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〈CLASSICALお茶の間ヴューイング〉上原彩子インタヴュー【2020.2 144】

■この記事は…
2020年2月20日発刊のintoxicate 144〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された、ピアニスト・上原彩子さんのインタビューです。

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intoxicate 144


上原彩子a

名手・上原彩子がロシア以外の作品録音に初挑戦‼

interview&text:渡辺謙太郎(音楽ジャーナリスト)

 「30代になって年齢を重ねたからこそわかったのが、長調の明るさの奥に透けて見える悲しみの美しさと、その瞬間の尊さでした」


 そう語るのは、日本を代表するピアニストで、難関チャイコフスキー国際コンクールにおいて日本人初かつ、同国際初の女性として優勝を飾った上原彩子。この度、得意のロシア作品以外をメインに据えた注目の新譜を発表した。そのメインというのが、西洋音楽史上最大の天才として名高いモーツァルト。収録曲には、《キラキラ星変奏曲》、《K.397の幻想曲》、《ソナタ第11番「トルコ行進曲付」》の3曲が選ばれた。


 「モーツァルトは10歳頃までは弾くのが大好きだったのですが、10~ 20代になると、あれこれ考えすぎて形にならなくなってしまって。その後、約10年前から古楽の権威である有田正弘&千代子先生に師事し、一つひとつのイントネーションにまで及ぶ解釈を教わったこともあって、よくうやく皆様に聴いていただきたいと思えるようになりました」


 過去の録音では攻めを貫いてきた上原だが、今回は歌心や日常の小さく儚い感情の変化を大切にしながら臨んだという。では、ずばりその聴きどころは。


 「『キラキラ星~』は、自分のイメージに近づけるために音質に徹底的にこだわったので、一番苦労しましたね。幻想曲の長調で終わる最後の10小節は、暗鬱で静謐な私のオリジナルに変更してあります。『トルコ~』でも最終楽章で変化をつけたくて、真ん中あたりに“ あるアレンジ” をしてみたのでお楽しみに(笑)」


 この3曲と組み合わせる形で録音したのが、チャイコフスキー《四季》(全曲)だ。


 「こうしたモーツァルトの曲想と一番合うと思って選びました。それに《四季》は、10歳の頃にヤマハのマスタークラスでロシア人の先生に師事した直後に渡された、思い出の作品でもあるんです。《5月》の楽譜で約5 分の小品だったのに、何度もやり直しと言われて3時間くらいのレッスンになってしまって。それで、先生の言葉をすべて楽譜にメモしたら、音符が見えなくなってしまったんです(笑)。全曲に取り組んだのは2013年のリサイタル以来ですが、今回はより自然体で見通しよく弾けたと思います」


 3月25日には、東京オペラシティで当盤の発売記念を兼ねたリサイタルを開催。《キラキラ星~》、《四季》~ 3月《ひばり歌》& 6月《舟歌》などを披露する。


 そして22年がチャイコフスキー国際優勝から20周年にあたることから、今後も快進撃が続いてくとのこと。その際には、今回のように様々な作曲家を組み合わせた新境地の名曲プログラムが期待できそうだ。

上原彩子j

『上原彩子のモーツァルト&チャイコフスキー』
上原彩子(p)
[キングレコード KICC-1501]UHQCD 〈高品質〉


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