エラリー・クイーンの悲劇⑤更新しました
小説サイト「NOVEL DAYS」にて、「ストーカーレポート」第2話エラリー・クイーンの悲劇⑤を更新しました。
よろしければ続きは、小説サイトでご覧ください。
他館からイッチが依頼した海外小説が届いた。さすがにピークのときは、予約の数だけで、百件を越えていた本だ。
本の表紙や背表紙の痛みがひどい。
私はあちこち点検してみたが、人間を殴ったことによる損壊があるようには思えなかった。もちろん、血痕などもついていない。
もしこの本が凶器だったとしても、指紋の特定から犯人を導き出すのは、ほとんど不可能に近いのではないか、と私は思った。
指紋だっておびただしい数が付着しているはずだ。本の背表紙を見て、私は、あ、と驚いた。
イッチに連絡すると、すぐにやってきた。手袋をしていた。
そこまで徹底しているということは、確信しているのだろうか。
布のバッグにしまって帰っていった。
*
私は早退して、シノザキのアパートにまた、いってみた。
胸のなかに何十羽のカラスがいて、ざわざわと騒いだ。シノザキの部屋の前にいくと、男が一人立っていた。あたりをうかがうように見まわし、ためらい、逡巡しているようだった。
額は薄く、唇はぶ厚く、でっぷりとふとっていた。銀縁の眼鏡をかけ、険しい表情をしている。老獪といってもいいような雰囲気をかもし出していた。
私はすぐに気がついたのである。FAIR WEATHERの元メンバー。ドラムのタクだった。本名タナカ・タクヤ。ジャケットの写真は、肩までかかるくらいの長髪で、目が細く、眠たそうにしていた。ジャケでは細身の男だったが、長い歳月が、すっかり別人のように変貌させていた。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートをいただけた場合、書籍出版(と生活)の糧とさせていただきますので、よろしくお願いいたしますm(__)m
なお、ゲストのかたもスキを押すことができます!