【脚本ミス?】ここがヘンだよ、アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
アバター2の変なところをまとめました。
主に脚本のダメなポイントを茶化していきます。
あくまで「映画の地平線」に乗った上での指摘になります。
フィクションに対する「そもそも論」はやりません。
(青いエイリアンに感情移入なんて無理、みたいな話はしない)
めちゃネタバレなので、未視聴の方はブラウザバック推奨です。
▼ジェイクが森を去るだけじゃ足りんのよ:
地球に追い返したスカイピープルがパンドラに再び侵略してオマティカヤ族(森のナヴィ)と戦争状態になってから1年。今や森の一画にはファイナルファンタジー7の神羅カンパニーのような巨大都市が建設されて、ジャングルでは毎日のように地球人とナヴィの血が流れています。
森の中を鉄道が敷かれているということは、あのような巨大都市(または重要な基点)が複数存在することになりますから、地球人側の全体像はこの映画で描かれている以上に大きそうです。
そんなある日、言いつけに叛いて遠出した子供達がクオリッチと遭遇した際にスパイダーが捕虜にされてしまったので、ジェイクは「奴の狙いは俺だから、村を守るために」と主張して一家揃ってオマティカヤ族から追放されることを選び、旅に出ました。
いやいや、それだけじゃ足りないでしょ。(笑)
そもそも15年前にジェイク、ノーム、マックス、グレース、その他複数人の地球人科学者は雇い主であるRDA社に反乱(クーデター)を起こしたわけで。それから15年経って、今では地球人の都市や鉱山や補給線(鉄道)を日常的に攻撃している時点で、もうジェイク個人の問題ではなくなっているんですよ。なぜジェイクがオマティカヤ族から去れば残りの村人は無事になると言えるんですか?(笑)
それともジェイクの戦線離脱と同時に、オマティカヤ族は地球人と戦うことを完全放棄して森でひっそり暮らす道を選んだのかしら?
15年前と異なり、地球人がアンオブタニウム採掘(エネルギー物質の採取)からトゥルクン漁(老化防止成分の抽出)に全振りしたから、ナヴィは森の中で静かに暮らしていれば文句を言われなくなったのかしら?(いやいや、そんなことないでしょ。もし現実世界で不老不死の薬が見つかっても、石油や天然ガスの採掘を止めたりしないでしょ:笑)
オマティカヤ族の人々が「ジェイクは去りました」と言えば、大佐率いるブルーチームは大人しく帰ってくれるとでも?(その後のシーンで海のナヴィの集落が燃やされているのを見て、私は正直「だから言わんこっちゃない」と思いましたよ;これ絶対に森のナヴィも同じことされるでしょ)
ノームをはじめRDA社の元職員(科学者)たちはどこで暮らしているんですかね?(ハレルヤマウンテンのどこかで狭いキャンピングカー生活をずっと続けているのかしら)
そもそもジェイクが森を去ったことをクオリッチとスパイダーがどうやって認知すると思ってたのよ?(ノームが逆探知されない何らかの方法でRDAにメッセージを送った可能性は残ってるかも;でもそれで大佐が納得するとは到底思えない;例えば一度スパイダーをわざと逃してジェイクに合流させて海に逃げるのを見届けさせる、みたいな展開にしないと筋が通らない)
…といった感じで、ジェイクが去るのはまだ良いとしても、残されたオマティカヤ族の扱いが適当すぎるのは気になってしまいました。
▼子供達がバカすぎるw
子供だからという理由では済まされないくらいに子供達がトラブルメイカーでした。
列車強盗の偵察任務をサボる。
禁じられた森に幼児を連れて遊びに行く。
面倒は起こすなと言われているのに喧嘩する。
一歩間違えれば食われてしまうサメの縄張りに放置する。
リーフの外側は禁じられているのに何度も遊びに行く。
酋長に禁じられたのに「殺し屋トゥルクン」と密会。
非常事態なのに子供達全員で三つ子岩まで行く。
まあ、ほとんどが次男ロアクの行動なのですが。(苦笑)
ジェイクの3人の子供達の中で唯一の5本指で眉毛が生えてる地球人型ナヴィとして生まれたロアクは、ジェイクの性格を強く遺伝している、で説明もつくかなと途中までは観ていました。しかし、捕鯨船の発信機のことを伝えるために殺し屋トゥルクン(パヤカン)の住処へ向かうロアクに海のナヴィを含めた子供達全員が着いて行った時には、さすがに呆れてしまいました。
