『高校数学のロードマップ』B_5(参考編_積分編)1(確率)1(円周率から確率までのロードマップ)
(※注:「理系に進学したいが数学が苦手な知人の高校生に、数学の良さを教える」というミッションのための草稿を、あらかじめWebに掲載して、ダメなところを指摘してもらおう、という趣旨の記事です)
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〇確率
●「確率とは何か」を丁寧に説明するためには実はいろいろと必要なものがある
★円周率から確率までのロードマップの詳細
・A本編では、大学数学レベルになるような中間生成物を中略していましたが、今から中間生成物を中略しなかった場合の話をします。
ロードマップは
!円周率→(オイラーの等式→フーリエ変換→関数空間→)確率
というものでした。この括弧の中の話をします。(それぞれのキーワードが何を意味しているかは、後で説明します。)
★指数関数と虚数と円周率を組み合わせた不思議なオイラーの等式
・下準備としてのオイラーの公式と、本命としての特殊例であるオイラーの等式の話をします。
・オイラーの公式は、非常に奇妙な式で、4つの高校数学水準のキーワードが、とある関係にある、というミックスサラダみたいな式です。
指数関数、虚数、そして(三角関数である)サインとコサイン。
これらを、高校数学の範囲内の思考回路では「えっそんな演算が許容されるのか!?」というやり方で演算する式を作ります。すると、実は式の左右が等しくなる、というものです。(そういうものだと思ってください。詳しくは説明しません。多分今実物を見ると、想像を絶する演算をしているので、混乱するかもしれません。)
これによって、オイラーの公式が出来ます。
高校数学水準のキーワードである、指数関数と虚数と三角関数で、1つの重要な式が構成できる、ということだけ、頭の片隅に置いておいて下さい。
・オイラーの等式の方は、三角関数2つがなくなり、代わりに円周率が出てきます。(というより、オイラーの公式に円周率を代入することによって、三角関数が消えるような操作をしているため、こうなります。非常に奇妙ですね。詳しくは説明しません。)
つまり、指数関数、虚数、そして円周率によって、オイラーの等式が出来ます。(円周率からのつながりでは、こちらの方に注目した方がいいでしょう。)
高校数学水準のキーワードである、指数関数と虚数と円周率で、1つの重要な式の特殊例が構成できる、ということだけ、頭の片隅に置いておいて下さい。
★波型の関数の単純化に使えるフーリエ変換
・オイラーの等式の応用として、フーリエ変換というものがあります。
関数のグラフの中には、揺れ動きのある、いわば波みたいな形をとるものがあります。(逆に、波は関数のグラフの一種だと考えてもよいでしょう。)
実は、いくつかの基礎的な波に掛け算で強弱をつけて、うまく足し算すると、ありとあらゆる波が描けます。
こうして、基本的な波を、ありとあらゆる波に変換する操作を、フーリエ変換と言います。(もちろん逆に、ありとあらゆる波を、基本的な波に分解することも可能です。)
詳しくは説明しませんが、フーリエ変換の式は、ある式にある加工をして、マイナス無限大から無限大の範囲で積分を取ったものです。
あと、フーリエ変換の式はいろんなキーワードを詰め合わせた、前菜の盛り合わせみたいな式で、積分の他にも、指数関数、円周率、虚数等が出てきます。豪勢ですが、実はこれらはオイラーの等式を部分的に応用したために出て来るものです。(詳しくは面倒なので説明しません。)
★関数が動き回った後の関数空間の特徴を扱う関数解析学
・難しい関数のグラフが動き回った後の空間を見て、そこから分かりやすい性質を調べるジャンルを、関数解析学(かんすうかいせきがく)と呼びます。
関数解析学は関数空間(かんすうくうかん)を扱います。関数空間とは、さっき言った、難しい関数のグラフが動き回った後の軌跡をかき集めた空間のことです。関数空間の特徴を調べることを、関数解析(かんすうかいせき)と呼びます。
関数解析学は、微分や積分を応用するので、解析学の一種とされます。
関数のグラフが動き回った後の関数空間の特徴を調べるというところから、関数解析学のことを、ベクトルが動き回った後のベクトル空間の特徴を調べる、線形代数学のパワーアップ版と見なしてもいいでしょう。
・なお、フーリエ変換等を使うと、関数解析は非常に楽に出来るようになります。フーリエ変換は、一見わけのわからないいろんな関数や関数のグラフを、見る人が見ればすぐに性質が分かるような簡単な関数や関数のグラフの掛け算や足し算に分解したら、演算はかなり楽になるよね、ということで作られた訳です。もちろん関数解析の非常に強力な基礎の一つです。
★確率分布も単純化出来たら嬉しい
・ということで、どんなグニャグニャの関数のグラフでも、関数解析学のやり方を使って、たくさんの簡単な関数のグラフに変換出来ます。
もちろん確率分布もこの方法で分解出来ます。
特に、確率分布は範囲が決まっているので、「範囲の始まりより小さいxではy=0になり、終わりより大きいxでもy=0になる」という性質があります。(例えば、パーセントを使う場合、0%未満で何かが起こったり、100%超えで何かが起こったりすることはないと考えます。)つまり、確率分布は揺れ動きのある波と見なしてしまって構いません。
そうなると、波を計算する、フーリエ変換を使うと便利である、ということです。
・こうして、
!円周率→(オイラーの等式→フーリエ変換→関数空間→)確率
という流れが出来ます。頭の片隅に置いてもらえば結構です。