朝野いの里

朝野いの里

最近の記事

緑の湖畔

私は緑の湖畔にひとり立って、 屈折した肉体を忘れる。 濁っていて見えないから、 花でも砂でもよろしいでしょう。 あなたと見つめあっても、 時は止まらなかった。 もう帰らないと、私たち、 うっかり永遠なんて手にしないように、 必然の中に生まれてきたりしないように。

    • けもの

      ねむりにおちる瞬間の あのしんとした すてきな気持ち 濁りのない沼の底の底を 掻きまわして踊っているんだ     (あたしは待っている) あたしはよわくてちっぽけ 大きくて キバがあって 毛皮があればいいのにな そしたらでっかい身体をまるめてねむるよ 鐘が鳴るように歌って 木の実をかじって生きるのに 朝だ ひかりがやってくる    (それはあまりにもまばゆすぎて) あたしの肌をすべり 毛穴に流れ込んで あたしの体内(なか)をめぐってゆく そして はじけて・はじけて・はじ

      • ゼブラ

        君の前では今すら過去なんだ 昼をもてあまして 夜はうずくまって 四肢を投げ出して じっと幕が降りるのを待とう 悲しみがぬるい風になるそのときを 脚がいいな 祈りよりもはやいその脚が 盲いその目が 耳が 鼻が 砂できらめくたてがみが 僕の中に もしすこしでも ともる光があるとするならば それを君にかざしてみたいのだ そうして照らされた君がゆっくりとまばたいて おまえのほかにはなにもいらないと そう言ってくれるだけで ほかになんにも望まないのだ

        • わたしのトリシュナー

           欲しいものなんでも手に入れたい。いくらお金があっても足りない。この前ヘッドフォンが壊れちゃったから、新しいものを買いたいし、最新型のカメラも欲しいし、大好きなマクドナルドで限界までお腹を満たしたい。コンビニに行って、値段なんか気にせずスナックをカゴに放り込みたい。いっぱい食べたいけど、太りたくもない。エステに行きたい。小顔矯正したい。鼻もちょっと高くしたいし、髪質改善もやりたい。全身プラダで着飾りたい。  私がスマホをスクロールしながらそんなことをぶつぶつ呟いていると、先輩

          恋人がハムスター投げた

           恋人がハムスター投げた、怒って、まるで遠投みたいな構えで、小さなふわふわをわしづかみして、そして大きく振りかぶった。  ハムスターはきれいな放物線をえがいて空を飛んだ、わたしは空飛ぶハムスターを見るのは初めてで、目が離せなかった、だけど結局部屋の壁にぶつかって床に落ちてしまった。  わたしはあわててハムスターに駆け寄り、手でひろいあげたけど、背中が変な方向に折れ曲がっていて、目を閉じていたから、もう死んでいるとすぐにわかった。  数時間ずっと手のひらで包んでいたけど、

          恋人がハムスター投げた

          白昼夢公園

          膿んでぐずぐずになってる君は ベンチから立ち上がることもできないまま そこで終わらない夢を見てる ぼくは遠くからそれを眺めてる ぼくたちはゆっくりと死んでいく途中みたいだ…… 箱の中で身動きひとつとれやしない でもそんなちいさな箱の中身なんて だれも気に留めたりはしないんだよ 君の望むものなんでもあげる でもそれはどれだけのお札があっても足りないんだ せめてすべてが砕けてぼろぼろに散っていく時みたいに 君を気持ちよくしてあげたい だって空はいまにも崩れ落ちそうで 君は泣いて

          白昼夢公園