〈CLASSICAL お茶の間ヴューイング小山実稚恵インタビュー:メモリアルイヤーに登場した小山実稚恵の初のベートーヴェン(伊熊よし子(音楽ジャーナリスト))【2020.8 147】
■この記事は…
2020年8月20日発刊のintoxicate 147〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された小山実稚恵インタビュー記事です。
intoxicate 147
©Hideki Otsuka
メモリアルイヤーに登場した小山実稚恵の初のベートーヴェン
interview&text:伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)
2006年から17年まで『12年間・24回リサイタルシリーズ』を敢行し、高い評価を得た小山実稚恵が19年春から21年秋まで『ベートーヴェン、そして…』という新シリーズを行っている。これはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第28番で幕を開けた。そして初のベートーヴェン・ソナタ・アルバムもソナタ第28番と第29番《ハンマークラヴィーア》という組み合わせである。
「私はチャイコフスキー国際コンクールとショパン国際ピアノ・コンクールを受けたことから、ロシア作品とショパン等のロマン派作品がレパートリーだと思われているようですが、学生時代はドイツ作品をもっとも多く勉強していました。J.S.バッハ、ベートーヴェン、シューベルトは本質的に大好きな作曲家ですし、12年のシリーズでも、ベートーヴェンの最後の4つのソナタ他をもちろんプログラムに入れていました。それがいまようやく、初録音へとつながったわけです」彼女はベートーヴェンのソナタのなかではとりわけ第28番に魅了され、ぜひ録音したかったという。
「冒頭から和声と調性に引き付けられ、終楽章に再び冒頭の主題が登場する部分にも魅了されます。これは大学院の入試のときにも演奏した思い出深い作品。リズム感、歌心などベートーヴェンの多種多様な要素が含まれ、ベートーヴェンの魂が感じられる。演奏していると大いなる幸せを感じますから、初めてのベートーヴェン・アルバムとして録音できたことに感謝しています。一方、《ハンマークラヴィーア》は全ピアノ曲の頂点に位置するといっても過言ではない偉大な作品ですよね。ベートーヴェンの勇気と決意がみなぎり、作曲家本人が“ あと50 年もすれば弾けるようになるだろう” ということばを残したといわれるほど高度な演奏技術と表現力を要求されますが、このソナタを弾けることにも大きな喜びを感じます」
今後ベートーヴェンのソナタに関しては、全ソナタを演奏するのではなく、自分の好きな作品を選んで弾いていきたいと語る。さらに昨秋には非常に貴重な録音も登場した。45回転アナログ・シングル盤のベートーヴェンの《エリーゼのために》である。
「 いまの時代、こういうアルバムもかえって新鮮だと思いました。レコード針から紡ぎ出される音に耳を澄ましたくなるのではないでしょうか」
ベートーヴェン生誕250年のメモリアルイヤーに登場したアルバムは、コンサートが行われず外出自粛の閉塞感が募るなかで、芳醇、高貴、豊かな歌心を発揮し、ベートーヴェンの偉大さを改めて知らしめてくれる。小山実稚恵の作曲家への熱き思いを受け取りたい。
〈CD〉〈高音質〉
『ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第28番&第29番「ハンマークラヴィーア」』
小山実稚恵(p)
[ソニー・ミュージックレーベルズ SICC-19050]SACDハイブリッド
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