メイキング動画がYouTubeで公開されたことで議論を呼んでいるようです。この騒ぎをまとめた海外の記事を日本語訳しながら解説していきます。
▼翻訳)ラブアンドサンダーの筋肉に疑いの目:
シリーズ4作目にしてまさかのカムバックを果たし、筋骨隆々なマイティ・ソーに変身したジェーン・フォスターを演じたナタリー・ポートマンですが、彼女の筋肉が4月の予告編公開からSNSで盛り上がっていました。しかし売れっ子にはアンチが付き物です。以下は7月11日のDaily Dotの記事を引用して日本語訳したものです。
海外記事からの引用はここまで。なお最後の一文によると、ナタリーの事務所からの返信はまだ無いようです。
▼記事に対する私の感想:
半分は真実だけど、半分は嘘が混じってる。という感じですかね。
ちょっと印象操作の臭いもします。
少なくとも、記事の中の「これらの説明は彼女の腕のドットを完璧に説明する」は明らかに間違いです。
身長を高くするためなら「腕だけにドットを入れる」ことの説明にはなりません。もっと言うと、身長を高くする「だけ」なら、そもそもドットを入れる必要がありません。この記者のロジックは誤りです。
ケヴィン・ファイギとプロデューサーがどのような文脈で「身長を高くしただけ」と発言したのかは分かりません。つまりドットに対する説明のために発言したものではない可能性があります。「ナタリーはすごく頑張ったんだ!僕らがやったのは彼女の背を高くすることだけだったよ!」とゴキゲンで映画をPRしていただけかもしれません。その場合、そうした発言をライターさんが都合よく引用してきただけのように見えます。
そもそも、記事のタイトルが『トロールたちはナタリーポートマンの腕はCGIだと信じている』になっており、このように懐疑論者のことを「トロール」と表現してる時点で、ライターさんの敵対心がむき出しです。(苦笑)
さらに記事の中には「懐疑論の根本には女性差別がある」という一文もしれっと入っています。たしかに中には「女があんな筋肉つけられるわけないだろ」と発言してる輩もいるかもしれませんが、全員がそのような感じだと決めつけるのは問題でしょう。
以上のことから、このライターさんは典型的な『切り分けができないタイプの残念な人』だと思われます。もしくは、わざとバカなふりをして、「ナタリーポートマンの筋肉を疑う人の方がおかしい」という雰囲気のヨイショ記事を書いているだけの可能性があります。
ちなみにライターさんは、名前はギャビア・ベイカー=ホワイトロウ(Gavia Baker-Whitelaw)といって、女性の方です。プロフィール写真の眼光が鋭くてちょっと怖いですね。DailyDotのお抱え記者で専門はSF映画なのだそうです。名前に「白い法律」という文言が入ってるあたり、なんか面倒臭そうな感じもします。深読みしすぎかもしれませんが(苦笑)
▼筋肉CG説に対する私の意見:
実は私自身はこの記事を読む前に映画を観ました。
その時点で、CGで微調整していると見抜きました。
ラブアンドサンダーのナタリー・ポートマンは筋トレと食事で腕を太くしたのは間違いないですが、腕が目立つ時だけCGで盛ってました。このため、一つのシーンでもカットごとに太さがコロコロ変わるので、気になって映画に集中できない時があって困りました。(笑)
ネタバレを喰らいたくなかったのでメイキング映像は映画の後日に観ました。だから、後からナタリーの腕のドットを見て「ああやっぱりな」という感じでした。
私はスポーツや武道の経験があり、そこで培った観察眼のおかげで、人の筋肉を観察することには自信があります。特に格闘技経験者なら劇中でムジョルニアで変身後のジェーンの身体の形が何度も何度も変わっていたことに気づいた方は結構いたと思います。パッと見ただけで相手がどのくらい強いか見極める必要があるので。多くの方には分からない些細なレベルの差分かもしれませんが。
とはいえ、私の観察眼をいくら自慢しても説得力に欠けると思うので、日本が誇る筋肉のプロフェッショナルの発言も引用しておきましょう。
▼なかやまきんに君の意見:
公開直前プレミアに登壇したなかやまきんに君が興味深い発言を残しております。
重要なのは後半です。
きんに君は、筋肉ネタ一本で20年以上日本の芸能界のトップで活動するタレントであり、先日にアメリカでボディビル大会(シニアの部)でも優勝した名実ともに本物の筋肉プロフェッショナルです。
そんな彼が「シーンごとに筋肉が違う」と見抜いたのは大きいです。
注意したいのは、彼は筋肉のプロですが、ハリウッド映画のプロではありません。おそらく彼は「ハリウッド映画ではCGで修正するのは当たり前」だと知らないから、この発言になったのでしょう。
▼アメリカの筋肉YouTuberニキの意見:
もう一人くらいプロの意見を参考にしてみましょう。
150万人の登録者を持つGregg Doucetteが4月に出した動画です。
全訳してると長すぎるので、こちらはポイントをまとめます。
なかなかキャラが強いオッサンでしたが、言ってることはすごく真っ当なことばかりだと思います。
▼逆の視点で考えてみる:
逆に、あの筋肉が全部本物だったと仮定してみましょう。
この時、大きな問題が生じます。
あの筋肉が本物だったなら、痩せているシーンをどうやって撮影したのでしょうか?
