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【エッセイ】 人を見かけで判断してはいけない
人を見かけで判断してはいけない。
そういいつつも、けして自分は人を見かけで判断していないといいきれるだろうか。数年前に起きた四国(詳しく述べると差し障りがあるので、これくらいの範囲で話をさせてください)での殺人事件の話をしたい。
被害者は老婆で、当時、加害者はその息子ではないかとTVでは騒いだ。その息子は「自分はやっていない」といっていたが、取材者への対応のまずさのせいか、TVは犯人と決めつけたかのように報道したと記憶している。
さらに、悪いことに、その息子の人相が、いかにも犯人であるかのような悪人面(すいません)で、何も知らないはずのぼくも、この人が犯人に違いないと思いながら、その番組を見ていた。ところが事態は、思わぬ方向に進む。
真犯人が見つかったのである。
・・・僕は驚いた。
そして、深く悔いることになった。
人を見かけで判断してはいけないと、わかったつもりだったのに、何のことはない、僕は何もわかってなどいなかったのである。いかにもその息子さんが犯人であるかのように情報操作されていたとはいえ、いとも簡単に騙されるのである。実に、情けない。その息子さんにもし会えるなら、視聴者の一人として今でも謝りたいと思う。
先日、書いた「神様への ねがいごと」で、ひとつ言い忘れていたことがあった。
天武天皇三年(西暦674年)の7月13日、地方の有力者、語臣猪麻呂(かたりのおみいまろ)の娘が、安来の郷の北の海岸にある毘売埼(ひめざき)の波打ち際を散歩していると突然、ワニ(サメ)が現れ、娘はワニに咬みつかれ、黄泉国(よみの国)へ行ってしまった。
愛娘を失った語臣猪麻呂(かたりのおみいまろ)の嘆きは尋常ではなく、さながら「立てば号泣、座れば悲嘆、歩く姿は夢遊病」のあり様だった。そして、娘を葬った場所を決して離れようとはしなかった。
数日がたち、気を取り直した語臣猪麻呂(かたりのおみいまろ)は娘の仇討ちを心に誓い、磨いて鋭くした鉾を手に海岸へ赴き、鎮座して八百万(やおよろず)の神々に自分の心情を切々と訴えた。
すると、神様に願いが通じたとあって百匹あまりのワニが静かに一匹のワニを取り囲み、語臣猪麻呂(かたりのおみいまろ)の居る場所から動こうとしなかった。
語臣猪麻呂(かたりのおみいまろ)は、鉾を挙げて中央にいるワニを刺し殺した。その後、百余りのワニは散らばっていき、刺し殺したワニの腹を割くと、娘の片脚がワニからこぼれ出てきた。
その百匹余りのワニたちのことである。彼らは普段から人を食べるサメであり、なぜこのような行動に出たのか謎であった。神様の願いを聞いたと言えば、そうかもしれない。しかし、ぼくはそこに、彼らの言い分を感じ取るのである。
ワニだって、すべてのワニが悪いわけではありません。中には悪いやつもいますが、私たちを見かけや思い込みだけで判断しないでいただきたい。そういう風に聞こえる。
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今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
よかったら、安来にもいらしてください。
駅前から歩いてすぐのところに語臣猪麻呂像がお迎えしてくれますよ
では、お待ちしています ♪
こちらでは出雲神話から青銅器の使い方を考えています
よかったらご覧ください ♪