こーひーこわい
そろそろ、こーひーがこわい。
ひまをもてあました街の者が数名集まり、
それぞれ嫌いなもの、怖いものを言い合っていく。
クモ、ヘビ、アリなどを言い合うなかでひとり
「くだらないものを怖がるとは情けない。世の中に怖いものなどあるものか」
とうそぶく。
他の男が、
「本当に怖いものはないのか」
と訊くと、
うそぶいていた男は小声で
「こーひー」
とつぶやく。
男はそのあと、
「こーひーの話をしているだけで気分が悪くなった」
と言い出し、自分の家に帰って寝てしまう。
残った者は、
「あいつは気に食わないから、こーひー攻めにしておどかしてやろう」
と、お金を出し合って
かるでぃこーひーふぁーむで一番良い豆を
ぺーぱーどりっぷ用に挽いてもらう。
袋詰されたこーひー豆を男が寝ている部屋にどんどん投げ込む。
目覚めた男は声を上げ、ひどく狼狽しながらも
「こんな怖いものはどりっぷしてしまって、のんでしまおう」
「うますぎて、怖い」
などと言って、たらふくこーひーを飲み、飲みきれない豆は冷暗所に保管した。
一部始終をのぞいて見ていた男たちは、だまされていたことに気づく。
怒った男たちが男をなじり、
「お前が本当に怖いものは何だ!」
と訊くと
「このへんで、激甘のショコラケーキが1つ怖い」。
「ああ、ちょっと今日はしんどい」という日もコーヒーを飲むし、
「ああ、きょうはのんびりできるぞ」という日もコーヒーを飲む。
カフェイン中毒者である。
アルコール中毒は危険だし気をつけないといけないよなあという感覚だが、
カフェイン中毒もあまり変わらないのではないか?
とカフェイン中毒仲間の妻に話しかけると
「カフェイン中毒はまわりに迷惑をかけにくいから、まあよいのではないか」
と腑に落ちた意見があった。
そして、またコーヒーを飲む。
普段はペーパードリップのコーヒーメーカーだが、
最近はビアレッティが気になる。IH対応もある。
ああ、こーひーがこわい。
かふぇいんがこわい。
びあれってぃがこわい。