人生が割とすぐそばまできている
朝焼け生ゴミの匂いと羊雲
怖い顔の女の子とモラルの欠けたインスタグラム
少し濃くなった髭と父に似てきた目元
全部嫌なのに
みんな、時間には逆らえずにいる
なんで自分にはスーパーパワーがないんだろう
なんで自分には絶対的お手本がいないのだろう
なんで自分には
人並みの不幸しか訪れないんだろう
怖くなることと優しくすることは
いつも仲良し半分こ
人の裏表を見る仕事も、
明日の天気を気にするフリも、
全部しょうもない地球の代謝
壊れるまでわからない現実のひずみ
自分が特別じゃないと気づいた時
目の上のあたりに浮かぶ心に
少し傷がつく
怖かった1人も現実味を帯びてきて
割とあなたのことを考える
剃り忘れた髭と伸びっぱなしの眉
心に置いて行かれた鼻の奥の噛みちぎりたい何か
今後一切関わらないと決めた真実に
詰め寄られ詰め寄られ
互角にもならない鍔迫り合いを続け
犬歯でできた土俵際
壊れても壊れても
耐え切ろうとする踵がうざったい
極寒の中で暖かさを探すように
帰り道歩きタバコに火をつける
どうしてもなんとかならない現実が
汚い言葉で罵ってくるが
どこかなんとなく聞いたことのある声で
心臓のちょっと下あたりが痛くなる
どんなに言葉を覚えても
核心を捉えることのできない僕の頭
なぜか愛しく苦しいが
どこにでもある幸せと不幸に
一喜一憂するだけの元気はある
そばにいればなと感じることも
年齢と共に増える仕方ないと感じることも
どうしても燃えきれない灰になり
誰かの頭にブチ刺したくなる
あのとき運よく死ねれたら
言葉に困ることもなく、人を愛することもなく
遠く小さな星になり
太陽系のまた外の
名前も忘れた星座の一つを担う星になるか
はたまた道端で珍しげに
少年に捕まれるカマキリになり
面白がって人のカバンに入れられて
不快にも感じられないか
どこかの家に飼われる猫になり
昼は寝て夜ははしゃぎ
愛し愛されちょっと長生きをするか
そんなことを考える人生に
自分の頭の中に流れる不在着信の履歴が
ところどころ黒い点を打ち
しょうもない欲望を沸かす
こんなこと考えて何になるか
自分でもわからない
なのに考えるのは、
数えきれない可能性の中にある
ひとつの人生が選ばれそうになっているから
可能性に満ち溢れていたはずの中から
阿弥陀籤がおわりに近づいてきて
ドキドキしたいのに、
もう、ゴールが見えているから
人生が割と、すぐそばまできているから