読書(2023/8/26):解像度を落として高速で読書要約するにはどうするか_2_FIN.読書地図のすすめ
4.4.読んだ本たちのキーワードをまとめて矢印でつないで読書地図にする
(前回の記事の続きです)
今までは要約の準備でした。
ここからが要約の本番です。
何をやるか。
全体的な話としては、
「読んでいる本のキーワードを抽出して、川のような図を作る。これを読書地図とする」
ということです。
やっていることは基本的には計画を立てていた時と変わりません。
ただ、
「このキーワードにはこのキーワードたちを使うんだな」
というのが、読めば書いてあるので、そこは少し楽でしょう。
と、言うのは簡単ですが、具体的にやるにはどうするのか?
どういうことに気を付ければ良いのか?
それを以下に書いていきます。
4.5.1.読書地図には必須単語・頻出単語のみ書く
まず、折角文章ではなく図として把握しようとする以上、見やすい図にした方が良い訳です。
だから、見やすい図のためには、あまりごちゃごちゃとした図にしない方が良い訳です。
4.5.1.1.各種矢印
まず、今回は点と矢印でキーワード同士の関連を描いた読書地図を作ります。
矢印にはいろいろ考えられますが、
「→(持つ)→」(前者の性質を後者の対象が備えている場合)
「→(持たない)→」(前者の性質を後者の対象が備えていない場合)
「→(素材→構成)→」(前者によって後者ができる場合)
「→(原因→結果)→」(時間的経緯として前者が後者を成り立たせた場合)
「→(目的→手段)→」(前者をやるために後者をやる場合。後者をやれば前者に寄与するものの、後者が最初から前者の素材や原因であったとは言えない、という意味合いがある)
「→(普遍→個別)→」(後者が前者の例である場合)
「→(場合→全体)→」(前者の場合を掻き集めるとその全体が後者になる場合)
「→(否定)→」(前者と後者が反対の意味で、前者を先に定義した方が自然である場合)
「→(選言)→」(「または」という意味。どれか一つあれば成り立つ場合)
「→(前提→結論)→」(前者の前提から後者の結論が導き出せる場合。記号論理学で言うところの証明論の発想)
「→(範囲→成立)→」(前者の範囲の中でのみ後者の話が正しい場合。例えば、分数の話は整数では成り立たず有理数でのみ成り立つので、「有理数→(範囲→成立)→分数」という書きぶりになる。記号論理学で言うところの意味論の発想)
その他使いやすいようにいろいろカスタマイズしていくとよいでしょう。
(私もあまり整理できていませんが、上のようなものを使うことでたいてい何とかなっています。
とはいえ、整理、したいですね…)
4.5.1.2.各種点
そして、矢印と矢印の間の点が重要です。
拾った単語を何でも書き込みたくなりますが、きりがなくなり、見づらくなるので、以下のものに絞って下さい。
(命名は私が適当に行ったものです)
4.5.1.2.1.必須単語
読書地図に書いてないと、道具として使えないレベルで困る、必要な単語のことです。
非常に分かりやすい例では、大きい章や小さい節の題名になっている単語とか、また太字や下線部で強調されている単語とかはまず間違いなく必須単語となります。
その他、今の章や節で必要になった単語を、これまでの章や節から拾うことも多々あります。
4.5.1.2.2.頻出単語
説明のためにしょっちゅう出て来る単語のことです。
例を挙げますと、ある種の論理学だと
「十分条件」(文と文同士の「ならば」。これらを使うと二個の文同士の関係が分かる)
「実質含意」(文と文同士の「ならば」。これを使って複雑な一個の文を作ることが多々ある)
「全称」(「すべてのa」)
「等価」(「aとbが等しい」)
「所属」(「aはbの中にある」)
とかを使わないと、要約は到底やってられなくなるはずです。だから、書かない訳にはいきません。
なお、頻出単語は説明のために使われるものなので、基本的には上流にありがちです。(書けば、結果的にそうなる、ということに気付かされるでしょう)
