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【神話エッセイ】秋の思い出 その4

都会はいざ知らず、田舎で車は必要不可欠である。

遠出するときも、近場に行くときも、当たり前だが車は重宝する。そして、おのずと目当ての場所がその先にはある。ぼくらにとって車は目的地に行くための手段である。

ところがあるとき、そうでない場合もあることを知る。

ときは少年時代にさかのぼる。あれは秋のよく晴れた日曜日のことだった。母の里に遊びに行ったときに、暇を持て余したぼくを見かね、おじさん(母の弟)がどこかに連れてってやるといいだした。おじさんも暇だったのかもしれない。ぼくもそれ以上に暇だったので、その申し出に二もなく賛成した。

そして二人で車に乗って出かけた。愛車は中古のスバルの軽トラックだった。おじさんは愛煙家で一日に何本もたばこを吸っていた。結局、そのせいか後に若くして肺がんで亡くなるのだけど、そのときの車中もたばこのけむりが蔓延していた。今となっては考えられないかもしれないが、あの当時はそれが結構普通であり、ぼくも車内に広がるたばこの匂いに不快になることはなかった。

ただ、おじさんはしゃべるのが苦手だったので、ぼくらの車中は会話で盛り上がることがなかった。そのかわりといってはなんだけど、AMラジオを流してくれた。気は乗らなかったけど、無言のままで車を走らせるよりは、まだそちらのほうがずいぶんましだった。

曲がりくねった山道を通り、海に出ると海岸線を車で走らせた。よく晴れた秋の海岸は、人気もなく、なんだか少し寂しげだった。まだ山々は紅葉するには早かったので、景色としても取り立てて目立つものもなかった。

そうこうするうちに、30分くらい過ぎただろうか。なんと家に着いてしまった。

どゆこと?


何かお菓子でも買ってくれるのかと淡い期待をしていたのに、ただ車で連れまわされただけじゃないか。これじゃあ、時間泥棒だよ。口に出しては言わなかったけど、なんだか言いようのないもやもやが後に残った。



それから時間は学生時代に移る。

友人Oが新車を納入したので、秋の夜長にドライブに行こうといいだした。ぼくは「どこに行くの?」と聞いたら、友人Oは「ただそこらを走るだけだよ」といってきた。そのとき、ぼくは初めておじさんが何をしたかったのかを理解したのだ。

おじさんはぼくをドライブに連れて行ってくれたのだ。


まだ、ドライブという言葉を知らなかったぼくは、車で出かける=目的地に着く、という仕組みでしか車を理解できなかったのである。ようやくおじさんの行為に気が付いたわけだけど、だからといって納得はできない。運転しているおじさんや友人Oは運転を楽しめるかもしれないが、同乗しているぼくはちっともおもしろくない。まして、こどもに移り行く景色でも楽しめといわれていてもそれは無茶な相談だ。

というわけでそれ以来、ぼくはドライブが嫌いになった。

その友人Oも地元の姫路に帰り、今では淡路島で職員をしている。彼は今でも休みの日にドライブをしているのだろうか。



出雲神話でイザナギとイザナミが出会うことでこの国ができていくわけだが、それは少々不思議なでき方をしている。

初めにイザナミがイザナギと力を合わせて生んだのは淡路島であった。


淡路島?


みなさんは日本の歴史を学ぶとき、稲作がどのように広がったかを図で見たことがあるだろう。だいたい、九州からはいって日本列島に広まっていくと記されている。この国の成り立ちも普通ならそれに即したものになると考えてもおかしくないだろう。ところが、イザナミははじめに淡路島を生み落とす。古事記に即して国を生んでいくと、この国の成り立ちは以下のようになる。

淡路島→四国→隠岐の島→九州→壱岐・対馬→佐渡島→本州

ぼくはこれが不思議だった。この国の成り立ちから言えば、まず以下のようになるのではなかろうか?

壱岐・対馬→九州→本州→四国→淡路島→隠岐の島→佐渡島 

それかまず本州を生むべきであろう。いきなり淡路島を生む必然性が見当たらないではなかろうか。それとも淡路島を真っ先に生まなければならない決まりでもあったのであろうか。

その点についても、古事記は全く触れていない。さらには淡路島の人々が不平をいうのも聞いたことがない。ぼくが淡路島の生まれだったら、まっさきにこのことを自慢し、

淡路島はこの日のもとで初めにできた島なのである、ジャーン(えへん!)

とふんぞり返っているのに違いない。それなのに淡路島の人々がそんな傲慢かましているなんて話はついぞ聞かない。おそらく淡路島の人々はよほど心の清らかな人々で、人間ができているのに違いない。そうでなければ、とっくに島唄でも出来ているだろう。

淡路島、淡路島♪

淡路はにっぽん初の島♪ (富士山の替え歌で)


と、こういう無駄なことを考えたりしながら、出雲神話についてあ~でもない、こ~でもないと日々考えたりしている。こんなんで出雲神話の真実にたどり着くことができるのであろうか。そんなぼくこそが人生のドライブに迷い込んでいるのではあるまいか。そんなことを考えた秋の夜長であった。

ゴーン


今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

出雲神話と関係ないかもしれませんが、淡路島にお越しの際はともだちに「淡路島は日本で最初にできた島なんだよ」と自慢してみてください♪


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