コントな文学『憧れていたプロポーズ』
コントな文学『憧れていたプロポーズ』
石﨑将太33歳。
高校卒業後、青森から上京して寿司職人になり10年以上が経過した。
俺はついに明日、小さいながらも夢だった自分の店を出す事になる。
まるで一国一城の主になった気分だ。
オープンを前日に控えた店内のカウンターに職人見習いの頃から、ずっと俺の事を応援し支え続けてきてくれた彼女を座らせた。
自分の店を出すという夢は、いつしか俺と彼女2人の夢になっていた。
俺は今から彼女に憧れていたプロポーズをする。
これからは夫婦として、そして寿司屋の大将と女将として、共に支え合って歩んでいきたいという願いを込めて渾身の大トロの握りを彼女に作って差し出した・・・
ガギッ「アガァッッ」
シャリの中に忍ばせた結婚指輪を彼女が思いっきり噛んでしまった。
奥歯が割れた音と断末魔のようなうめき声が2人の夢の城に鳴り響いた…