4.5.2.必須単語・頻出単語・番号付き単語の説明文を用意する
また、読書地図とは別に、それぞれ必須単語や頻出単語の説明文を、自分が読み返して分かるように、別ページに簡単に書いておきましょう。
なお、読み返して分からなくなったら意味がないので、読み返して分かりづらく感じたら、その都度必ず分かるように書き直します。
また、数学とかでは特に、作業用に「番号付き単語」というのを設ける必要があったりします。
何かというと、記号で書かれたある作業用の文の右に、括弧書きで番号が書かれていることがあります。これを仮に「番号付き単語」と呼ぶことにします。
この作業用の文を読みながら、どういう意味かを読み取り、
括弧書き番号
どういう意味か(たいてい「~であること」という書き方になります)
使っている必須単語や頻出単語は何か(全て書きます)
これらを説明文として別ページに追記しておきます。
最終的にそれは何らかの必須単語にたどり着くはずですので、読書地図には「使っている必須単語や頻出単語全部」から「たどり着いた必須単語」までに矢印を引くことになります。
なお、読書地図としては必要なく、可読性も下がるので、番号付き単語そのものは読書地図に書き込まない方が良いかも知れません。
(なお、私は当初、分かりやすさのため、番号付き単語も読書地図に書いていました。
が、本当に読書地図が大きくなりすぎるし、分かりやすさはともかく見づらくなりすぎたので、最近はこの節のような手法を取るようになって、今に至ります)
4.6.1.今読む本の章や節が、読書地図のどの辺に位置づけられるかを見据える
読書地図をどんどん成長させて、うまくいけば結合していくつかの(そのうち一つの)大きな図になると、そのうちあるメリットが生じてきます。
今読む本の章や節が、読書地図のどの辺に位置づけられるかが、上手く行けば見えて来るようになるのです。
「この本のこの章や節は、前読んだあの本のあの章や節と一部話題が重複しているが、ここが新たな知見だ。そこを地図に描き足せばいいんだな」
「この本のこの章や節は、完全に重複している。丸ごと省略してよし」
となると、作業はある程度省力化できるようになります。
(個人的にはページ数で言って1~3割程度の飛ばしが発生します。
数百ページあって、一日10~20ページの進捗である場合、その1~3割で工程がざっくり1~2週間くらい早まり、それだけ気が楽になるので、ここはだいぶ有難味のあるメリットです)
逆に、これをせずに、ひたすら愚直に読むと、時間が非常にかかってしまいます。
今回の記事は、「それで人生の時間に間に合わなくなったら困る」ということなので、その趣旨に鑑みれば、この手を使って極力読み飛ばした方がいいですね。
4.6.2.章や節を必要最小限の筋書きに要約して、不要な中間項を極力なくす
さて、既に読書地図があり、その上で今の章や節を実際に要約するとしましょう。
では、その前に、準備しておくべきことがあります。
今の章や節の手軽なまとめをしておくことです。
どういう話から始まり、どんな話が展開され、どんな話で終わるか。
そして、初めの項目と終わりの項目を羅列し、適正に繋げていきます。
何なら「どんな話が展開され」るかという中間項での作業は省略してもいいくらいです。これは番号付き単語と同じ発想です。不要な中間項は極力なくしていきたい訳です。
ただし、別の本で出てきた記憶がある単語は、重要度が高いからこそ、複数の本で扱われている訳です。そのため、これについては必須単語とみなします。書かねばなりません。
4.7.1.読書地図の点Aと点Bを新しい本でつなぐバイパスを描く
うまくいけば、新しい本が、読書地図の2地点の中間にすっぽり入ることがあります。さらにはもっとたくさんの接続地点があるかもしれません。そうしたら、この読書はたいへん意義深いものになります。
「あれとあれ(とさらに他のあれ)が、予想もしない繋がり方をしていた。あそこの知見がここに活きてくる」
