挟んでジョイス著「ユリシーズ」の訳注のように小さなサイズの字で印刷されている詩行があります。
濡れた灰・・・灰は痛恨の印。または人間のもろさの象徴
〜ジェームズ・ジョイス「ユリシーズ」第一挿話 テレマコス〜
「ユリシーズ」は訳注を活用しても難解です。この詩集は難解ではありません。それでも確実に言葉の迷路に迷い込みます。
「夜の葉」は美術館からはじまります。次に収録された「写し絵」はバスの中からはじまります。しかし、その次のページに進むとバスは路上を走るバスなのか?美術館に展示されたインスタレーション作品なのか?それとも夢の中の美術館なのか?どれも間違っているような、合っているような。
「老犬」の中の「笑う犬」は動物の犬のようでもあり、飼い主の仕事の愚痴を聞く犬の扮装をしたコント師のようでもあります。
それぞれの言葉と言葉の間に裂け目があります。大地の裂け目が深い地底で繫がっているように言葉同士も繫がっているようです。氷河の割れ目クレパスに落ちるような感覚。滑り落ちることを楽しんでいます。
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