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SS【砂漠の再会】前編1700文字


見渡す限りの砂漠。

ときおり吹く砂の混じった乾いた風が、頬に当たってうっとうしい。

ゲームのスタッフはぼくの目隠しを外すと、足早に車に乗り込み砂煙を上げながら走り去っていった。

目隠しが外されるとゲームが始まる。

今回の舞台は砂漠だ。


ぼくたちは夫婦でこのゲームに挑戦している。

ルールは簡単。

男女年齢問わず、二人一組で参加し、お互い目隠しされ同じエリアの別々場所に連れて来られる。

エリアは広大で、一人で生きていくのは厳しい過酷な環境だ。

ここがどこなのか、お互いどれくらい離れているのかも分からないまま、再会するまで探し続ける。タイムリミットは二十四時間。

時間内に再会を果たせば一人五千万円が手に入る。

しかし時間を過ぎればスタッフたちは放置され野垂れ死にする挑戦者を見届けたあと撤収する。

挑戦者の様子は絶えず超小型のドローンによって監視され、大金を払ってでも観たい一部の趣味の悪い富裕層たちに提供される。

成功率一パーセントと噂されるこのゲームに挑戦を決めたのには理由がある。

まだ幼いぼくたちの娘が難病にかかっていて、命のタイムリミットは刻々と迫っている。海外での手術が必要なため多額のお金が早急に必要なのだ。色々なつてを頼って二千万は集まったが、まだ八千万も足りない。

娘は命がけで戦っている。だからぼくたちはもう手段を選んではいられなかった。

そしてこの闇のゲームに参加を決めたのだ。


このゲームを攻略できるかどうかは運営側の決めるエリアにかかっている。

過去に成功した数少ない挑戦者は無人島のエリアだったらしい。

無人島といっても小さな島がたくさん存在するエリアで、お互い別々の島からスタートする。成功者は一人が島の高い場所でノロシを上げ続け、もう一人が船を作り、荒波に飲まれそうになりながらも島から島へと移動し相手との再会を果たした。それぞれの島には刺客として武器を持ったスタッフが送り込まれたり、トラップが仕掛けられたりしていたようだ。

一番難易度が低いと言われているエリアでさえそれだ。

砂漠の生還者は誰もいないらしい。

彼女はあまり身体が強くないので、ぼくは彼女になるべく動き回らず安全そうな場所を見つけたらそこでジッと隠れていてほしいと言った。


所持品は運営側が用意する。

ショルダーポーチに水のペットボトルとドライフルーツ、それにライトが入っている。

それ以外の物は持ち込み禁止だ。

エリア内で手に入れたものなら自由に使っていいが、ここは砂漠、役立つようなアイテムはそうそう見つからないだろう。

ぼくはまず目の前にそびえる塔を目指した。

こんな近くに彼女がいるとは思えないが、上まで登り高所から見渡せばヒントが見つかるかもしれない。

塔の入り口にたどり着いたぼくは、永遠に続くのではと思えるらせん階段をひたすら登り続けた。

最上階の窓からは周囲の様子がよく見える。

どこを見渡しても建物もなければオアシスも無い。

せめて塔から見える地形をメモしたかった。

しかしどこを見ても砂の山が連なる同じような景色に見えるし、おそらく風によって刻々と変化しているだろう。

階段を昇り降りする時間と体力のロスを考えると、ぼくは最初から選択を誤ったのかもしれない。

そう思って階段を降りていると外から轟音が聞こえてきた。

入り口近くまできて、それが猛烈な砂嵐だと気づいた。

ぼくは階段に座り、入り口から吹き込む砂を眺めた。

ぼくは助かったのかもしれない。

あんな砂嵐に巻き込まれれば窒息する可能性がある。

そして彼女が近くにいないことを祈った。

砂嵐が過ぎ去り塔の外へ出ようとしたぼくは、思いついたように再び階段を登って最上階まで戻ってきた。

百メートルはあろうかという塔の頂上まで砂が入りこんでいる。

かなり大きな砂嵐だったようだ。


ぼくは周囲を見渡しながら考えていた。

砂漠エリアが砂だらけなのは当然だが、それだけではゲームを見ている方はつまらないだろう。

この塔のような場所がいくつもあるはずだ。


ぼくは最上階の窓から何かを発見した。

先ほどまで大きな砂の山の一つだった場所は、砂嵐によって砂が飛ばされ巨大な建造物が姿を現したのだ。


ピラミッドだ!!

終(砂漠の再会後編へ続く)

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