死ぬまで生きねばならないと、だれにも教われなかった。「あめりかむら」石田千
「あめりかむら」石田千
私が2024年の最後に読んだ1冊。
表題作を読み終わったそのとき私は、
2024年の最後に読んだ本がこれでよかったと、静かにそう思った。
裏表紙のあらすじは
「あめりかむら」の主人公みっちゃんは、
大学生活や就職活動の時期に勉強会で出会った
戸田くんに対して嫌悪感や冷めた気持ちがあった。
社会人になってからも関わりは続くものの、
みっちゃんは病に冒され、戸田くんにだけでなく
人そのものに対して冷めてゆき距離を置く。
そんななかで届いた戸田くんの訃報。
その後に知る、自殺という死因。
そしてみっちゃんは自分の心や病、戸田くんの死、
死への恐怖と、旅先の大阪で向き合うことになる。
私とみっちゃんは全然違う。
何もかもが違う。
だけど、選び取ったものは同じだ。
死に恐怖し、「生きること」を選んだ。
それも、この小汚い大阪の街の片隅で、
小さくていい加減な優しさに救われ、
どうしようもない人間臭さに慰められ、
肉を食らい骨をしゃぶる人間たちに、生を見せつけられて、
そうして、生きることを選んだ。
この「あめりかむら」の中にアメリカ村は出てこない。
最後にアメリカ村へみっちゃんが向かおうとする
そのシーンで物語は終わる。
けれど読了後、この「あめりかむら」という
タイトルにじんとくるのは、最後に向かう場所
「あめりかむら」へ、みっちゃんが未来への希望を見出したからだ。
表題作以外に、
「クリ」、「カーネーション」、「夏の温室」、
「大踏切書店のこと」の4つの短編が収録されていて
この中で私のお気に入りは「大踏切書店のこと」だ。
あめりかむらの苦しい気持ちを引きずりながら
そのほかの作品を読み進めているような
そんな気持ちだったのだけれど、
この作品が最後に収録されていることに救われた。
最後にこの話の温かい交流が心に優しいあかりを灯してくれた。
これを読んだ後、なんだか久しぶりに
西加奈子の「通天閣」を再読したくなった。
それではこの辺で。
今日も1日おつかれさまでした。
最後まで読んでくださってありがとう。
また気が向いたら、来てくださいね。