バビロン【Jシネマレビュー#34🎬】
遅ればせながら、私にとって2023年1本目の映画館鑑賞作品になった本作🎬
若き名匠デイミアン・チャゼルの新作ということで、物語の終着点にも注目しながら鑑賞してきました🎞
↑あくまで個人の感想です
・内容 15
・演技演出 17
・視覚効果 15
・音楽 18
・エモーション 17
189分に及ぶ超大作であるにもかかわらず、あっという間に感じたのは、それだけ私自身が作品に引き込まれていたということなのでしょう🥺
「セッション」の狂気、「ラ・ラ・ランド」の哀愁、「ファースト・マン」の夢追いなど、デイミアン・チャゼル監督の過去作のエッセンスが散りばめられたチャゼルワールド全開の作品であったと思います。
また、サイレント映画からトーキーへと移り変わる激動の時代の中を生きた映画人たちの凄まじさと映画界の変遷、混沌を体感できるでしょう!
キャストについても、キャラクター性のある演者がそろいましたが、マーゴット・ロビーの演技は圧巻でしたね。
ネリー・ラロイは、ハーレイ・クインにシンクロする狂気っぷりでしたし、「アムステルダム」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でもそうでしたが、彼女は紅一点、作品に華やかさを生み出してくれる存在であると感じられます💃
それと、出演時間はわずかでしたが、トビー・マグワイアの危険な香りがプンプンする怪人の演技は素晴らしかったです🧛
調べてみたら、彼は本作の製作総指揮も担当しているんですよね!
ジャズをメインにした音楽もノリがよく、また作品にオシャレ感を加えています!
デイミアン・チャゼル×ジャスティン・ハーウィッツのコラボは、本当に外れがなく、これからもこのタッグに注目です!
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"映画に夢と情熱を持つ人々"
⚠️ネタバレがあるのでご注意ください。
1920年代の映画産業が、いかに混沌としていて、秩序のない無法地帯であったかというのが、前半の低俗なパーティーからも見て取れると思います!
しかし、そのようなパーティーを通じて、役をもらえる駆け出しの演者がいたり、反社組織と手を組み、資金を得る映画関係者がいたりしたことは事実であったのでしょう🤔
前半は、本当にデイミアン・チャゼル作品なのかと思うくらい、ぶっ飛んだ内容で、圧倒的に狂った世界観を鑑賞者に見せつけてきます。
ただし、よくよく作品を考察していくと、デイミアン・チャゼル監督の作風をよく表していると思えるところが見えてきます🧐
何かに対して異常なまでに執着し、夢と情熱を持って取り組む姿を映し出す監督のこだわりは、「セッション」のドラムであったり、「ラ・ラ・ランドの」ジャズであったり、「ファースト・マン」の宇宙飛行であったりと、今までも見てきましたが、「バビロン」では、そのこだわりが映画作りへの熱でもって伝わってきます。
サイレント映画のスターであった、ジャック・コンラッドが、時代と共に落ちぶれていきながらも、銀幕の世界に持ち続けたこだわり。
体当たり的に役をつかみ取り、スターへと駆け上がっていくネリー・ラロイが見せた成功へのこだわり。
彼ら二人の思いもそうですが、当時の映画のワンシーンを取るための熱量が凄まじかったですよね。
演者も制作者も死人がでるほどでしたから…😓
ハリウッドの混沌とした世界と、もがきながらも必死に成功を収めようとする人々の描写が動と静の関係を成しており、面白かったです!
"マニーの涙を考える"
映画のラストでマニーは、かつての職場キノ・スコープ社を家族と訪れ、その後ひとりで訪れた映画館では『雨に唄えば』が上映されており、感激のあまり、涙を流します🥲
そして、サイレントからトーキーへ移り変わる映画期から、現代映画までのインサート映像が流れ、彼の涙と共に映画は終幕します。
マニーの入ってきた映画館には、老若男女問わず、たくさんの人たちが、さまざまな鑑賞方法、感情で映画を観ています。
映画が大衆娯楽と化した様子を写し出していると言えますよね。
そのような中でも、泣きながら映画を鑑賞するマニー。
自身のキャリアの転換点にもなるほどの影響を与えてくれたジャックも、成功を共につかんだネリーも、もうこの世にはいないのです。
彼が流した涙は、映画の繁栄への喜びとも捉えられますが、それよりは、苦楽を共にしてきた仲間たちを思っての愛惜の涙と捉えられるでしょう。
映画評論家のエリノアが、ジャックに語りかけた、人は必ず亡くなるときがくるが、演者はその後、永遠にフィルムの中で残り続けるといった言葉が印象に残りました🥹
マニーは、亡くなってしまった彼らを思いながらも、涙を流したのではないでしょうか。
また、映画界の混沌とした時代を生き抜いてきた自身の苦労を思ってのこともあるかもしれません。
マニーの涙の理由は、さまざまな角度で考察することができます🤔
このオチの描き方こそ、若き名匠デイミアン・チャゼルの作品の終わらせ方の巧さと言えるでしょう。
ど派手なパーティーで始まる冒頭のインパクトが強烈であっただけに、ラストシーンのしんみりとした静けさが、心に沁みました。
映画史の変遷を映した3時間越えの超大作を、スクリーンで観てみてはいかがでしょうか?