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泉井夏風
2022年5月17日 03:49
空の果て、世界の真ん中第3話、黄金郷2フロンティアの先住民に襲われたってのか!よくよく運の無ぇ奴らだな!下手な空賊より根性座ってるって話だからな。こりゃあ、どうなるのか楽しみだ。聴衆はワクワクして聞いている。噂では空賊に襲われたことになっていたが、撃退に成功したことは伝わっている。結末を知っているがゆえの安心感。大丈夫、グラフトの連中の旅はまだ続く。ジーノは一瞬考え
2022年4月29日 17:37
空の果て、世界の真ん中第3話、黄金郷1立ち込めるのはふたつの煙。肉を焼く煙にいぶされながら安酒をあおり、期待に胸を膨らませ紫煙をくゆらせる人々。ここはシティ中層のありふれたパブ。喧騒が煙と共に充満している。店内は満席だった。客たちは、とある探空士たちの噂話を熱心に語り合っている。インペリアルフローレス号の連中、改め、グラフトの連中。船長ルージュ、ローラ、カロン、
2022年3月23日 01:35
空の果て、世界の真ん中幕間2ヴィクトリアシティ。発着場と金融街の中間地点。商人の中でも交易商や大商会、投資家や資産家に連なる人々の行き交う一角。ここにはコーヒーハウスがいくつもある。飲み物といえば酒か紅茶が一般的だが、ここいらに集う者たちはコーヒーを好む。新聞を広げ、コーヒーで思考を澄ませ、情報交換をしながら周囲の会話に耳をそばだてる。もちろん、ここで言う新
2022年1月30日 01:50
空の果て、世界の真ん中第2話、約束は遥か遠く10固唾を飲んでいた聴衆が一斉に息を吐く。緊迫のクライマックスはジーノの意図通りに伝わったようだ。ラニがロープ一本で飛び降りた噂はそれなりに広まっていたが、理由は噂によってまちまちだった。カロンが決闘をした話はわりと知られていたが、相手と勝敗は判然としなかった。そして幽霊船と分身する忍者の噂。こちらもバラバラに流布されてい
2022年1月30日 01:44
空の果て、世界の真ん中第2話、約束は遥か遠く9ゲラゲラと笑う聴衆。忍者というエキゾチックな存在。得体のしれない秋津洲の神秘。分身の術という驚異の技。そんなイメージをぶち壊す間抜けで滑稽な喜劇。拙者ァ! ござる!真似をして笑い合う客たちは新たな登場人物を気に入ったようだ。忍者の噂と幽霊船の噂、両方盛り込んだ甲斐があるというもの。ジーノはエールを飲み干し、上機
2022年1月30日 01:38
空の果て、世界の真ん中第2話、約束は遥か遠く8物語は最も噂が錯綜しているシーンに突入した。歴史家なら無視したかもしれない。熟練の戯曲作家ならもっとシンプルな展開にしたかもしれない。以前のジーノならわかりやすく王道で無難な話にしただろう。だが、彼は選んだ。千差万別の噂の中からこの筋書きを。未だに迷いはあるものの、何故かこの組み合わせにこそ整合性を感じた。感覚
2022年1月17日 02:55
空の果て、世界の真ん中第2話、約束は遥か遠く7つまり、連中はよりにもよって幽霊船で旅してるってことか!無人塔で見つけた大昔の船だもんな、そりゃワケアリ物件だろう。聴衆は端からフィクションだと思って聞いているので、そんなことありえないなどという野暮なことは言わない。グラフトの連中、こんな噂になってるなんて思ってもみないだろうな。帰ってきたら仰天するんじゃないか。笑い
2022年1月17日 02:49
空の果て、世界の真ん中第2話、約束は遥か遠く6今度は幽霊船か。感心したように客が言う。前回が超技術の船で、今回はオカルト、斬新な展開じゃないか、やるなジーノ。ジーノはエールを飲み笑顔を見せる。幽霊絡みは噂が錯綜しているため情報の取捨選択が大変だった。どの噂を採用するかで話の筋が大きく変わっていただろう。今回脚本としてまとめた話は本当にちらりと聞いただけのメジャー
2022年1月6日 01:34
空の果て、世界の真ん中第2話、約束は遥か遠く5ジーノは一旦語りを切ると、聴衆の反応を窺う。早く続きを。みんなの顔にそう書いてある。内心、胸を撫で下ろす。『始まりの船』と違い、この話はジーノの想像で補完している部分が多い。ほぼ事実通りとは神ならぬ身のジーノには知りようのないことだが、彼にとっては紛れもなく創作だ。散々こき下ろされてきた自分の作品。それらを超え、作家
2022年1月6日 01:30
空の果て、世界の真ん中第2話、約束は遥か遠く4ジーノとマリオがエールをぐびぐび。飲み干せば何も言わずともおかわりが渡される。語り手の小休憩の間、聴衆は先の展開を予想する。インペリアルフローレスグラフトを盗んで飛び去ったのは何者か。無人塔前で襲ってきた船の仲間か?シティに潜入してるってのか?でもグラフト動かせるんだぜ?転移石以外の鍵があるってことか?誰も自信を持
2022年1月6日 01:24
空の果て、世界の真ん中第2話、約束は遥か遠く3今回ジーノは物語を編むに当たって入念な情報収集を行った。フロンティアから来た者を探しては片っ端から噂を聞いて回ったのだ。また、偶然にも古いゴシップ新聞から右館エンフィールド家の風変わりな嫁という記事を見つけた。ローラの祖母が秋津洲出身の青い花を持つフローレスだと裏を取ることができたのだ。コッペリアに育てられた青い髪の
2022年1月6日 01:19
空の果て、世界の真ん中第2話、約束は遥か遠く2ここまでの話は航空ギルドでの出来事である。すでに出回ってる噂と大した差は無い。問題はここからだ。ジーノも断片的な情報を繋ぎ物語を創作するのに苦労した。だが、客が聞きたいのは作家の苦労話ではなく冒険譚だ。余計なことは言わずにブーン兄弟は台本のページをめくる。名前も聞いていない古い船。ウィッカ社のアルバトロス級。廃
2022年1月6日 01:14
空の果て、世界の真ん中第2話、約束は遥か遠く1立ち込めるのはふたつの煙。肉を焼く煙にいぶされながら安酒をあおり、歓談しながら紫煙をくゆらせる人々。ここはシティ中層のありふれたパブ。喧騒が煙と共に充満している。近頃この界隈では『始まりの船』と呼ばれ物語が流行している。ブーン兄弟という売れない役者と戯曲作家が語る朗読劇だ。それはインペリアルフローレス号の連中、そう呼
2021年12月26日 02:36
空の果て、世界の真ん中幕間1立ち込めるのはふたつの煙。肉を焼く煙にいぶされながら安酒をあおり、議論しながら紫煙をくゆらせる人々。ここはシティ中層のありふれたパブ。喧騒が煙と共に充満している。今この空間ではとある探空士たちについて酔客連中が喧々諤々言い争いをしている。「だぁから! カロンはもっとこう、細やかなんだよ!」怒気を含めて吠える男。「いーや、“殺しても死