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展覧会レポ;京都嵐山で出会う伊藤若冲:福田美術館で初公開の巻物を体験!

【約2,000文字、写真18枚】

 日本史上最大の奇想絵師、伊藤若冲(じゃくちゅう)。
 この秋、彼の初期から晩年までの優れた作品が一堂に展示された福田美術館。若冲とは一体どんな人物だったのでしょうか。

福田美術館の入口付近

若冲の振り幅

 紅葉の京都、嵐山。混雑する街の裏手に、静かに佇む美術館があります。遠くに賑わう声が響きつつ、川のせせらぎや鳥の鳴き声も聞こえてきそうな場所です。

入口

 ただ、展覧会のタイトルは『京都の嵐山に舞い降りた奇跡!! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!展』となっており、激混みです。開館5周年の記念企画¹のため、力が入っています。

館内の様子

 週末に訪れたこともあり、館内はやや混雑していました。並ぶほどではありませんが、お客さんの程よい熱気が伝わってきます。

 知られている中でも最初期の作品といわれるこの絵。いきなりこのクオリティです。

伊藤若冲《蕪に双鶏図(かぶにそうけいず)》18世紀、紙本着色 軸装

 若冲の絵は「鮮やかな色彩と緻密な描写」で知られています。こちらは研究者の先生から「玄人向き」と評価された作品²です(上記 YouTube 1:47)。

 近くで見てもこの細かさ!
 カブ畑に、つがいのニワトリが描かれています。描かれた年齢から推察すると、30代の初めに仕事をしながら描いたらしいのです。趣味の時間にこれを描けますか?

 ところが、下の絵をご覧ください。こんなニワトリも描いているんですよね。

伊藤若冲《柳に雄鶏図(やなぎにゆうけいず)》18世紀、絹本墨画 軸装

 首の羽を広げたオスのニワトリです。墨の色の変化で羽に違いを与えています。奥はしなやかな柳の葉っぱです。色分けにより奥からの光を感じさせます。
 毛一本も描き分ける力量を持った絵師の幅広い表現が面白いですよね。

伊藤若冲《霊亀図(れいきず)》18世紀、紙本墨画 軸装

 こちらは霊獣を描いた作品。カワイイですよね。カメなのに耳が!
 若冲には写生をもとに対象を細部まで徹底的に描く作品があります。一方で、実際とは異なる点は気にせず、興味のある点を強調する作品も多く存在¹します。

世界初公開!

 ひときわ混雑した展示ケースがあります。

世界初公開!!

 今回の目玉は、70代の若冲が描いたとされる《果蔬図巻(かそずかん)》です。長年ヨーロッパの個人が所蔵し、世界で初めて公開されたこの作品は、約3メートルもある絵巻³です。

伊藤若冲 画、梅荘顕常 跋《果蔬図巻(かそずかん)》1790年以前、絹本着色 巻子装

 若冲は野菜の仲買人をしていたらしく、裕福な暮らしぶりだったようです。
 だからでしょうか、普通の野菜だけでなく、キクダイダイやパッションフルーツにジャックフルーツ、ライチなど今でも珍しい果物も描かれています。

後半部分

 若冲が注目したユーモラスな形状を眺めているだけで、彼の筆運びに没頭してしまいます。
 これぞボットー体験!

曾我蕭白に円山応挙も見せちゃう

 伊藤若冲、曾我蕭白(そがしょうはく)、円山応挙(まるやまおうきょ)はほぼ同時代の人で、三人とも京都で活躍した絵師です。
 曾我蕭白と円山応挙の《虎図》が並んで展示されています。

二枚の《虎図》

 右の蕭白から見ていきましょう。

曾我蕭白《虎図(とらず)》18世紀、紙本墨画 軸装

 蕭白のトラに近づいてみると、ニンマリしてます。こういうオジサンいますよね。

円山応挙《虎図(とらず)》1786年、絹本着色 軸装

 こちらは応挙のトラちゃん。頭をなでなでしたくなります。ネコを参考にしたらしく、こちらは可愛いです。

■information

開館5周年記念 「京都の嵐山に舞い降りた奇跡!!
伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!」
会期:2024年10月12日~2025年1月19日
会場:福田美術館
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
電話番号:075-771-4334
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は16:30まで
休館日:12月3日、12月30日~1月1日
料金:一般・大学 1,500 / 高校生 900 / 小中学生 500
事前予約:不要
所要時間:約60分
混み具合:混んでいるが並ぶほどではない
写真撮影:可能
webサイト:https://fukuda-art-museum.jp/


おすすめ情報

 美術館では有料の音声ガイドをよく見かけますが、福田美術館では無料の音声ガイドを利用できます。

 ※スマートフォンが必要です。
 イヤホンを持参すると便利(ヘッドホンのレンタルや、イヤホンの販売もあります)。操作もシンプルでした。

伊藤若冲《仔犬図(こいぬず)》18世紀、紙本墨画 軸装

 個人的に印象に残ったのは、こちら。若冲のぶさかわワンちゃんだったりします。

ちょっとお茶して…

 美術館の所在地は京都の嵐山。紅葉の季節とあって、外の飲食店には行列ができています。しかし、館内のカフェには空席がありました。

渡月橋をみながらお茶できます

 この立地と景観で空席があるなら、お茶して帰ろうと思ったのですが、やはり並んでいました。

そりゃ並びますよね(ただ空けてたのね。…なんで?)

 外国からのお客さまも多く、(私は地元民なものですから)次回の楽しみとさせてもらいます。

窓からの景色

 ここでのんびり、パンと珈琲なんて、最高だろうなあ。

ソース;
タイトル前の画像:伊藤若冲 《鶏図押絵貼屏風》(右隻) 1797年 福田美術館蔵 [前期展示]
¹:展覧会ステートメント 「京都の嵐山に舞い降りた奇跡!! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!」|第1章より
²:YouTube 福田美術館(福美チャンネル)「辻惟雄先生と新発見の若冲みてみた
」https://www.youtube.com/watch?v=ED2sK1zaoRg&list=LL
³:フライヤー「京都の嵐山に舞い降りた奇跡!! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!」福田美術館


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入江玄 アートライター
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