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デザイン思考の「プロトタイピング」について

デザイン思考には5つのフェーズがあるとされています。今回はその4つ目のフェーズである「プロトタイピング」についてみていきたいと思います。

デザイン思考「5つのフェーズ」a4

プロトタイプの必要性

なぜプロトタイプが必要なのでしょうか?

やはり、ここでも重要になってくるのが“ほんとうの課題はどこにあるんだろう”という視点です。これを検証、確認するためにプロトタイプが必要なのです。言い換えれば、自分自身が考えるため、問いと向き合うために必要ということです。

また、このあとに続くフェーズ「テスト」でユーザと会話をするために欠かせません。人は具体的に聞くと、具体的に答えてくれるからです。アイデアを具体的にするためのプロトタイピング、ということです。

プロトタイプのレベル

プロトタイピングを行う上で問題となるのが「どの程度まで作り込めばいいのか」という点です。これについてはいろいろと議論がありますが、リーン・スタートアップのMVPの考え方が援用できると思います。

プロトタイプの6レベル

「Embrace Warmer」の動画にも出てくるようにまずはラフスケッチから始めるのがいいと思います(彼らはナプキンにスケッチしている!)。そうして必要に応じて作り込んでいくようにします。ここで大切なのは製品・サービスを作り込むことではなくて、常に“ほんとうの課題”を見つけるために必要な要素はなにか、と問い続けることです。その検証に必要なところまで作り込めばいいことになります。

しかし、これがとても難しい。2つの側面から難しいのです。ひとつ目は自分がそれをユーザに(見せたくない)と思ってしまうこと、ふたつ目はユーザが欲する程度が分野によって異なることです。

1つ目の(見せたくない)という“抵抗”はレガシーなエンジニアに多く見られます。もう少しわかりやすい表現をすると頭の固いエンジニアが(手書きなんて見せとうない!)と嫌がります。気持ちはとてもよくわかるのですが、フォーカスしているところが違うのだ、という話を根気よくする必要があります。聞いてもらえないことの方が多いのですが(笑。

2つ目はユーザが完成品を欲する場合です。業務システムの場合はこちらの割合が大きくなるのかなぁ、といった印象です。

こういうことがわかるだけでも、デザイン思考のよさが生きるなぁ、と思いながら日々試行錯誤しています。

満たすべき3つの要件

アイデアを形にしていく段階で見ておきたい要素として『クリエイティブ・マインドセット』では次の3点が挙げられています。

技術・ビジネス・人間p37

簡単にまとめれば、①ユーザのニーズを満たすことができる②実現可能な製品・サービスで③お金がもらえること、となります。

3つの円が重なる部分を意識しておくことが大切です。ニーズを満たせて技術的に実現可能であってもめちゃくちゃ高額だと買う人は限られるでしょうし、技術的に実現可能で安価であってもユーザが欲しがらなければただのガラクタ(失礼!)ですし、ニーズを満たせてお金がもらえそうでも技術的に実現が不可能であれば空想で終わってしまうわけです。

私の経験によれば、作り込めば作り込むほど、ユーザから離れていく傾向にあるようです。作ることが楽しくなってしまい、手段が目的化しているわけです。これでは成功できません。“ほんとうの課題はどこか”。この視点がやはり大事です。

参考文献

麻生要一、2019、『新規事業の実践論』ニューズピックス。
トム・ケリー/デイヴィッド・ケリー、2014、『クリエイティブ・マインドセット』日経BP.

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