まあロアクを想うツィレヤと、妹を危険に晒したくない兄アオヌングまでは理解できるとしても、トゥクを連れて外海まで追いかけたキリはマジで意味不明ですよ。あ、そういえばキリも地球人型ナヴィでした。ジェイクも含めて問題行動を起こしてるのは全て地球人ですね。(苦笑)
大前提として「子供は大人に予測できない行動を取る」というのは踏まえた上で、もう少し危険に敏感でも良いと思うんですよね。だって地球人じゃなくて、ナヴィですよ。パンドラの厳しい自然の中で、自然を畏怖しながら生活している人達ですよ。普通の映画によくある「都会の子が田舎に来て怖い物知らずゆえにバカな行動をとる」のとは話が違います。特に年上組は。
そういう警戒心がアバター1の村人や子供からは感じ取れたのですが、アバター2では物語を首尾良くドリブンさせるために、敢えて子供達がバカな行動に出る脚本にしている印象は受けました。一回だけならまだしも、短時間に何度も見せられると正直しんどくなってきます。
これ本当にキャメロンのアイデアだったんですかね?なんか共同脚本で名を連ねている人達のことを私は疑ってしまうんですけど。(苦笑)
いやあ、でもね…
よく考えたら、この子供達、学校に通ってないんですよ。だからバカなのは仕方ないのかなあ。ゆたぼんみたいな子供が7人くらい集まったら、きっとああなってもおかしくない気がします。(苦笑)
▼トノワリはどこへ行った?
ツィレヤが人質に取られてしまい、パヤカンが口火を切ったので、メトカイナ族(海のナヴィ)が総攻撃に出ます。
素晴らしい大活躍。次々と地球人のモーターボートを駆逐していきます。中には地球人に銃撃されて戦死する者もいました。壮絶な戦いです。
ところが、巨大捕鯨船が迎撃されて、日食が始まった頃からピタリと居なくなります。
お前ら、どこ行ったんだよ!(笑)
メトカイナ族の目的は殺されたトゥルクンの仇討ち(地球人の殲滅)もありますが、今回の出陣のきっかけは子供達の救助だったはずです。つまりメトカイナの子供達を村に回収するまでは、その現場に用事があるはずです。敵を殲滅したから「よし帰ろう」とはなりません。
キリと一緒に行動していたアオヌングとロトォの二人はキリがウィンフリート伍長のイクランに連れ去られた後はどうなったのか映画では描かれません。もしかしたらメトカイナの大人達に回収されて村に戻ったのかも。
しかし少なくともツィレヤはまだ現場に残って、結局最後までネテヤムの遺体に付き添っていました。
そのあいだ、トノワリ酋長とロナル様はどこ何をしてたので?
どちらかはアオヌングを村に連れて帰っていたとしても、どちらかは現場に残りそうなものですが。
むしろメトカイナ族の大勢で協力してツィレヤを探すのが普通じゃないですかね?(海底で死体を探していたわけでもあるまいし)
ここは今回の唯一の「完全なる脚本ミス」だと私は思います。
申し訳ないですが、弁護の仕様がありません。
要するにクライマックスで「サリー家は一致団結してパヤカンのひれの上で抱き合う画が撮りたかった」の一心で、余計な人達を都合良くごっそり排除しただけの形になってしまいましたね。
▼葬儀シーンで忘れられたもの:
もっと言うと、ラストの葬儀シーンにも違和感があります。
死んだのはネテヤムだけじゃないでしょ。
捕鯨船との戦いで少なくない犠牲者が出ているはずです。
劇中でも撃たれて海に落ちるメトカイナ族が映っていました。
普通に考えれば、合同葬になると思います。
だから棺の船で運ばれるのがネテヤムだけじゃなくて、いくつかの棺の船があって、いくつかの死体を同じように金色のナウシカのイソギンチャクに預ける場面になってて。その中の一人がネテヤムである。という描写なら、私は全く異議ありませんでした。
あれは一人ずつしか対応できないルールになってるのかしら。
まあ、制作の舞台裏的にはラストバトルで存在を消されたトノワリと同じ理屈でしょうね。(苦笑)
▼クオリッチの改心が早すぎかも:
自分の骸骨を粉砕するのは1ミリも共感できませんでした。
あれはなぜ?
新しい身体で生きていく決意?
過去に任務失敗した自分への怒り?
