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歯のキシキシ感と唾液の成分・作用

歯がキシキシする

気温が低くなってほうれん草が美味しい季節になってきました。でも、ほうれん草を食べると口の中や歯がキシキシするような感覚はありませんか?

これはほうれん草に含まれるシュウ酸(いわゆる「アク」と呼ばれるもの)という成分が唾液中のカルシウムと結合してシュウ酸カルシウムという物質になることでキシキシ感を生じさせるそうです。逆に口の中でカルシウムとシュウ酸が結びつかなければこのキシキシする感覚は生じないそうです。

唾液の成分を変えることはできないので、唾液中のカルシウムとシュウ酸を口の中で結合させないためには次のような方法が効果的だそうです。ほうれん草を茹でた後に水にさらすことでシュウ酸を約80%減らすことができるそうです(シュウ酸は水溶性なので)。またカルシウムを含む食材とあらかじめ和えて先にカルシウムと結合させることで、キシキシの不快感を抑えることができるそうです。鰹節やしらす干しなどカルシウムが含まれた食材とほうれん草を和えてみると良いそうです。

キシキシ感の基となるシュウ酸を含む食材はほうれん草以外にもタケノコやバナナ、紅茶やコーヒーなど多々あるそうですが、中でもほうれん草は特にシュウ酸が多い食材なのでキシキシ感も特に感じるのだそうです。さらに、シュウ酸は口の中をキシキシさせるだけでなく、歯の表面に付着して歯を着色しやすくさせたり、シュウ酸カルシウムは歯石の原因にもなったりするそうなので注意が必要です。歯がキシキシ感じたらできるだけ早く歯磨きをして口の中をきれいにしましょう。

唾液の成分

上記したように唾液にはカルシウムが含まれています。またその他にも唾液に含まれる成分としては以下のようなものがあります。

唾液は、唾液腺という器官で血液の成分から作られます。唾液腺には大唾液腺(耳下腺、舌下腺、顎下腺)と小唾液腺(口腔内全体に分布)があり、これらの唾液腺から1日に1~1.5リットルの唾液が分泌されます。ちなみに唾液の分泌量は赤ちゃんの時が最も多くよだれがだらだら垂れるほど分泌しますが、成長とともに分泌量は減っていきます。特に高齢者や喫煙者は唾液の分泌能力が低下して、分泌量そのものが減少して口腔内が乾燥しがちになってしまいます。

唾液の成分としては、水分が約99.5%、残りの約0.5%は無機成分と有機成分からなります。無機成分として前述のカルシウムのほかリン酸、ナトリウムなど、一方、有機成分としてムチンや抗菌・免疫物質などが含まれています。これらの成分と水分が総合的に働いて、私たちが健康な生活を送るために欠かせない役割を果たしています。

唾液の作用

次に唾液のさまざまな作用をご紹介します。

1.      湿潤作用

唾液は口の中を湿潤にします。唾液に含まれる水分のほか、ムチンという成分が潤いを保つことに関わっています。(ムチン:たんぱく質の一種で、唾液の水分と一緒に口の中全体を覆って粘膜を保護したり、湿潤作用や潤滑作用などに関与したりしています。)

2.      抗菌・免疫作用

健全な口腔内にいる菌のバランスを維持することで、口腔内の環境を保ったり、外からの細菌の侵入を防いだりしています。

3.      自浄・洗浄作用

分泌された唾液が、食べかすや汚れを洗い流します。口腔内を清潔に保つことで口臭も抑えています。

4.      潤滑作用

唾液に含まれる水分やムチンなどの成分が食べ物を軟らかく滑らかにして飲み込みやすくします。また、話したり歌ったりする時の口の動きをスムーズにします。

5.      粘膜保護・修復作用

唾液に含まれる水分やムチンが潤いを保ち、滑らかな状態を保つことで口の中の粘膜を保護したり、傷ついた粘膜を治したりします。

6.      溶解・味覚作用

食べ物が唾液と混ざることで味を感じることができます。「甘味」、「酸味」、「塩味」、「苦味」、「うま味」といった味覚のほか、“キレ”や“あと味”にも、唾液が関わっています。

7.      消化作用

デンプンを分解する酵素が含まれていて、よく噛んで食べ物と唾液が混ざることで、食べ物をやわらかくして胃での消化を助けます。

8.      緩衝作用・虫歯予防・再石灰化作用

食事によって口の中が酸性になると歯が溶けて虫歯になりやすくなりますが、唾液の成分である重炭酸イオンという物質がその酸を中和します。また唾液に含まれるカルシウムやミネラル成分は、酸によって溶けた歯の修復に関わっています(再石灰化)。これらの作用によって虫歯予防につながります。

9.      その他

唾液の量は体の中の水分量と関係していて、口や喉の渇きを感じることで水分補給を促して体の水分量のバランスを保つ役割があります。また、唾液の中には体から出された不要な成分(血液の成分や薬が分解されたものなど)も含まれています。

唾液の種類

唾液には、サラサラした唾液とネバネバした唾液の2種類があり、それぞれ役割や分泌する状況に違いがあります。

サラサラした唾液は「漿液性唾液(しょうえきせいだえき)」と言って主に耳下腺から分泌されます。体がリラックスしている時に働く副交感神経によってコントロールされているのでリラックス状態の時に分泌されやすいのが特徴です。口の中を洗い流して清潔に保つ自浄作用や、食べ物を湿らせて飲み込みやすくする役割があり、さらに消化酵素が多く含まれているので消化吸収を助けてくれます。

一方、ネバネバした唾液は「粘液性唾液(ねんえきせいだえき)」と言って舌下腺から多く分泌されます。緊張している時に働く交感神経によってコントロールされているので緊張している時やイライラしている時に分泌されやすく、緊張すると口がねばつくのはそのためです。ネバネバの唾液はあまり良いイメージがないかもしれませんが、粘液が傷つくのを防いだり、粘膜を保湿したり、細菌を絡め取って体内への侵入を防いだりする大切な役割があります。

サラサラ唾液とネバネバ唾液がバランスよく働くことが口腔内の健全化には大切です。

ちなみに、朝起きた時に口がネバネバしているのは、ネバネバ唾液の分泌が活発になっているのではなく、単に口腔内が乾燥しているからです。睡眠中は唾液腺の活動が低下するので、サラサラ唾液もネバネバ唾液も分泌量が減ってしまい口腔内が乾燥します。

睡眠時には発汗などによって体から水分を失いますが、当然口腔内の水分(唾液)も減るのです。朝の水分は口腔内にも体内にも必要になるので、起きたらコップ一杯の水分を補給するのが大切になります。

唾液はその成分の99.5%が水分ですが、残りの0.5%の成分が上記のように様々な作用を発揮して体を健全化するために働いてくれています。唾液が少なく、口腔内が乾燥するという方も歯科を受診して唾液の分泌量を増やすトレーニングを習ってみてはいかがでしょうか。いずみ中山歯科でも唾液腺マッサージなどの指導を行っていますので、お気軽にお声がけください。

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