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【乙】あずかりやさん/大山淳子
最初の語り手は「のれん」だった。店先に下がっているあの「のれん」だ。次の章の語り手は「自転車」。目の見えない店主の代弁するかのように特殊な語り手から語られる世界は、文章を読んでいてもありありと伝わってきた。
最後の章の語り手は白猫。人が「ねこ」と呼んでいる招き猫と自分のフォルムが違いすぎることに違和感を覚えているあたり、本当に猫から見た世界、といった感じだ。
商店街の端に位置する「あずかり
むかしのはなし/三浦しをん
「死ぬことは生まれた時から決まってたじゃないか。」
そんなことを、言われましても。
頭では理解しているつもりでも、突然「3ヶ月後に確実に死ぬ」と告げられたら逃げたくはなるだろう。
本書は、7編にわたる短編集であり、それぞれの物語には一貫して「3か月後に隕石が衝突して地球が滅亡する」「宇宙に脱出できるのは抽選で選ばれたわずか1000万人の人類のみ」という設定がある。描かれているのは、その重大発表