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けがれた者達の歌 春雷

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春の季節に書いた 春の詩と物語の在り処
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#風

雨風

雨風

我慢なんて
性に合わない

身の内に
溜め込んだものを
僕は何時か
吐き出してしまう

既に
言葉と共に
僕の風が漏れているんだ

風

僕が
空を見上げていても

僕が
海を見ていても

ずっと
風が吹いていれば良いんだ

星が見えない夜も

雷が鳴る夜も

ずっとずっと
風が吹いていれば良いんだ

僕が
眠っていても
風が吹いていれば良い

なんて事ない夜

なんて事ない夜

夜道を歩いていると

星が瞬く

夜道を歩いていると

猫が鳴く

夜道を歩いていると

暗闇が視える

夜道を歩いていると

風が吹く

なんて事ない夜に

夜道を歩いていると

月が見えているんだ

駆け行く時

駆け行く時

僕は月を眺めに出掛けたり

雨の音を聞きに離れたり

風の向きを見に外に出たりと

歩き回ったりするけど

僕を君が呼ぶ時

綺麗な人が待ってるんだ って

駆けて行くんだ

白尾の者

白尾の者

風に靡く白い尻尾

まるで遊ぼうと

誘われているみたいだ

風と共に

夜空に駆け出し

星に触れて瞬かせ

海に触れて波を起こす

眠り時は

森の奥

月灯りの照らす中

白尾の者は眠るのだ

優しさの世界の中

優しさの世界の中

私の瞳に

何時も映るのは

柔らかな世界と

優しい言葉

君の風は届いているよ

君の便りも届いているよ

酒と三日月

酒と三日月

グラスの酒に月を映し

欠けた氷と

三日月を並べ見てた

カラカラと

グラスを揺らし遊んでは

答えるのは

風の音

死を朝にまぜて

死を朝にまぜて

魂を狩る者に
纏わり付く死の臭い

朝露で洗い流せば
拭えるのか

朝霧に隠れれば
薄まるのか…と

未だ
青くない空を眺める

音の無き霧の中にいて死神は

身に着いた臭いを風に乗せ

生きる者に

死の予感を与えている

今日から3月

今日から3月

春の風は

縦横無尽に吹き荒れる

其の風に色を付けたら

きっと沢山の色を

纏っている筈なんだ

気配

気配

水の中を漂う流れの様に

風に纏われる様に

花弁が舞い落ちる様に

君の気配が心にあるのだ

女郎蜘蛛

女郎蜘蛛

素知らぬ顔をしていても
気になる者を探すように
風に
透けた糸を乗せ飛ばす

透けた糸が
辿り着いたなら
気付かれぬ様に結び付け

繋がる事に安堵する

私が飛ばす糸が
君に見える様になれば

此の糸で
他の者に見えぬ
解けぬ縛りを掛けるのだ

影

橋から見えるのは海の流れ
春は淡い色を僅かに残して北へ

影の子が欄干で
風の子に揶揄われている

私は
影の子と風の子の頭を撫で
風の子に

「揶揄い過ぎると
小奴に牙が生えて喰われるぞ
仲良くしたくてなら
構わないが…

なんなら
私がお前を喰おうか?」

と美味そうな頬を突付く

花と炎

花と炎

着火点が低い訳では無い
花薫る風でなければ
火は炎には成らずにいて

花薫る風に
常に赤い炎を揺らしてしまう

身の内に有る炎は
花薫る風に
魅せられている

我が身を突き抜ける様な
強い花薫る風が吹けば

黒い炎や青い炎となって

散る花弁さえも残さず

花を焼き尽してみせるのだ

森

森の中で追いかけて
走り回って
見失って
置いて行かれた

何時だって月は遠くて

幻の様な月明かりを
手で触れるだけ

月が太陽を
手に入れたから
置いて行かれたのかな?と思い

風に「如何したら良い?」と
聞いても答える訳無く

ただ、ただ、
青い空を見上げ
雲の流れを眺めてた