マガジンのカバー画像

けがれた者達の歌 夏陰

311
夏の季節に書いた 夏の詩と物語の在り処
運営しているクリエイター

2024年7月の記事一覧

薄闇の月

薄闇の月

薄闇の中を

僕は歩く

通り掛かった

高いビルの隙間から

白い月が見えた

少しでも

近付きたくて

あのビルに登ってみたんだ

月明かりが照らす

此の街は

風も吹かず

虫の音も無く

とても静かで……

僕以外に

誰の姿も無いんだ

弦使い

弦使い

私が弦を弾くと
高い音が響く

此の音は
お前の手足の
神経の弦だ

私が弦を弾くと
低い音が鳴る

此の音は
お前の意識の
神経の弦だ

私はお前を操る

滑稽な程に 怒れ
惨めな程に 嗤え

狂う程に 泣け

苦しむ程に 喜べ と

お前は

不愉で悪意ある

諍いの言葉しか

口に出来ないのだ

雷鳴

雷鳴

低い音の雷が鳴る

空を見たら

分厚い灰色の曇り空が
雷に振り落とされそうに
鳴り響くんだ

風が止まって

小雨が地上に落ちて
直ぐに乾いて消えて逝くんだ

本降りにないからか

雷の音は鳴り止まない

濃い灰色の曇の中に
雷光が走る

此の空の曇を
叩き落とす様な

雷鳴が鳴るんだ

太陽の刃

太陽の刃

手に持つ
刃に陽を映し
眩しい光で
刃を焼いていく

焼けた刃の熱は
皮膚を焼く程の熱さだ

此の刃を
振り回し

太陽の熱で
焼けて焦がれ

全て灰になれよ

僕の戦意さえも
燃や尽くす程に…

針金人形の戯言

針金人形の戯言

こう見えても

心はあるし

考える事も多いよ

見て無いと

思ってるでしょう?

動かないと

思ってるでしょう?

此の赤い針金が

巻き付けば

僕に気付けるの?

夢の中の鬼

夢の中の鬼

夢の中に

我を見なかったか?

全身が闇に染まった

黒い鬼

居た筈だ

気付か無かったかい?

じゃあ

次に見る夢で

我の爪で

君の手の甲に

印しの傷を付けておこう

少しばかり

肌に血を滲ませ

少し痛む事で

思い出せる様に

此の闇色の鬼を

蟲取り

蟲取り

蝉の鳴く森で

虫取りをする

妖の子

森を通る者に声を掛ける

僕達の虫取り遊びに

興味あるの?

あっちの樹の樹洞に

虫が沢山居る処があるんだ見てよ

と誘う

誘われて見た者は

蟲達は巣穴から出てきて

人間に集って身体の肉を

毟取る

人間が蟲に

喰い尽くされる姿を見て

妖の子達は嗤う

知らない街

知らない街

休暇に

遠くの街まで

車で行く事にした

途中とても長い

トンネルに入って

なんだか

生臭い臭いと

不気味な

低い唸り声みたいな?

と思ったけど

車の音だと思い直したんだ

だけど…

トンネルを抜けたら

知らな無い街の名前

振り返って見たら

トンネルは

何処にも無かったんだ

戯言

戯言

とうに

夏が来てると言うのに

肝の冷える話しが

少ないと思わないか?

心を温める話しばかりでは

余計に暑さが

増してくるじゃないか

夏は呟怖の季節だ

さて

何を語ろうか

猛暑

猛暑

茹だる暑さの中
皆の脳味噌も
腐ってしまって

黴や腐敗臭を放ってないか

足元の
影の中に潜み
嘲笑ってる物達の
声も聞こえなくて

脚を喰われたか

夏の夜闇に
潜む物達の悪戯に
警戒しないと
身を無くしてしまうぞ

雫の子

雫の子

蒸し暑い日が続いて

青い空気を
纏っては
埃っぽくて

蒼い海を
纏えば塩塗れで
しょっぱいんだ

今日
空を見たら
強風が言うんだ

もう少しで
綺麗な雨が降るよって

熱波

熱波

暑さが
僕を追い詰めて
攻めて来る

暑さを
振り払う様に

僕の中の火を滾らせ

熱波を
相殺させてみようか!!

夜の中

夜の中

何処までも
深い深い夜の中に

星が煌めいて

一つ一つを見ると
星の色が違う事に気付く

薄いベールを
掛ける様に
雲が星を隠したりすると

風が雲を
遠くに連れて行ってくれるよ

僕は
手を伸ばし
あの星に
触れる真似をする

此の
深い深い夜の中に

僕も居るんだ

朽ちた家屋

朽ちた家屋

📌朽ちた家屋

雨が降れば
雨の流れる音と
弾け飛ぶ音がして

風が吹けば
壁を叩く音と
吹き抜ける高い音がする

虫や動物達も
雨風を避ける為に

朽ちた家の
壊れた壁の
隙間から
寄り付いて来る

息を殺し
互いに存在を隠している

私は
それ等に
気付かないフリをして
雨の日はやり過ごすのだ

📌朽ちた家屋と池

雨の後は
池に葉が沢山
浮いていて

池の中の
メダカさえも
見えない と

もっとみる