どんな心境変化があったのかしら。
クオリッチがカタコトとはいえナヴィ語が話せるのは
ちょっと設定に無理があると思ったかなあ。(笑)
アバター1で基本ナヴィを人種差別してたじゃん。
白人様はあんな「人外」の言葉なんぞ、覚えたくないと思うぞ。
そういう意味では、ブルーになった自分の顔を
憎らしく見るシーンがもう少し欲しかったですね。
アバター(正確にはリコンビナント)になってしまった苦悩。
そこらへんはアバター3以降に期待かしら。
「俺たち今からナヴィになりきるぜ!」
って宣言してからリコンビナント部隊の全員が
ズボンをハーフパンツにして裸足になってたのは
ちょっと可愛いと思ってしまいました。(笑)
▼クオリッチその髪型なんとかせいやw
いや、ジャンボ尾崎かよ。(笑)
ジャーヘッド(刈り上げ)の海兵隊らしい髪型は良いんです。
ただ、襟足に付けられた三つ編みの触手よ。
日本では絶妙に20年前のマイルドヤンキーの子供みたいでダサい。(笑)
でも3時間くらい見てるとさすがに目が慣れてきます。
空条承太郎さんの帽子と一体化した頭髪みたいなもんですね。
▼3時間は「短すぎる」:
実はこれが全ての諸悪の根源です。
3時間では短すぎるのです。
「どうして?3時間でもトイレが心配なのに!」
…という声が聞こえてきそうですが、
そういう問題じゃないんです。
アバター2はいろんな要素を詰め込みすぎです。
物語も、小ネタも、とにかく情報量が多い。
本来この分量を「まともなセンス」を持つ監督が普通に映画にしたら
6時間くらい行くような気がします。
それを無理して縮めてる。
ドラマ1シーズンくらいの情報量を3時間まで圧縮すれば
どうしたってダイジェスト版のようになってしまいます。
脚本には無理な展開も生じるでしょうし、
新規ユーザーや異文化圏の人達には説明不足にもなるでしょう。
アバターの物語の本質的なテーマは「侵略と人種差別」なのですが、近代まで2000年間ずっと侵略も人種差別もほとんど経験してこなかった日本国では、あの程度の説明では理解できない人が多数派になるのは当然です。異民族に土地を奪われた経験や文化がない日本人には(それなりに自発的に真面目に勉強しないと)あの恐怖は理解できません。(*一応補足しておくと、現代の日本は国土と経済に対するチャイナマネーによる「静かな侵略」がすでにかなり進んでいるという見方はできますが)
となると、どうしても多くの日本人はサブテーマの「自然との共生」「家族を守る」くらいしかキャッチできなくなり、登場人物ののっぴきならぬ事情や人類が生来抱える矛盾や不条理を慮れなくなり、ただドンパチやってるだけの映画に見えてくるのです。これが日本で「アバターはバカ映画」と罵られる最大の原因でしょう。
あとはロナルの妊娠を見ていれば分かるのですが、この映画ではジェイク達が海に来てからかなり長い月日が経過しているはずです。そのくらい長い時間をかけて子供達は海の生活に適応したのであり、そのくらい長い時間が経っているからこそ子供達は過ちを繰り返しました。ところが映画はトントン拍子で話が進むので、先の章で説明したような「懲りないバカ子供」のように見えてしまうのです。もしこれが連続ドラマの形式を取っていれば、かなり印象が変わったと思います。
そんな折に海外から気になるニュースが…
ソースのYouTubeも観ましたが、なんか如何にも業界人っぽく見えるオジサン2人が笑いながら「これは噂なんだけど」と談笑していました。眉唾案件だとは思いますが、「キャメロンならありうる」と思えてしまうから困ります。(笑)
もしこれが事実なら、当然『アバター2』でも似たようなことが起きていたはずです。
VFXを9時間作業してから映画を3時間に縮めたら、VFXに事実上3倍の金をかけることになります。これは流石に会社として易々とOK出せるものではないので、要望が通る可能性は低いと思いますが、ラフカットが9時間あるというのは事実の可能性が高いでしょう。(2017年1月にザック・スナイダーがジャスティスリーグを214分に編集したのが可愛く思えてきますね:笑)
となると、気になってくるのは「後日9時間バージョンが円盤特典やストリーミングで公開されるのか?」という点です。
実際にアバター1ではブルーレイの特典映像に削除シーンや、VFX未完了シーンが多数(科学者のクーデターから、ノームとトルーディの誰得ベッドシーンまで!)収録されていたので、何らかの形でアバター2や3の完全版が視聴できる環境になることを願います。
もし完全版を配信してくれるならディズニープラスに加入します。(笑)
▼あとがき:
ちなみに私はアバター2を基本的には楽しく観ましたよ!
ライトに絶賛している感想はこちらに書いてあります。
トータルでは、すごく好きな映画です。(笑)
了。