情報社会を生き抜くための本_最終回「情報社会における教育」(石野正彦)
この3月で完全退職。退職を機に「情報社会における教育」という本を上越教育大学出版会から出版する。大学院の授業録をもとに執筆した。これまでNOTEに書いてきた「情報社会を生き抜くための本」の内容も盛り込まれている。下記のような4部構成になっている。
第1章 「情報社会の現状」私たちは高度情報社会に生きている
コロナ禍によって日本のデジタル化は先進国の中でもかなり遅れているこが露呈した。私は、20年以上も足踏みを続けた「教育の情報化」の遅れに原因があると考えている。それは、学校現場の問題もあるがそれ以上に社会が情報化に対して懐疑的であったからだと思う。「日本は進んでいる」という思い上がりと所詮専用ワープロがあれば仕事はできるさという了見の狭さが慢心を産んだ。また、情報教育が「コンピュータ教育」ととらえられたことも原因だ。そんなこんなのぼやきと中国が進める全体主義国家の勢いある情報化への懸念とでこの章はなりたっている。
第2章 「情報社会の未来」教育は社会にコミットできるか
現行の学習指導要領を策定するときの根拠となった中教審の答申に「2030年そしてそれ以後の社会」を目標に指導要領を考えると書かれている。10年後そしてそれ以後の社会のために学習指導要領が定められたのだ。これはすごいことだ。原子炉の廃炉だけでなく、今の社会のさまざまな課題が解決できないまま先へ先へと送られている。それを解決するのが先の時代を生きる子供たち、そしてその子供達を教育するために今どうするかという視点で学習指導要領をとらえなければならない。そんな思いでこの章を書いた。
第3章 「情報社会の子供たち」10年後に発揮される能力
超便利な時代だからこそ、失ってしまう人間の能力がある。むしろ、じっくりと体幹になるような基礎的な人間の能力をしっかりと身につけていれば、どんな情報化の波が来ようがぶれないで波に乗っていける。それには幼児期に思いっきり遊び、生活習慣をしっかりと身につけ、読書の力をつけ、体験を積むことだ。身体と精神ともに体幹をきたえることは、レジリエンスをつけることになる。情報弱者にならぬためにも情報活用能力だけでなく、子供達が身に付けなければならない能力をも考えてみた。
第4章 「情報社会の教師」トーク&チョークの世界からの脱却
先生たちが変わらなければ時代を変えることはできない。口だけで伝えられる力のある教師であれば、それはそれでいい。しかし、そんな能力がなければありとあらゆるものを使って教育にあたるべきだ。口だけで伝えられなければ、地面をならして尖った石で図を描けよと思う。それがICTになっただけだ。また、自分に伝えられることだけ伝えていればいい時代ではない。自分以上に子供たちが能力を発揮できなければ未来の課題を解決なんてできない。考える方法や能力を子供達に身に付けさせなければならない。未来が拓かれるかどうかは子供達にかかっているし、今教師が子供達に何をどう教育するかにかかっている。・・・と思う。
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