10年前、この手紙が私に届いていたら。
10年前、この手紙が私に届くことはなかった。
でも、並行したもうひとつの私の世界では……と、
一縷の望みを託して。
10年前の私へ。
そう、今の君に宛てて手紙を書くことにした。
だから、この手紙を君が読んでいるのは2014年であってくれることを願う。
よく聞いてくれ。
君は、自分の人生の中で一番、自分の気持ちに嘘をついていた……自分を欺いていた。後悔が先に立ってくれたらいいのに。君は4年後の2018年、とても悲しいくらい本当のさびしさを体験することになるんだ。
この世には涙しかないんだって、泣いて過ごすことになる。
でも今だったら、まだ間にあうから。
真由子の病気と一緒に闘ってくれ。彼女は自分の病気のことを君に隠すだろう。そして近いうちに君たちは二人で沖縄へ旅行に行くことになる。それは、彼女が心臓の障害のことで落ち込んでいる君を元気づけるために計画したことだった。
沖縄から帰って来て2週間経った頃、彼女は入院することになる。そのときに進行ガンが発覚する。女性として自信を喪失してしまうほどの女性特有の病魔……
君はその病気を、きちんと正しい知識で理解してやってほしい。
彼女は苦しんで苦しんで苦しんで、君と一緒にいられないことを告げるだろう。君が以前、彼女の未来を思ってわざと突き放したのと同じ優しさ故のことだ……分かるよね?
でも彼女は君と別れたことを後悔していたんだ……
絶望のせいで病気と闘う気力さえ失うことになった。
今から4年後、真由子は覚悟を決めて君にそのことを伝えてくることになる。もう彼女には3か月しかないという人生のタイムリミットが課せられていたんだ。
この手紙を書いても、私の人生は変わらないかもしれない。だけど、もしかしたら…この世界とは違う君の世界の、10年前の私である君の人生では、彼女は……真由子はガンを克服して、君と一緒に人生を歩んでゆけるかもしれない。そうやって隣にならんで、
ともに手を繋いで、彼女と一緒に歳を重ねていってほしいと、私は魂に掛けて乞い願う。
どうか、どうかこの手紙が君に届きますように。
どうか、どうか真由子が泣かないですむ未来へと繋がってくれますように。
どうか、どうか神様。私は一生をかけても願うから。神様に祈り続けるから。
君と真由子が幸せで笑って過ごせますようにと。
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