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壱宍 (若槻きいろ)
2021年6月28日 07:53
風を撫でるように思い出の輪郭を辿った。今、頭の中には君と過ごした、吐き出した言葉たちが泳いでいる。ふたりの秘密。それを投げ掛けては、知らないふりして薄く跡を残している。同じ場所を、何度も何度も。ゆっくりと刻みつけて、深い溝になるように。言えない言葉の代わりに、目の前にない、君の輪郭に触れた。
2021年3月18日 21:32
Twitter300字ss 第七十一回 眠 ミンミン蟬の鳴き声を聞いてはいけない。 そんな話を祖母から聞いた。冬の寒い山奥では、季節外れの蟬が鳴くという。 一緒にいた姉は可笑しげに鼻で笑った。「蟬は夏の生き物よ。そんな事あるわけない」 僕もそうだと頷いた。この時までは確かにそうだと思い込んでいた。 ーーみ゛ぃィいんン、み゛ミ゛ィぃいぃん 四方の木々が蝉のような鳴き声
2020年2月26日 20:29
肉体の死は己の死だと、人は容易く受け入れる。皮に入った魂よ、箱が無ければ失せるモノよ。その身 如何に汚されようと、その実 如何に堕とされようと。種と言うべき心が在れば、空高く跳べさえするだろう。実りの末が腐るのみとして、種子は永遠に語られよう。嘆きも喜びも得たその先が、お前の種にも実ることを。
2020年2月2日 21:54
誰かの願いが降ってやまないお腹がぐずぐず燻ってるあなたのことばが欲しいのだ私の内を荒らして去った、素知らぬあなたが欲しいのだここにあるのは深い溝だけあなたとあるのはこの溝だけどうにも悔しい気がするのはきっと私だけなんでしょ後にも先にも散らばった心を拾い上げることすら出来なかった今日という日を忘れやしない忘れるものか #詩 #創作 #雑文
2019年11月5日 00:51
続く。何だろうと続いていく。明日も明後日も明明後日も。悲鳴を上げた夜だって、明ければただの新しい朝だ。コンテニューされない日々の中、見えない嗚咽をばら撒いた。灰色の空を、ビルの細い隙間から見上げる。この狭さがぼくの世界だ。喧騒に身を埋めて自己を希釈すれば、ほら、なんて事ない棒人間だ。さよならさよなら、かつてあった筈のぼく。 おはようおはよう、カスタマイズされたぼく。ぼくは死
2019年3月31日 20:57
おもちゃ箱の中は楽園だった。柔らかい服、甘いお菓子。みんなみんな、おんなじ顔でしあわせそうに微笑み笑う。手を取り合って、行こうよ、夢の国。ふしあわせなんて知らないわ。幸福だらけの箱庭で、一体何が不満というの?棄てられるまで、だあれも知らない。いつか見るのよ、外のガラクタを。 #雑談 #ss #短編 #創作 #詩