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30.帰国して仕事漬けの日々がはじまる

1年後の秋にスローフードイベントを控え、これからは休みもないと覚悟を決めてありました。
そしてこの1年間は会社員時代よりも忙しく、実のところ記憶もあいまいです。
それでも断片的に過去のブログで様子をうかがい知ることができるので振り返ってみようと思います。


スローじゃない東京生活

アペリティーボして散歩して夢のような日々を過ごしていただけにギャップがすごいです。
ブログを見て驚いてます。

9月30日21時に成田空港に着き、翌朝10時からさっそくオフィスに行っています。
その日のうちにデスクワーク、打ち合わせ、展示会視察……ものすごい勢いで東京生活にもどっていて、アラフォーの体力、恐るべし。
この日のランチはうどん。
夜は自宅で食べられたようでシチリアの大家さんから教えてもらった夏野菜スープを作っています。

初日から1ヵ月は休みなしで働いていたようです。
11月初めに軽い風邪で休んだとありますが、これがイタリアから帰ってきて初めての休日と書いてありました。

そして、このあと個人的な記録は一切なくなります。
まさに滅私奉公、生きている時間をすべて仕事に捧げていたようです。

仕事と趣味のあいだで

それでも、スローフードの理念に共感しているしイタリア的なものも仕事に取り込みやすいしで、忙しいながらも充実していました。
仕事と趣味とが一緒くたになっているような状況なので、どこまででも頑張れてしまったのだと思います。

とくにイタリアンのシェフとコラボレーションする企画が好きで、スローフードイベントはもちろん、企業イベントでもちょくちょくやっていました。

今も乃木坂にあるトラーパニ出身のニーノシェフにお願いしてシチリア料理教室をやったり、日本人で初めてイタリア版ミシュランの星を獲得した堀江シェフとピエモンテ料理のイベントをやったり。

堀江シェフとはとくにコラボすることが多く、このご縁で実は一緒にシチリア旅もしました。
それはまた別の機会に紹介します。

スローフードニッポン2009

こんなものが出てきて記憶が一気に呼び覚まされました。
スローフードイベントの事前告知用バナーです。

イベントPRツールのひとつが出てきました

横浜各所の会場で17日間にわたっての展開。
メインは最後の週末に某不動産会社の遊休地をお借りしての、日本版「サローネ・デル・グスト~食の祭典」だったのですが、これ以外のことをすっかり忘れていました。
あんなに一生懸命やっていたのに。

スローフード・オン・フィルム

横浜の小さな映画館を借りて「食の楽しみ」をテーマにした映画上映会をしました。
映画館の中でもスローな食材で準備した食べ物を提供するなど凝った企画を立てたのです。
もちろん私の大好きな映画「かもめ食堂」も上映しました。

スローフードディナー

本家イタリアのイベントで必ず実施されるので日本版もやろうということになりました。

山形庄内の食材を使ってシチリア料理を提供してくれたのはタオルミーナの「グランドゥーカ」で修行し自身のお店を横浜に同名で出すことを許された斎藤シェフです。
写真が残っていたので何皿か紹介します。

手打ちパスタ 山形そば粉の「カサレッチャ」に干しダラのソース
鶴岡賀茂漁港より鮮魚のソテー「ア・ギョッタ」秘伝豆のソース
アルカ食材日本短角種の「インヴォルティーニ」秋野菜のソース、庄内キノコのグリル
山形フルーツの「カッサータ・シチリアーナ」

堀江シェフにもスローフードディナーをやってもらいましたが、残念ながら写真はなく。
今のようにスマホで簡単に撮れませんでしたから。
メニューリストはあったので載せてみます。

1.大和食材の4種盛り~冷たい前菜
三谷牧場のモッツァレラチーズ、ハーブ、トマトのサラダ
2.大和太ネギとゴボウのトルティーノ
3.サワガニのリゾット
4.ヨモギを練り込んだタヤリン サルシッチャ入り大和牛のラグー
5.大和牛 ネックのケッパー煮 大和マメ添え
6.シナモンのムース 柿のコンポートと“ときめき”ジュレ添え
※「ときめき」は春鹿の発泡日本酒。

本番は会場のコントロールで着席できなかったものの、試作を味見したような気がしてきました。
彼の作るタヤリンは絶品なのです。

クサヤとコラトゥーラ

スローフードイベント会場で実施したもののなかで、今でもよく覚えているのは「クサヤ&島焼酎ナイト」。
八丈島まで行ってクサヤづくりの取材やイベント打ち合わせをしたので思い出深かったというのもあるし、イタリアからの参加者がナポリの魚醤「コラトゥーラ」に似ていると言ったからです。

クサヤは伊豆七島で昔から作られている魚の保存食。
ムロアジやトビウオを独特なつけ汁に浸けて発酵させることで保存性を高めるのです。
クサヤ生産者の方にも八丈島から来ていただいて、クサヤの作り方や食べ方など教えてもらい、島焼酎と一緒に味わうという企画でした。

臭いも味も独特だし、イタリア人たちが食べても大丈夫かと心配したのですが、意外にもすんなり受け入れられて驚いたと同時に、歴史的背景を知り生産者から直接話を聴いたからこそ、その美味しさが伝わったのだと思いました。

祭りは終わった

イベントというものは、始まったらあとは予定通りに進めていくだけです。
アクシデントや予想外の出来事ももちろん起こりますが、それもある意味想定内ですし、とにかく何が起ころうとも時間は同じように1日24時間ずつ前に進みます。

無事にスローフードイベントの全スケジュールを終えた日のことは、まるで覚えていません。
後片付けもあったし、そのまま横浜のホテルに泊まったような気もします。

会社員時代のような忙しさはもう来ないと思っていたのに予想に反してそれ以上の忙しさを体験することになりました。
あれ以来、あれほどの多忙さはやってきていません。
そして、もうこの先の人生でああいった体験をすることはないでしょう。

まるで祭りが終わったあとのような、急き立てられていた何かがなくなりぽっかり空洞ができたような心持ち。
でも、頭の中はニュートラルな状態に戻っているので何かに縛られることなく自由な判断ができます。

オフィスに戻り、事後処理をしつつ改めてこの1年を振り返り、これを再び繰り返すのはもうムリだと思いました。

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