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【読書まとめ&いろうたの考え】「言葉の品格」(イ・ギジュ著)を読んで、自分の使っている言葉を再考してみる

「何気なく口にしたひと言に品格が表れる。その人だけの体臭、その人が持つ固有の香りは、その人が使っている言葉から匂い立つものだ」

これは表題「言葉の品格」の冒頭に書かれている一文です。本書のすべてがこの言葉に集約されていると言っても過言ではありません。それくらい、日頃どのような発言をするか、心を込めた物言いをするかが重要だと著者のイ・ギジュ氏は述べています。

○どんな本?

本書は著者が過去に書いた本や寄稿文を元にしているため、一部同様の表現が散見されるものの、元新聞記者のイ・ギジュ氏が日頃どれほど言葉に注目しながら世の中を見ているかが分かる一冊になっています。

「品格の『品』は口が三つ集まって出来ている漢字である。すなわち言葉は積もり積もって一人の人間の品性となる」

など、漢字を分解してその言葉の持つ意味そのものをわかりやすく説明している点は、国語学を学んでいた私には特に刺さりました。漢字に限らず韓国語、英語でも同様の分析がされており、言葉の品格のみならず、語源の学びにもなって非常におすすめです。

序文を含む一講から四講まであり、それぞれ六つのエッセイが収められています。すべてのエッセイが秀逸なのですが、ここではその中から特に印象に残ったものをご紹介します。

○序文 言葉にも帰巣本能がある

序盤から引き込まれるタイトル。続く文章も頷きながら読んでしまいました。

今は「言葉の力」が世界を支配する時代。あらゆる力は外に向かうと同時に内にも作用するが、言葉も同じである。川をさかのぼる鮭のように、口から生まれた言葉も、口の外に出た瞬間、巡り巡って吐き出した人の耳と身体に染みこんでくる(本文の一部を省略)。

この一節を読んだとき、先日紹介した藤井貴彦氏の著作「伝える準備」の一節を思い出しました。ここでもまた「あなたの言葉があなたを作る」(自分の書いた日記の文章が未来の自分に返ってきて励ましたり叱ったりしてくれる)と言っていました。言葉を大切にする人は、自分の発言に責任を持っているのだと痛感した部分です。

つづく序文では、

一冊の本を読むと言うことは、作家の思考と心を読む行為であるだけでなく、究極的には「自分」を読むことだ。

と書かれています。私はこれを、読みっぱなしにするのではなく、本から著者の思いを感じ取り、自らの行動や考えを振り返ってみなさいと解釈しました。実際私は本書を読み、改めて自分の言動や使っている言葉を振り返っているところです。

○一講-1傾聴 相手はあなたの口ではなく耳を求めている

昨今では傾聴の大切さが言われるようになりましたが、実際に傾聴するのは大変です。

「傾」「人」に向かって頭を傾けることを表す漢字。つまり相手の前に近づいて耳と関心を傾ける、という意味だそうです。そして「聴」の字を分解・解釈すると、「王」のようにねばりづよく「耳」を傾け「目」を大きく見開いて相手を見つめれば「心」まで得ることが出来る、となります。

これは初めて知った事実ですが、一部の脳科学者たちは傾聴が難しい理由を、人の高等な脳のメカニズムから以下のように説明しています。それは、

「言語圏により多少の差はあれど、人間は一分当たり約二百単語まで話せるが、脳自体はその四倍の八百単語まで受け容れ可能である。つまり、脳は四分の一の能力しか使わなくても相手の話を充分理解できてしまうため、わざわざ傾聴しないのだ」

というものです。

だから傾聴は難しいのか! と、読者の私は得心しかけたのですが、イ・ギジュ氏は「そう単純な話ではない」と続けます。耳に入ってくる声から隠されたメッセージを捉えて「本質」を読み取らねばならない、というのです。ここで言う本質とは何か。それはぜひ本書を手に取って読んでみて欲しいと思います。

