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GWに読んで欲しい 長編小説4選
自粛自粛のGWが流れるように過ぎて行っておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。暇すぎて、ディアゴスティーニを途中から購読したりしてませんか?
思うんですが、ちょうど今が一番だらけるポイントではないでしょうか。29日から始まった人なら5日目、土曜日から休みが始まった人なら3日目。溜まってた家事やら、ちょっとやりたかったことを一旦やり終えて、やることがなくなるのが、このくらいの時期やないかと思うんすよね。
外に出れずにやりたい事も特にない。かといってこのままだらだらしてると、休み明けになんかシャキッとしないんだろうと思うこのくらいの時期。
せっかくだから皆さん、小説でも読んでみませんか。
そんな今日は、GWにおすすめしたい、長編小説をいくつかご紹介していきたいと思います。
1.とんび【重松清】
流星ワゴンなど、家族を題材にした小説を書かれている重松清が書いた、ガチガチの名著、とんびでございます。
この小説は広島県の瀬戸内海側の架空の町を題材に、父親のヤスと息子のアキラの子育て、成長を描いた物語でございます。
とにかくネタばれ無しで一気に読んで欲しいのでこれ以上の説明を避けますけど、本当にこの小説はバケモンみたいな作品なんですよ。ってのも俺は、なんやかんや年間100冊くらいは小説を読んでるんですけど、初めて小説を読んで鼻水流すくらい泣いたのが、このとんびやったんですわ。全米が泣いた系の映画の、50倍感動する名著なんですよね。
この小説って、薄く表現するとただのヒューマンドラマなんですね。不器用なお父さんのヤスが、一人息子のアキラを育てる中で、色々な問題が起きて、それを乗り越えてお互いに成長するみたいな話なわけです。
展開もプロットに起こしたら、特筆したことなんて大してしてません。怒る事件だって、周りの人から言われることだって、大どんでん返しがある訳でもないし、こうして紹介の中で「ここがポイント」と明確に表現できる部分なんて、正直ないんですよ。
そんな数多あるありきたりともいえる設定の小説にも関わらず、ここまで感動させられるのは、本当にこの小説が名著だからの一点しかないんですよ。まぁまぁ本を読んでそう思うんすから、間違いないと思います。この本にはなんか取りついてるんすよ。神がかり的な作品なんですよね。
とにかくこの小説の中身には何も言及したくありません。ただただ読んで感動して欲しい。この感動を共有してほしい。それだけでございます。
騙されたと思って是非この一冊だけは、読んでいただきたいと思います。
2.三島屋変調百物語シリーズ【宮部みゆき】
日本を代表する作家である宮部みゆきさんが、10年ほど前から始めた小説シリーズが、今回ふたつ目に紹介する三島屋変調百物語シリーズでございます。
この小説は時代物でしてね、舞台は江戸時代の三島屋という袋物屋なんですよ。ちなみに袋物屋って言うと、巾着とかを売ってるところで、今でいう雑貨屋に近いところですわね。そこで働くおちかってのが主人公なんですけど、ある日三島屋にお客さんが来るんですよ。
おちかはお客さんの相手をして、話を聞いてたんですけど、そのお客さんがちょっと変わった怪談話をし始めるんですね。その出来事をきっかけに、おちかは色々な人から怪談話を聞くことになって、その怪談話の一つ一つがお話になってるのが、三島屋変調百物語シリーズなんですよ。
ざっくり言うとこういう話なんですけど、三島屋変調百物語シリーズの薦めたいポイントがこの「怪談話を聞く」ってスタイルなんですよ。
お話を語る人に合わせて、小説の中身も進んでいって、この小説のメインは、話している怪談の中身になるんですけど、小説の中の主人公であるおちかも、読んでる自分と同じように、一緒に話を聞いているような感覚にさせられるんですね。読んでるこっちも聞いてるおちかも、同じようにゾッとしたり感動したりしてる感覚になってくるんですよ。
この一緒に話を聞いている感覚ってのが、話の世界にグッと入り込ませてくれて、没入感がすごい作品になってるんですよね。