というのは、非常に大きな知見をもたらすからです。
これも、簡単な筋書きを書いていきます。
今回はスタート地点とゴール地点は既にあるものを使うので、筋書きはやや書きやすくなっているでしょう。
(出口がどこに繋がるか分からないジャンルをやっていると、不安になるものです。私にとっては計算理論がそうだったのですが、最終的に馴染み深い実数直線にたどり着いた時は「3ヶ月もの労力が無駄にならなくて良かった!!!」と胸を撫で下ろしたものでした)
4.7.2.隠された中間地点がある場合、それについて書いてある本を後で買う
また、しばしば
「今読んでいる本と、既存の読書地図をうまく接続するためには、その中間地点を扱っている何か他の本が必要そうだ」
ということがあります。
そういう時は、そういう本があるかどうか調べて、後で買って、隙間を埋めていくことになります。
これはそのうち「しょっちゅうあること」になります。
もちろん一冊の総花的な本でほぼ網羅的に分かればそれに越したことはないし、教科書とはそういうものなのです。
が、高度に専門的な知識が必要になった場合、本をどんどん買っていくことになるでしょう。
4.8.キーワードXがA・B・Cに場合分けできる場合、「X(A)」・「X(B)」・「X(C)」を設け、最後に「X」に合流させる
この節はテクニカルな話になります。特に数学をされる方には、やや便利かと存じます。
数学では数学的帰納法というテクニックがあります。
これはあるキーワードを定義するときに、全体の定義をいきなりは行わず、「初期の在り方」と、それを加工した「後続の在り方」を定義し、これら全体を「全体の在り方」と見なすものです。
例として自然数があります。「0」にはある定義があり、これにある操作をすると、この操作が「+1」と同じ意味になり、これらの繰り返しで「5」とか「17」とかの何らかの自然数が作れます。
もう少し丁寧にやると、こうなります。
「初期の在り方」を定義する
「初期の在り方」を取り敢えず最初の「通常の在り方」とする
「通常の在り方」に何らかの加工をして「後続の在り方」を定義する。その後のもの(後続の後続、後続の後続の後続等)は基本的には全て「後続の在り方」として扱える
必要であれば「特殊な在り方」の定義もする
「初期の在り方」「通常の在り方」「後続の在り方」「特殊な在り方」を合わせて「全体の在り方」として定義する
(テクニカルな注:帰納という語はいろいろな使われ方をしております。哲学における演繹・帰納のことは、数学的帰納法とは関係ないので、知っている方は「別の話なんだな」と思って下さい)
***
これを読書地図にも反映させたい時がしばしばあります。
そういう時は、
キーワード(初期)
キーワード(通常)
キーワード(後続)
キーワード(例外)
等を作り、最後に
キーワード
に合流させるとうまくいきます。
(実際には「キーワード(初期)」「キーワード(通常)」は「キーワード(後続)」の定義に既に使われているいるので、前者2つは読書地図の上では不要となります)
***
これに限らず一般に、キーワードXが
A
B
C
に場合分けできる場合、
X(A)
X(B)
X(C)
を設け、最後に
X
に合流させる。という手を取るとうまくいきます。
場合があまりにもかけ離れてきて、必要とされる単語もそれぞれで大幅に異なる場合は、場合で分けておいた方が、読み返した時の混乱は少ないでしょう。
5.他にも工夫があるかもしれないが、とりあえずこれでやっていきましょう
こんな風にしていくと、様々な知見が一望できる読書地図が作れることでしょう。
大きくなりすぎるので、要所要所で区切らねばならないはずです。
が、それでもメリットはほぼ減らないどころか、
「ざっくりとどの辺の話をしているのかが分かる」
という有難味があります。
しかもそれはどんどん増えていく。
有難味、ますます大きい。
折角読書をするのです。
ぜひしゃぶり尽くしましょう。
(この記事これでおしまい)