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〈CLASSICALお茶の間ヴューイング〉鈴木隆太郎インタヴュー【2020.2 144】

■この記事は…
2020年2月20日発刊のintoxicate 144〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された、ピアニスト・鈴木隆太郎のインタビューです。

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intoxicate 144


鈴木隆太郎a

若き名手の西方見聞録「東風の見たもの」

interview&text:渡辺謙太郎

 その明晰で落ち着いた語り口には、今年30歳とは思えない品格と風格が漂っていた。現在パリを拠点に活躍中。2015年のイル・ド・フランス国際優勝、エミール・ギレリス国際第2位など、数々のコンクールで賞歴を重ねている鈴木隆太郎(p) が、早くも2枚目の録音を発表した。


 収録曲に並ぶのは、ドビュッシー《喜びの島》&《前奏曲第1 集》、イベール《物語》(抜粋)といった近代フランスの名曲の花束。CÐ ジャケットの背景にはパリ8区にあるオリエンタルな建物が写り、タイトルが「東風の見たもの」というのも興味深い。


 「小さな頃からフランス音楽の繊細で洗練された響きに惹かれ、高校卒業後に渡仏。現地生活は10年を超え、夢もフランス語で見るようになりました(笑)。また、ミシェル・ダルベルトやミシェル・ベロフをはじめとした同国を代表する名手からも学んだ、自分の見聞と成果をお伝えしたいなと思って。それで、『前奏曲第1 集』の第7 曲『西風の見たもの』をもじったタイトルにしました」


 ピアノ録音の聖地、スイスのラ・ショー=ド=フォンでセッション収録された充実の当盤。その聴きどころを尋ねると次の答えが。


 「《喜びの島》は、ベロフ先生の1度目の録音に触発されて、いい意味で真逆のファンタジー性を表現できた気がします。今回のメイン《前奏曲第1 集》は、あくまで全12 曲の作品集として解釈。その頂点をなす第10曲『沈める寺』は、後に2曲あることを意識した流れに重きを置きました。《物語》は全10曲の小品集ですが、今回は3曲を抜粋。中でも、第2曲《小さなロバ》は、フランス人の大半が幼少期に習うあまりにも有名な作品だから、現地の評価が楽しみです」


 そしてもう1曲、当盤のラストを飾るのが、フランス作品ではなく邦人作品なのも注目。尾高尚忠《日本組曲》~第1曲《朝に》&第4曲《祭り》だ。


 「初めて知ったのが5 ~ 6年前。ウィーン音楽院への提出用に書いた全4曲のピアノ組曲で、フランスとは関係ないのですが、不思議とドビュッシー風の香りにあふれています。今回は収録時間の関係上、2曲の抜粋ですが、いつか全曲録音にも挑戦してみたいです」


 オフには事前に考えたスケジュールを完璧に遂行する規則正しい生活を心がけたり、気分転換に政治経済の本を読んだりするという話をユーモアも交えながら語ってくれた鈴木。そんな唯一無二の知性と感性を備えた俊才の今を知ることができる充実のアルバムがここに完成した。今後一層の活躍を期待せずにはいられない。


鈴木隆太郎j

『CE QU’A VU LE VENT D’EST(東風の見たもの)』
鈴木隆太郎(p)
[キングインターナショナル HORTUS-177]


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