○三講-4 表現 言葉に多彩な模様と手触りを

こちらは前述の「伝える準備」の内容と重なる部分ではあるのですが、物書きとしては外せない「レトリック」の話題です。

レトリック(修辞法)は、メッセージを効果的に伝えるため古代ギリシャの哲学者も使っていた手法です。これは今日でも、日常生活で使えば平凡な会話を豊かにしてくれると言います。他者の興味を引くことが出来るので、会話をリードすることも可能。ただし、未熟者が使っても自分の言葉で自分を傷つけることになりかねないので実践は難しいとのこと。こういうのはやはり、日頃から訓練しておかなければ使えないと言うことですね。

○いろうたの感想

私たちは、言葉を覚えてからと言うもの、自分の気持ちを外に出すことが可能になり、やがて他者とコミュニケーションを取って気持ちを通じ合わせることが出来るようになります。しかしそのとき、相手を想いやる気持ちに欠けていれば傷つけてしまう恐れがあります。言葉は便利な半面、凶器にもなり得るのだと言うことを改めて本書から学びました。

本書にはたびたび、中国の武将や思想家らの言葉が引用されており、ずっと昔から、言葉に自らの熱い想いを込めたり、相手を思いやる発言をしてきた人物が多くの人々の心を掴んできたということが分かります(逆もまたしかり)。

SNSなどで簡単に自分の気持ちを発信できてしまう現代においては、ますます言葉の扱いに慎重になる必要があると私も思っています。言いっぱなし、聞きっぱなしにするのではなく、できれば相手の熱量や息づかいをも感じながら語り合う。聴き合う。そうできたとき、双方の距離はより一層近づくことが出来ると思います。

○いろうたの考え→とはいえ、言うは易く行うは難し

現実問題として、話すことも聴くこともエネルギーが要ります。だから、会話ってどちらにもエネルギーが残ってないと、そもそもまともに成立しない。最近、仕事が忙しくてめっきり会話の減った夫を見ていてそのことに気がつきました。私はもともと口数が少なく、本当に必要なことくらいしか話さないので、子どもが寝たあとは沈黙の時が流れることもしばしば。

「忙しい」
「疲れてる」

このような発言が飛び出す心身の状態では、ちょっとの不満からイライラし、言葉が乱れがち。丁寧且つ品性のある言葉を使うためには、まず心と体が健康であることが大事な要素になりそうです。

これは実際に経験したから言えることですが、寝不足状態で0歳児と2歳児の看病をしていたときの私は常にイライラしていたし、ちょっとのアドバイスも否定の言葉に聞こえて怒り出すこともあったように記憶しています。今では考えられないことですが、どんなに語彙力があっても不調の時に出る言葉は必然的に刺々しいものになってしまうのは恐ろしいことです。

現代人はとにかく、落ち着いた気持ちで大切な人と語り合う時間が持てるような心身の状態が保てるような生活を取り戻したほうが良い。穏やかな気持ちになれば、発する言葉も自ずと整ってくると言うのが私の考えです。

本当は誰しもが気づいているはずです。自分の発した棘のある言葉で一番傷ついているのは自分だと言うことに。気づいていながら、見て見ぬフリをしては更に自分を追い込み、身体が悲鳴を上げてようやく傷だらけの自分を認識する人も多いのではないでしょうか。

もちろん、言いたいことは言った方がいい。しかし、イライラから反射的に言葉を発するのではなく、何度でも胸の内で言葉を吟味してから言う方があなたの思いはより伝わるはず。スピード感が求められる現代社会だからこそ、落ち着いた物言い、洗練された言葉に価値が生まれるのです。

noteで文章を綴るあなたなら尚のこと、読み飛ばされてしまうような軽い言葉より、たとえ一人の心でも揺さぶれる言葉を発信したいという気持ちをお持ちだと思います。

私もそうです。この記事はもちろん、日々投稿している小説(現在は家族をテーマにした「あっとほーむ」執筆中)も、誰かの心に残るようなものを心がけて発信しています。発した言葉が自分を作ることを常に意識し、未来の自分が受け取りたくなるような言葉を投げかけていきたいものです。


イ・ギジュ氏「言葉の品格」が気になった方はこちら↓


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