保護者参加で授業が変わる! 続・「親子討論会」を開け
前回の「ヒント帳69」の続きである。
20年以上前、環境問題への危機感が高まる中で実践した保護者参加型授業について紹介をしている。
(前回の「ヒント帳69」はこちら⇊)
家族参観会の学校行事を使って、学級で「親子環境会議」を開催した。
会議=討論のテーマは、「人類は滅びるか 環境問題は解決できるか」。
調べ学習を進めていく過程で「このままでは、人類が滅んでしまう!」という子供の切実な思いから設定されたテーマであった。
子供たち待望の時間が来た。
今回は、その様子をお伝えする。
調査活動の発表
2時間続きの授業であった。
1時間目は、個人またはグループごとに環境問題の原因や現状、解決方法などについて調べた結果を発表し合った。
参観にいらした保護者の方たちが、そんな子供たちを取り囲んでいた。
発表した内容は、「地球温暖化」「酸性雨」「オゾン層の破壊」「森林破壊」「熱帯雨林の減少」「大気汚染」「人口問題」などについてであったが、前回お伝えしたように、子供たちは具体的に自分たちの暮らしと関連付けて調べていた。
そのため、「全ての環境問題は繋がっている」「全ての環境問題を引き起こしたのは人間、すなわち自分たちである」ということが、子供たちの共通認識だった。
子供たちによる討論会
2時間目はまず、テーマ「人類は滅びるか 環境問題は解決できるか」に対して子供たちだけによる討論会を行った。
子供たちの意見は、次の三つに別れていたが、大別すれば、「滅びない」「滅びる」の二項対立型であった。
「環境問題の解決はきっと可能だから、人類は滅びない」
「いくらかは環境問題を解決できるだろうから、滅びずに済む」
「環境問題の解決は不可能だから、きっと滅びる」
具体的には、次のような意見が交わされた。
「一人一人が努力をしていけば少しは良くなる」
「環境問題を解決する方法はあるのだからそれを実行すればいい」
「大気汚染も前よりは良くなってきている」
「努力すればできるというのはきれいごとに聞こえる。学校のアルミ缶回収だって、持ってこない人が多い。」
「私たちは今の便利な暮らしをもう捨てられない」
「不便な暮らしに戻そうとすると、つぶれる会社が出るのではないか」
「環境問題を解決する技術を生み出していくときに逆に環境を破壊してしまう」
保護者が意見を述べる
こんな子供たちの発言を受けて、授業後半は保護者の方々に登場していただいた。
事前に告知をしておいたので、そのつもりでいらしていた方が少なくなかった。
例えば次のような考えを述べてくださった。
「『滅びる』『解決』をどのレベルに設定するかで答えは違ってくるが、恐らく人類は、病気になったり不健康になったりしながらも、滅びず生き続けていくだろう」
「日本のダイオキシン基準値はドイツに比べて800倍ゆるい。こういうところから変えていくことが必要。私たち一人一人にできることはたくさんある」
「努力を続けていくことが大切。何もしないでいたら滅びるが、努力を続けることで、解決に近付ける」
子供たちの感想は?
こうした「大人の考え」を聞きながら、子供たちの中から、「おーっ!」という歓声が上がったり、「そういうことじゃあないんだよな」というつぶやきが聞かれたりしたが、子供側から反論を述べるような場は設定しなかった。
だが、「この未曾有の問題に対して、大人と一緒になって考えた」という手応えを子供たちは得ることができたようだった。
また、保護者の側からすると、自分たちの子供が環境問題に対してどんな考えをもっているのかを知ることができたであろうし、ご家庭によっては、普段とは違う自分の姿を見せる機会になったことだろう。
授業後の子供たちの感想のごく一部分を紹介する。
インターネットなど遠い世界の話だった頃の実践であるので、子供たちの知識や収集した情報に「時代」を感じる部分もあるが、親子討論会そのものは現在で有効な方法であると思う。どうだろうか。