加えて語り手の話を聞くっていうスタイルもあって、シリーズものにも関わらず、そこまでキャラクターの背景を必要としないんですよね。
シリーズものの小説のジレンマのようなところですけど、話が進むにつれて前作の内容が必要不可欠になってくるやないですか。悪く言うと内輪ノリっぽいものが、どんどんとできてくるやないですか。
もちろん三島屋変調百物語シリーズにも、そういう節はありますし、キャラ立ちもすごいから一話から読んだ方が、話がすっと入るのは間違いありませんよ。
でもこの小説は読めちゃうんですよね。
仮に途中から入ったとしても、その物語はその物語として、全然楽しく読めてしまうと思うんですよ。
シリーズものと聞くと、ちょっと躊躇してしまう気持ちは絶対にあると思います。でもこの小説だけは読んでみて欲しい一冊です。
もちろん1話から読むのをおすすめします。
ですがシリーズの中で一番のおすすめは、「あんじゅう」ですので、そこからでも是非に。
3.姑獲鳥の夏【京極夏彦】
半端ない分厚さの小説と言う事でもおなじみ、京極堂シリーズの一作目姑獲鳥の夏でございます。
京極堂シリーズといえば、魍魎の匣が一番有名ではありますが、俺個人としては、姑獲鳥の夏が一番面白いと思うんですよね。この小説のやりたい事を書いたうえで、圧倒される感じは、この小説ならではやと思うんですわ。
この小説は、20カ月妊娠し続ける妊婦の謎を追うって話でしてね、昭和初期を舞台にした時代物の推理小説なんですよ。
京極堂、榎木津礼次郎などのキャラクターの魅力はもちろんなんですが、この姑獲鳥の夏の面白いところは、まず冒頭の100ページ。小説の中身を読ませる、非常に重要な冒頭100ページをこの小説は、関口と京極堂のおしゃべりに使ってるんですよ。
始め読んだ時「なんやこれ」って思いましたよ。作者が思ってることを、適当に書いてるだけなんやろうな。みたいな、言いたいことを長々書いてるんやろうなって、正直思いました。
ただこのだらけそうな冒頭の100ページが、効いてくるんですよ。主人公の関口と京極堂の人となり、この小説の肝となる考え方なんかが、知らん間に頭に入ってましてね、そこから先の500ページがスッと頭に入ってくるようになるんですよね。
ほんで読み進めた先にある、事件の真相がこれまた面白い。それはもちろん読んでからのお楽しみでございます。
4.サラバ!【西加奈子】
漁港の肉子ちゃんが映画化されるらしいですね。漁港の肉子ちゃんの作者西加奈子さんの代表作と言って良いんでしょうね、サラバでございます。
サラバは何といっても。とにかく長い。
普通の単行本サイズで、上下の2冊構成ですからね。文庫だと「上中下」の三巻あります。もちろん、京極夏彦の塗仏の宴に比べたらマシですけど、あまり本を読む習慣がないと、結構気合を入れないと読み切れない小説ではないかとは思います。
ただこの小説は、それだけ時間をかけても読む価値のある一冊なのは、誰しもが言う事。ってのもこの小説ってエモいんすよね。あっと驚く展開、綺麗な描写、感動するセリフ、キャラのすばらしさ、全部持ってるエモい小説がこのサラバなんですよ。
サラバ!はイランで生まれた主人公の成長物語なんですよ。複雑な家庭環境の中で、周りに気を使って生きる主人公の人生を描いた小説なんですね。
そんな主人公の境遇と考え方。この主人公に感情移入できない人間って、日本にいないと思うんですよ。誰しも人の目を気にして、人の事を自分の中でどこか評価して、優劣・上下を付けて生きてるやないですか。そんな僕たちの、生き方のむなしさや生き方の苦労をわかってくれる小説が、このサラバなんですよね。
現代に生きる人すべてに読んで欲しい小説、それがこのサラバでございます。
GWに達成感と感動を
長期連休が長くなれば長くなるほど、休みの後の憂鬱は強くなると思います。
休み中は面倒で何もしないくせに、終わりが見えてくるとそれまでの自分の行動を後悔して、もっとあれをしていればよかった、時間があればあれが出来たのに等々、手放しに最高だったと言い切るのが難しくなっていくものだと思います。
そんな中で一つの達成感をもたらしてくれるものが、長編小説だと思います。
手軽に達成感を味わえ、それでいて感動でき、最高だったと思わせてくれる手助けをしてくれる存在。みなさんもこの連休中に是非、長編小説を一冊読んでみてはいかがでしょうか。