女の腕と男と男 ガードレールと黒い海
"ねえ。爪やって"
あの女がそういうのは大抵深夜過ぎた頃で、寝ようと思ってたオレは仕方なくゴミを掻き分けて棚からヤスリを探し出す。
女は台所のテーブルの向かい側から、片方しかない腕を白くて長い頸の鳥みたいに突き出して、細い指先を翼のかたちに広げる。
オレはその手を取って、陶器みたいな冷たい指先を親指から順番に、薄い爪の白いところを丁寧に削り落として指先の曲線にぴったりと沿う楕円形に形を整えていく。
親指が終わったら人差し指。人差し指の次は中指。女は真っ黒な瞳で自分の手をずっ