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猫さんとわたしの日常Day6. 聞こえた声は


ある週末の早朝、
小さな声で「なーん、なーん」と鳴く猫さんの声が
浅い眠りの中にいるわたしの耳に、かすかに届いた。


目をつむったまま、どうしたのー?と
小さな声で呼びかけてみる。
反応はないけれど、耳を澄ますと
まだ小さい鳴き声が聞こえた。

どうしたのかな…と気になって
重い身体を起こしてリビングへ行くと、
ほんの1時間ほど前に朝ごはんを食べた猫さんは
ふわふわの淡いグレーのブランケットの上で
寝息を立ててぐっすりすやすやと眠っていた。

あれ…?鳴いてない。

「なーん」

まだ聞こえる。

外で猫が鳴いているのかな?

カーテンを開けてベランダへ出てみると、
秋の訪れを感じさせる澄んだ風に乗って
ふわりと聞こえてきたのは、小さい子供が
「はーい」という声だった。

ああ、子供の声だったのか。
寝ぼけていたから聞き間違えたんだな。

赤ちゃんの声や子供の声と、
猫さんの声は時々似ている。

赤ちゃんが泣いていると思ったら
外で猫が喧嘩していたり、
どこかで猫が鳴いていると思ったら
子供の話し声だったりということは
遠くから聞こえる声の場合はとくに、
よくあることなのだけれど。


リビングへと戻ると猫さんはまだ眠っていて、
今度はぐぅ…ぐぅ…とかわいいイビキをかいていた。

猫さんの寝顔を見ていると、再び眠気が襲ってきた。

だめだ寝足りない、もう少し眠ろう…と
猫さんをひと撫でしてベッドに戻り横になると
とんっ、と足元に猫さんの気配。

見るとベッドの上に飛び乗ってきた猫さんが
足元からこちらをじっと見ていた。
どうやら起こしてしまったらしい。

おいで、と声をかけると、
顔の横までゆっくりと歩いてきて、
前足でお布団の端をちょいと触った。
これはお布団の中に入れて、の合図だ。

お布団を少しめくると顔を突っ込んで
中へと入ってきて、わたしの脇の下から
脇腹あたりに"ぴたっ"とくっつき、
肩のあたりにそっと頭を置いて、
そのふわふわの柔らかい体を落ち着ける。

さながら恋人同士の腕枕だ。

しばらくすると
「ぷすー、ぷすー、ぷぅ…ぷぅ…」と、
思わず笑ってしまうようなイビキが聞こえてくる。

笑うと肩が揺れて、乗っている猫さんの
頭を揺らして起こしてしまうので、
笑うのをこらえる。

そうしてわたしは、
小さいようで大きなそのふわふわを片腕に抱え、
とろりと再び夢の中へ戻っていく。


ただの、しあわせなある朝のお話。



今日は、いつもの写真がメインの
「猫さんとわたしの日常」ではなく、
なんてことのない、穏やかなある日の朝を
エッセイとして書いてみました。

先日マガジンの見出し画像として紹介したこの写真、
まだ一度も記事の見出し画像としては
使ったことがなかったことに気づいて
今回この写真を使うことにしました。


それではこの辺で。

今日も1日おつかれさまでした。
最後まで読んでくださってありがとう。

また気が向いたら、来てくださいね。


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