服を着てても分かるくらい、病気のジェーンは細かったですよね。
もちろん皆さんご存知の通り、MCUにはキャプテン・アメリカ第1作やエンドゲームのトニーで実績はあります。つまり同じ技術で痩せたジェーンを実現可能ではあります。
でも、だとしたら、そちらのVFXを宣伝しても良いものでしょう。しかし今のところそのような苦労話は出てきていませんね。クリス・エヴァンスの時はかなりPRしていましたが、今回は何故でしょうか。
答えは簡単で、ナタリーの腕は「太すぎない」だったので、衣装だけで十分に着痩せして見せることができた、なのではないでしょうか?
(EGのトニーと同じくネタバレ防止の観点からなのかもしれませんが)
▼筋肉に対するナタリー本人の意見:
それでは、満を時して、最後のカードを切りましょう。
なんと、ナタリー本人がインタビューで答えているのです。
はい。
「ムービーマジック」と言葉を濁していますが、彼女の努力「だけ」ではなかったことは証言が取れました。
もちろんムービーマジックの中には、CGの他にも照明やカメラ角度などの古典的な手法も存在はしますが、だとしたら「CGだけは使わなかった」くらいのノリで、もっと強調して良いところだと思います。身長の話も混ぜ込んでボカすあたりはさすが上手いですね。ディズニーから想定問答が与えられていて、よく準備されていたのでしょう。
何より、現在の彼女の肩と腕の細さを見てください。普通に考えてあのレベルまで筋肉質な腕になったら、短期間でここまでは戻らないですよ。(メイキング映像に映っている程度の適度に脂肪の乗った太さなら十分考えられる範囲だと思います)
▼まとめ:
ここまで書いてきたことを整理しましょう。
メイキング映像には腕にVFX用のドットが映っている。
少なくとも身長を高く見せるためにVFXが使われたのは事実。
目立つシーンだけCGで筋肉を強調しているように私には見えた。
なかやまきんに君は「シーンごとに筋肉が違う」と発言。
登録者150万人のYouTuberはこの短期間での増量は不可能だと分析。
後日になってナタリー本人も映画のマジックとの合わせ技だと発言。
という感じになりました。
最終的な判断については読者の皆さんに委ねます。
なお私自身としては、CGで筋肉を強調したことには確信していますが、そもそも筋肉を多少CGで盛るのは「全然アリ」という考えです。なんなら役者さんの顔のメイクと本質的には同じだと思うからです。
ナタリーの場合は、痩せ型の40歳の女性が4ヶ月であそこまで筋肉をつけたのは十分に賞賛されるべきことだし、あそこまで実物を太くしたからこそ筋肉CGが本物に見えやすいという側面もあります。
私は未確認なのですが宣伝文句の中には「100%天然の筋肉です」というものがあったらしく、さすがにそれは誇大広告だとは思いますけどね。それだと嘘になっちゃいますから。
ただし一方で、観客側のリテラシーの問題もあるかなと思います。
たとえば実写にこだわることで有名なクリストファー・ノーラン監督だって撮影時に使う爆破装置や安全用のケーブルやカメラなどを後からCGで消しています。
ノーランは「実写で出来る部分は実写でやる」だけで、CGを使わないとは言ってません。トップガン・マーヴェリックだってCGをたくさん使っています。それを勝手に「実写にこだわるならCGは全く使わないはずだ」と勘違いして、怒ったり落胆するようなことは避けたいものです。
美しい顔のスターだってメイクで肌荒れを隠すことはあります。今回のナタリー・ポートマンの腕の筋肉CG加工もそういうレベルの話だと思います。
了。