展覧会レポ:京都・両足院で開催中の没入型展示:禅とアートの対話
【約2,000文字、写真17枚】
乗り物のアナウンス〝お忘れ物なきようご注意ください〟を聞いたアーティスト、チャールズ・リンゼイ氏は、逆転の発想から「すべて、忘れてください」という展覧会を構想しました。
2会場で同時開催中の没入型展覧会。この記事では、両足院編をご紹介します。
KURA MONZEN Galleryの展示レポはこちらです
両足院
両足院に行ってきました。京都市東山区にあるこのお寺の広大な境内は、Googleマップのルート案内が使えないため、方向音痴の私は少し苦労しました。
お寺の入口付近には境内案内図がなく、いい汗をかきました。
受付で「チャールズ・リンゼイさんの展示を拝見したいのですが」と尋ねると、〝どうぞ〟と。
「本当にここっすか?」と感じながらも、畳の上を歩くと落ち着きます。すっかり秋の気配が感じられる庭の廊下には、何かが置かれています。ん、ゴミ箱?
透明のプラスチックケース
透明のプラスチックケースの中に、ピンク色の空き缶が捨てられているのを見つけました。ラベルは2020年の東京五輪のもので、中止されたオリンピックが捨てられているように感じます。
廊下の向こうにも何やらプラスチックの箱があり、内部には硬そうな黒いキューブ状のものが! くるくると回っていました。
両足院といえば、Misakiさんの記事で紹介されていた美しい庭園「潮音庭」を連想します。本質的な美しさである「引き算の美学」を感じられる場所だと認識していました。
あのー、これはどういう状況なのでしょうか?
禅とパーキングメーター
紅葉が美しい両足院の庭園を見て、一旦心を落ち着かせます。普段はお庭を拝見するだけでも1000円かかる名庭です。
すっかり秋ですね。右手には紅葉が広がり、左手には外廊下があり、中央には黄色の駐車場精算機、ここまで自動車で来る方がいるんですね。…んなわけないっ!?
両足院の庭園に、なぜパーキングメーターが!?
ここは禅寺ですから、これは禅問答の一環なのでしょうか。パーキングメーターとは、自動車を止めておく場所、時間と空間の番人ということですか。
タイトルには「パーキングメーターは悟りを開いているのか?」とあります。…えっと、どういうことですか??
フライヤーには「AIは感情を持てるか? 感情を持てたならば、意識を持つことができるのか? そして意識を持てたならば、悟りを開けるのか?」という問いが書かれていました。
チャールズ・リンゼイ氏は、NASAに「火星の退役探査機を使って禅庭を作る」という提案もしています。
遠くに建設中のクレーンが見え、自然の中に突然現れた鉄の動きが不思議と調和しているように感じました。静かで、不思議な没頭体験です。
テントに引っ張り込まれる
両足院ですから、和室に設置されたテントを見ても、もう驚きません。慣れてきました。ここまで来たので、テントの中に入ってみることにします。
なんだか落ち着きません。チェーンソーや工事のコーン、奥には玉手箱のようなものが見えます。
この展示は、チャールズ・リンゼイ氏と両足院の禅僧である伊藤東凌氏の対話から生まれたそうです。
箱の中で何かが光りました。覗いてみると…
ひえええ、足が引っ張られる~ 慣れたとかいってすいませ~ん
展覧会というより、まるで異空間に迷い込んだような感覚です。今回は、身も心も迷子にもなりましたが、次第にスッキリしてきました。さすが両足院です。
■information
〈おまけ〉入場者特典のステッカー
両足院から出ますと、看板を見つけました。
正規ルートはこっちだったのですね。かなり遠回りしましたが、それもまた人生です。
入場チケットを買うと、パンフレットとステッカーがもらえます。ステッカーには「スベテ、ワスレテクダサイ」と印字してあります。来年の手帳に貼って、毎日を新鮮な気持ちで迎えたいと思います。
ソース;
¹:フライヤー「PLEASE FORGET (EVERYTHING) / (スベテ)、ワスレテクダサイ 」チャールズ・リンゼイ
²:パンフレット「PLEASE FORGET (EVERYTHING) / (スベテ)、ワスレテクダサイ 」チャールズ・リンゼイ
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