襟合わせが気になる海外での着物
Vol.117
日本の文化に触れるとき。
触れるというか体験する時はいつも心が締まる。
いや整うというのが正解かもしれない。
お茶をいただく時や書に向き合う時など、ひとつひとつのモーメントがリセットされるかのように新しい気持ちのようになる。
これもまた海外暮らしが長くなってわかる典麗への憧憬かもしれない。
着付けをすると背筋が伸びる
夏休みを日本で過ごした私たち。
夏祭りはやはり赴きたい。
せっかくなので浴衣を着せて参加させたいなと思っていたら、出国間近の日に近所でお祭りがあるという。
早速、買っておいた浴衣を娘に着せることとした。
着付けは私が思い出しながら行ったのだが、娘に大事なポイントとして強調したのは以下の点だった。
着物も浴衣も右前。
大人の丈は長め。
おはしょりを整える。
襟元を締める。
もっと言いたいことはいっぱいあるにせよ、もはやイタリア人の娘に着せる時に覚えておいて欲しいことだけは伝えたつもりだ。
襟元の説明はかなり強調して説明
ヨーロッパに限らず、着物や浴衣を海外の人が着ると、襟元を大きく開けてしまうことがある。それこそボタンで言えば、第二ボタンまでガッツリ開いているような。そこに金のネックレスでも見せますか? とも思ってしまうが、これは息苦しいからかもしれない。
その一方で着物ならではの襟元を合わせる時、シャキッとする気持ちもあると私は考える。
時に欧州で開催されるジャパンフェスティバルの時に、日本の人が着物や浴衣を着ておもてなしすることもあるが、そこで大きく襟元が開いていると少し残念な気持ちになる。
なので、襟元はきちんと締めると心も締まるからというのは念を押して教えたかった。
少しどころか大人の仲間入りをした心地に
たとえ浴衣であっても、そう着付けの流儀を伝えると、着た本人も心が引き締まる感じになるらしい。
お祭りに浴衣を着て行っただけのことなのだが、本人は少しお姉さんらしくしようとか、子供の着付けとは違う丈長めの浴衣の特性から大股で歩くことができないので、歩き方も気を付けてみたり。
コスプレと勘違いされた時期もあった外国での着物
着付けって面白いなぁと思うも、イタリアでは着物をもう着たいとは思えない自分がいる。
昔とはいっても10年前以上のことなのだが、主催者からの着物での参加の依頼もあって、幼い姉妹に浴衣を着せてイタリアの日本イベントへ伺うこととなった。この時、写真を撮られるのは仕方がないとは思っていた。
しかし、「ピッコレ コスプレイヤー(コスプレしている小さな女の子たち)」として不本意に掲載されてしまったことは、なかなかな思い出である。
今イタリアに置いてある着物は、すっかりお蔵入りに。
そろそろ日本に持ち帰ろうかとも。
なかなか海外で着物着るって勇気がいることなのだとも学んだ。
日本で着てこそ美しさに意味がある
浅草に久しぶりに赴いた時、まぁびっくりするような彩豊かな着物姿の人を見かけるようになった。
よく聞けば言語が違うので、レンタル着物を着て街歩きするというもの。
そのいでたちはどうであれ、やはり着物と日本の風景はよく似合う。
このように日本の景色とその伝統の衣装とが重なって、日本なではの風雅の心得が海外の人にもわかってもらえるといいなと願う。
レンタル着物はきちんと着付けしてもらっているようなので、襟元もしっかり合わさっていてさらに良し。