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読書記録『タイタニア』田中芳樹

これまで何冊か、読書記録を開陳しているが、実はこうした公のところで書評や読後感想を書くのにいつも躊躇する。
他人様が書いた作品をああでもないこうでもないと狭い了見で評価するのは、作者からすれば「お前ごときに言われたくない」と思うだろうし、毒ご感想を書くとしたら、最終的なオチまでもが未読の誰かの目に入ってしまう可能性が出てくる。どっちにしても好きに読んで好きに書いて気分を良くしているのは自分だけなのだから、これはなかなかに申し訳ない。

とはいえ、何も書かないでいて、「アイツは本を読んでると言いながら、読んだ小説のことを一つも書かない。実は読んでないのかも」などと思われるのも心外だ(ただの被害妄想かもしれないが)。
批評ではなく、結末を悟られることもなく、読んだ事実を伝えるために費やす労力は、果たして個人と世間に対して必要とされるモノなのだろうかと思うのですなあ。

と、余分な愚痴はさておき。
『タイタニア』は1980年代の終わりころからスタートした物語。『銀河英雄伝説』の田中芳樹のお得意フィールドのスペースオペラである。
最初は新書版での発売で、いいペースで3巻まで出版されたものの、そこでピタッと止まって、長いこと未完だった。
待っても待っても新刊の出ない井上雄彦の『バガボンド』状態になってしまって、いつの間にか続刊が出ないこと自体を忘れてしまっていた。
それが知らないうちに2冊が出て、物語はいつの間にか完結していたのだった。

直接的に筋を書くのはやめておく。
要するにこの全5冊は時代設定と場所を変えた『平家物語』(解説にも同じことを書いた人がいた)。
『銀河英雄伝説』はスペースオペラを使った政治思想論だったが、こちらは「平氏にあらずんば人にあらず」、「驕れる者久しからず」を底流に置いて、宇宙に拡大した人類社会を舞台に物語は進む。
源氏の台頭も、屋島・壇ノ浦もない物語の中で、誰がどう失敗していくのかは、平家物語を統治論、君主論として読み解いているようにも見える。

全5巻の3巻で刊行が止まってから22年間の中断を経て、平成の世に再開。
ようやく最終巻が出たのはわずか6年前のことだそうだ。
22年の間に世の中は様変わりして(ネットの広がり、地下鉄サリン事件、東日本の震災、豪雨被害等々)、それが再開後に影響したのかどうか。次に読むときにはその辺りも嗅ぎまわりながら読んでみたい。
それでも着地点は当初に構想した通りだそうで、やっぱりプロット作るのって大切なんですねえ。

この作品はアニメ化されたこともあるし、仕方がないと思うけど、なんでも間でもアニメチックな表紙に変えるのは勘弁してほしいところ。
それで作品の質が上下することなどないのだが、ものすごい違和感がある。低い土俵に合わせたところで売れる数が増えるとは思えないんだけどなあ(購買層の年齢に線引きしちゃって、逆効果なんじゃないのかと)。


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樹 恒近
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