脳を活性化させるな!
※この記事は速読の練習用として使えるように、太字部分を読めば1,2分程度で読めるように書かれています。ぜひやってみてくださいね!
「〇〇をして脳を活性化!」
こういった文言を見たことはないだろうか。
活性化と聞くと素晴らしいことではないか、脳を活性化させるということは賢くなるのだろう。とう疑いもせずに思う人がほとんどだろう。
Googleで「脳 活性化」と調べても、食べ物やら勉強法やら運動やら、いろいろな活性化の方法が出てくるばかりだ。
だが、はたして活性化をすることは良いことなのだろうか?
いかに脳を活性化させないか
そもそも学習や技術の習得というのは、脳の活性化ではなく、逆にいかに脳を活性化させないか、ということが重要なのだ。
これについて「ネイマールの脳内での効率的な足のコントロール」といった論文がある。ネイマールといえば誰でも知っているような世界的なスター選手だろう。サッカーに全く興味がない暇人でも聞いたことがあるし、多分写真を並べられれば顔もわかる。この論文は、そんな世界的な選手のサッカーのプレー中の脳内はどうなっているのか?といったものだ。
活性化を良いことだと信じている人たちは、「そんなプロの中のプロの選手なのだから、脳内は活性化しまくっているに違いない」そう思うだろう。
実験方法としては、ネイマール、プロのサッカー選手、水泳選手、一般人と分け、足を指定の方法で動かしてもらい、その時の脳内を測定するといったものだった。
すると、結果は一般人の脳が一番活動範囲が大きく、次に水泳選手、プロのサッカー選手と続き、最後にネイマールとなったのだ。そして一般人とネイマールとでは、運動に使う脳の部位体積が10倍も異なっていた。
つまり、サッカーがうまい、体を動かすのがうまい人ほど、脳の活動範囲が小さく、その活動に本当に必要な部分だけを効率よく活性化させているということだ。
脳の活性化が起これば起こるほど、それだけエネルギーを使うことになる。
技術が巧みな人は、最小限の消費エネルギーで同じ技術をより簡単にこなせるのである。ネイマールのサッカーの巧みさは、その技術を他の選手よりも省エネで行っているところにあるのだ。
脳の省エネ化
例えば掛け算の暗記などがそうだ。掛け算を暗記することによって足し算を繰り返すというエネルギーの節約をしている。つまり暗記は技術(計算)の省エネ化なのである。そして省エネ化を行うことでより深く、難しい数学的思考が可能になる。
しかし一つ注意しておくこととして、この活性化をしない状態に持っていくためには練習や努力が必要になる。その時の脳は活性化を必要とする。その活性化をした先に、省エネ化された脳が存在するのだ。だからむやみに活性化させたらいい!活性化させない方がいい!といった短絡的な話ではない。
哲学の道
また、京都に数々の哲学者や文人がそこを散策し思案を巡らせたとして有名な「哲学の道」もそうだ。
哲学の道と呼ばれているから何か特別な道だと思う方がいるかもしれない。しかし、この道はなんて事のない道なのだ。この道に特別な何かがあり、その何かのおかげで素晴らしい考え思い浮かぶなどという話ではない。‟この道を歩いている時の哲学者、文人たちの脳が活性化していなかった”ということなのだ。
どういうことかというと、新しい道を歩くときは新しい情報が入ってくるわけだから、脳に刺激が与えられる。つまりは脳が活動するということだ。しかし、毎日毎日同じ時間帯に同じ道を歩いているとどうか?代り映えのない景色に新しい刺激を受けることもなく、脳は無駄な活動をしない、いわばリラックス状態になるのだ。
だから何の縁もない人が京都の哲学の道を訪れてもきっと感慨にふけるだけで終わってしまうだろう。誰の家の周りにも、‟哲学の道”は存在するのだ。いや、反対に自分の哲学の道は、そこにしかないのかもしれない。
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参考文献
「おどろきの心理学~人生を成功に導く「無意識を整える」技術~」光文社新書 著 妹尾武治
「欲望する脳」集英社新書 著 茂木健一郎