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エッセイ | 昇格

自分の家で部屋着を着て過ごすことは誰もが行っていることだと思っている。私もそうやって過ごしてきた。

中学生や高校生時代は学校指定のジャージや、部活のジャージを着て過ごしており、ちょっとそこまでといった感じで外に出ると、近所の人には私がどこの学校に通っているのかがすぐにバレてしまっていた。

大学生になると部屋着はスウェットに変わった。学校指定のジャージはなかったため、動きやすい服装といえば締め付けの少ないスウェットになる。

大学生の頃は家で過ごす時間が長かったため、スウェットがダメになるまでの時間も短かった。気付いた時には裾は破け、穴が開いていた。


大学生にとってお金は大切だ。もちろん大学生ではなくなった今でもお金は大切なのだが、価値観が全然違っていた。

私は部屋着のためにお金を払うことをためらっていた。少しくらいの穴であればこのまま着続けられるし、裾が破れたからといってすぐに買い換えるような私ではなかった。

ただ、そんなスウェットを着続けていたある日、部屋中に異常なほどのホコリがあることに気付く。

私が普段通りに生活しているだけなのにこのホコリの量はおかしいと思い、何が原因かを考えていると、どうやらスウェットがほつれたものをまき散らして生活をしていたことを知る。

ここまでくるとこのスウェットとはお別れする必要があると思い、新しい部屋着を探すこととなる。


大学生の頃、私は異常に洋服を持っていた。これは私だけではなく、他の人も同じだったと思う。毎日のように違う服を着て大学へ行く生活を送っているのだから、洋服ダンスはパンパンだった。

そのため、タンスや引き出しを開けてみると着なくなった洋服が多く入っている。それらを引っ張り出して懐かしんでは、「もう着ないけど、捨てられないな」という洋服を部屋着として残すことにした。

これが俗に言う部屋着昇格だ。1軍では戦えない2軍、3軍落ちとなった洋服たちが、最後に舞い戻ってくる場所なのだ。


部屋着昇格を果たした洋服たちのポテンシャルは高い。新品と同様の洋服もあれば、高校生の頃から着ていた洋服もある。大学生の頃に1軍だった洋服が、今も部屋着として活躍している。

そして、ポテンシャルの高い洋服とは別で存在するものもある。それはバンドTシャツだ。

好きなバンドのライブへ行くたびに増えていくバンドTシャツ。それらはライブが終わった瞬間に「さすがに外出では着られないけれど捨てることもできない」といった感情から部屋着昇格を果たす、珍しいタイプの洋服だ。

まれに1軍入りするTシャツもあるが、私の人生では1着しか存在しない。

私がこのエッセイを書いている時も、大学生の頃に着ていたパンツとバンドTシャツで過ごしている。私は過去をまとっている。



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