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乙の読書感想文

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【乙】あずかりやさん/大山淳子

【乙】あずかりやさん/大山淳子

最初の語り手は「のれん」だった。店先に下がっているあの「のれん」だ。次の章の語り手は「自転車」。目の見えない店主の代弁するかのように特殊な語り手から語られる世界は、文章を読んでいてもありありと伝わってきた。

最後の章の語り手は白猫。人が「ねこ」と呼んでいる招き猫と自分のフォルムが違いすぎることに違和感を覚えているあたり、本当に猫から見た世界、といった感じだ。

商店街の端に位置する「あずかり

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【乙】i(アイ)/西加奈子

【乙】i(アイ)/西加奈子

アイは、紛争や政治問題の絶えない国、シリアで生まれた。
記憶もない赤ん坊のころに、アメリカ人の父と、日本人の母のもとに引き取られ、日本で恵まれた生活を送るアイは、幼いころから世界のあらゆるところに発生する災害や事件、不均衡に目を向け、そのたびに胸を痛めていた。

恥ずかしながらも、私自身は世界中で起きている不幸に日常的に思いを馳せるどころか、それに対する知識すら一般的に見てだいぶ足りない。この

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【乙】月の満ち欠け/佐藤正午

【乙】月の満ち欠け/佐藤正午

新しい本を探すにあたって、惹かれる部分が多すぎる一冊だった。

装丁からは、少し硬い印象を与えられた。岩波文庫おなじみの装丁だ。しかし、本来出版社名「岩波文庫」が書いてあるはずの場所には「岩波文庫的」と書いてある。まんまと気になって手に取ってしまった。後から調べたところ、本来岩波文庫は長い年月の評価に耐えた古典を中心に出版しているため、刊行後わずか二年の今作は老舗出版社としても異例のパロディ「岩波

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むかしのはなし/三浦しをん

「死ぬことは生まれた時から決まってたじゃないか。」
そんなことを、言われましても。
頭では理解しているつもりでも、突然「3ヶ月後に確実に死ぬ」と告げられたら逃げたくはなるだろう。

本書は、7編にわたる短編集であり、それぞれの物語には一貫して「3か月後に隕石が衝突して地球が滅亡する」「宇宙に脱出できるのは抽選で選ばれたわずか1000万人の人類のみ」という設定がある。描かれているのは、その重大発表

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