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けがれた者達の歌 春雷

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春の季節に書いた 春の詩と物語の在り処
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#春の精霊

春雷の目覚まし

春雷の目覚まし

夜空に轟く

雷の音が

眠るモノ達を叩き起こす

闇に眠る者も

血に眠るモノも目覚め

騒ぎ出せ

雨音で蟲が湧き

強風で木々を揺り動かす

未だ眼の冴えぬ者は居らぬかと

春の精霊が

裸足の足で

草花達を踏み付け

芽吹かせる

眠るモノは居らぬか?

皆 目覚めたか?

春一番 (改

春一番 (改

寒さの残る森の中

春の精霊が

緩りと目覚める

春風を吹かそうとすると不意に匂う

冬の薫り

「此の薫りは雪の子かい?」と

春の精霊が言うと

雪の子が遠巻きに見ている

「春一番に乗って冬将軍の所まで お行き」

と強い春風が

雪の子を巻き込み

遠く北の地まで吹き荒れるのだ

雲と鯨

雲と鯨

春の精霊が

「雨が降らぬと皆、目覚めが悪い
友を呼んで来ておくれ」

と鳥の使いを飛ばす

暫くすると空に
透明な鯨が
泳いでいる姿が見える

尾ひれが揺れると
春風になるのか
地上の草花が風に揺れる

大きな雲を
鯨の口で吸い込み
鯨は細雨を降らせる

此処に春が来たのだ

春の目覚め

春の目覚め

春の精霊が
目覚めさせるモノの中に

冬の間、
冷たき風や雪に
埋もれたモノ達が居る。

不愉快な臭いと
醜き姿に変わった
不浄なるモノ達の目覚め

命果てたモノ共が
沸き立ち
森の中に
不愉快な
嗤い声と鳴き声が
風と共に森に響き渡る

春の覚醒め

春の覚醒め

濡れた姿のままで
艶やかに咲いた
春蘭を愛でながら笑う
春の精霊

「森の妖精共に礼を返すとするか」と

春の精霊は
春風を巻き起こし
森の中のに
春の息吹を撒き散らす

土の中で
眠れるモノ達の
春の目醒めが始まる

春の精霊と髑髏

春の精霊と髑髏

前の目覚めの時に
洞窟を護る様
緑の髑髏を置いて
行ったのだか…
と、見回すと

緑の髑髏は
目の穴の所から
植物が生えており

「此れは寒蘭?いや、春蘭か
 森の妖精共の悪戯かい?」と

春の精霊は笑う。

「護り、ご苦労さん」と、

緑の髑髏を撫でて
春蘭の花を咲かせる

春の精霊

春の精霊

森の奥深く
苔生した洞窟の中
春の精霊が目を覚ます

寝起きの春の精霊は
濡れた髪を掻き上げた時
暖かな
空気の流れを感じ

濡れた服や
自分の足を眺め見ては

「眠る時に
 雪に埋もれて寝れば
 寝坊しないと思ったのに」と

既に
溶けきってしまった
全身に残った
雪の雫を眺める

前回⤵️

春の花

春の花

未だ冷たい風が吹くと云うのに
春の花を春の妖精が
咲かせて回る

一面黄色に染まった
菜の花畑の中

今日は朝から
牡丹雪が舞っている

「まだ早かったの?」
「え〜。春の精霊様が
 寝坊するから咲かせたのに」
「きっと冬将軍の嫌がらせよ」

と春の妖精が
牡丹雪が舞う中で口喧嘩

続き⤵️

山桜と春の精霊

山桜と春の精霊

森の中を歩く
春の精霊
木々に埋もれるように
山の中にある
大きな山桜

春の精霊が
触れると
眼を覚ました様に
山桜が咲き乱れる

春の精霊

春の精霊

山深い
誰も訪れる事の無い
洞窟に蔦に覆われた
頑丈な木の扉

数ヶ月の間
開ける事無い
開かずの扉

春の変わり目に
開けると
中に潜んでいるのは
冬眠していた
春の精霊