うつ病にてドロップアウト道中記 #3 病気について②。
3回目です。今回は前回の続きを書こうかと思います。
メンタルクリニックにかかる前は、もしそうだったらどうしようという葛藤や不安が強かったですが、いざ「うつ病」と診断されてみれば、「ああ、やっぱりそうなんだ」と不思議なくらい落ち着いて納得したものでした。生活にも影響が出ていたので既に予測していたんでしょうね。改めて専門の医者に言われて予感が確信に変わっただけだったのかもしれません。
そこから先の行動は早かったです。仕事で満足な成果も出せない以上、会社に居続けてもお荷物になるだけ。いつ回復するかも不明。だいたい一人で生活する事にさえ不自由になり始めていた以上、自活を続けるのは厳しいと考えて、会社を退職。住んでいた部屋も引き払って家族の元に戻る事にしました。会社を去る際、「回復したらまた戻っておいで」と言ってくれたのが嬉しかったです。
家族の元に戻った当初は3ヶ月、長くても半年ほども休んだら社会に復帰できるだろうと考えておりました。実際に療養を始めたら、そんな考えはひどく甘い夢想でしかなかったと思い知らされる事になったのです。
1ヶ月もしないうちに状態は急変しました。とにかく眠れない。寝ても一時間も眠れず寝たり起きたりを短いスパンで繰り返すといった睡眠障害。何を食べても味がしない。砂でも食べているようになった味覚障害。すごく些細な音がものすごく煩く聞こえる聴覚異常。非常に弱い光が目を突き刺すほど眩しく感じられてしまう視覚異常。幻聴が聞こえる、幻覚が見える感覚異常。人の気配が圧迫感さえ持って感じられたり。現れた症状は様々でした。そのどれもに苦しめられました。
眠れないこと、寝ても何度も中途覚醒してしまうことは辛かった。とにかく疲労感がなくならない、減らない、薄れない。常に鉛のように体も頭も重くてしんどい。血管の中に血じゃなくてドロドロの鉛が流れてるんじゃないのかと思うほどに。朝、目が覚めた時、ベッドから起き上がるどころか指一本さえ動かせない状態が1時間以上続くのも連続しました。
何を食べても味がしない、砂を噛んでるようになる味覚障害で、食事を行うという楽しみが失われました。また、食欲が無くなったり、無理に食べても吐くようになる拒食症や、その逆に、常に空腹を感じる。たくさん食べても1時間2時間で空腹を感じる。食べ過ぎて吐いてもまだ食べたくなる過食症にも悩まされました。
聴覚異常は苦しかった。箸やスプーンが皿に触れた「チン」という音ですら、頭の芯まで響く。まるでひどく冷たくて、ひどく薄い氷のナイフで脳味噌の中心を何度も何度も何度も何度も刺し貫かれて穿たれる衝撃に襲われ、その場に蹲ることも頻発しました。
本当に弱くて小さな光が目に突き刺さって感じる視覚異常は最低限の生活を行うにも支障が出ました。携帯画面の明かり、蛍光灯の明かりさえ眩しくて辛い。目眩や吐き気がする。目を開けていることさえ苦痛。一日中、濃いサングラスが必要になったり、ひどい時はアイマスクで完全に外部の光を遮断しなければならなかったです。
感覚異常には自分の正気を疑いました。視界の中に黒いモヤが見え始め、人型になり、部屋の隅に、自分の背後に、目の前で揺らめき、時には自分に覆いかぶさってきたり。その人影は私を蔑み、罵倒し、嘲笑するのです。顔はわかりません。気配で感じるのです。もちろん幻覚です。ですが、感じる気配はリアルでした。幻聴はよりリアルでした。幼少期から今まで生きてきた中で実際に言われて傷ついたセリフが何度も何度もフラッシュバックのように強烈な光となって蘇るのです。言われた当時に感じた悲しみ、怒りといった感情と共に。そして、実際には言われたことがない誹謗中傷が幻聴となって頭に響きました。社会から脱落した者を、途中挫折した者を笑い、蔑む声です。その声は、社会に寄与しないお前は生きている資格も価値もないと言っていました。
そして人の気配。これには自分の領域が奪われて、自分の居場所さえ失われていく感覚に陥りました。家の外から聞こえる人の声、車の音に留まらず、一階にいる家族の気配でさえ自分の空間を、自分の生きるスペースを侵されているように感じられて、耳を塞いで目をきつく閉じて、ベッドの中でじっと耐えていました。
喉にピンボール玉が詰まっているかのように呼吸が満足にできない咽喉頭異常感症が続いた時は本当に死ぬかもと思いました。激しい目眩・頭痛で平衡感覚が保てずたった一歩の歩行さえ困難にもなりました。24時間、胃がムカムカして重苦しくて吐き気が治まらない日々が続きました。理由のない焦燥感に心が支配され、わずか数秒もじっとしていられない時もありました。将来に希望が見出せず、現状には絶望しか抱けず、劣等感と自己嫌悪に苛まれ、一日中「消えて無くなりたい」とだけしか考えられない時もありました。「死にたい」という思いもありましたが、それ以上に「消えて無くなりたい」という気持ちが強かったですね。死ぬためには準備をしなければなりません。そして行動しなければなりません。その気力がありませんでした。また勇気もなかったと思います。だから、一瞬でこの世から消えて無くなりたいと願いました。(これは今もよく思います)
そんなことを経験しても、まだしぶとく生きてます。自分が思うより人間ってタフなのかもしれません(笑)。
とりあえず長くなり過ぎたので今回はこの辺で。ではまた次回、お付き合いいただければ幸いです。