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腸活について 109

低下する機能

腸のはたらきには
1、食べ物を消化する
2、栄養素や水分を吸収する
3、不要なものを便として排出する
という働きがあります。
「腸が疲れる」とこれらの機能が低下してしまいます。すると、便秘や下痢、臭いおならが出るといった症状が表れます。
また、腸には免疫細胞の60~70%が存在しているといわれ、腸が弱るとアレルギーの原因になることも・・・
先に述べた「腸が疲れる」とは、いったいどのような状態なのでしょうか?
それは、腸内細菌のうち善玉菌が減ってバランスが崩れ、それが影響して腸の粘膜がきちんと修復されずに荒れた状態のことをいいます。
現代の毎日の生活の中には、腸が疲れる原因があふれています。
まず食事。
善玉菌のエサとなる食物繊維の摂取量が減り、腸内細菌の働きを妨げる添加物の摂取量が増えています。肉類の摂り過ぎも、腸にとってはよくありません。たんぱく質は悪玉菌のエサになるのです。悪玉菌の産生物が臭いおならのもとになっています。
刺激が多く不規則な生活もしかり。
腸内細菌は食物繊維というエサを食べて、体に必要な成分を作り出しています。この働きをするのは夜中。睡眠中、副交感神経が優位になっているときです。なのに現代の生活は、夜でもテレビやネットなどの刺激に囲まれ交感神経優位の時間が長くなっているのだから困ったものです。

「腸の疲労度」をチェックしよう

  • 野菜やキノコ、海藻をあまり食べない

  • 肉をよく食べる

  • インスタントやレトルト食品、出来合いの食品をよく食べる

  • 甘いものが大好き

  • 食事の時間が不規則だ

  • 夜更かしすることが多い

  • 睡眠時間が短い(6時間以下)

  • ほとんど運動しない

  • まじめで、完璧主義である

  • コロナ禍の前から、除菌・抗菌グッズを愛用している

当てはまるものが1~3個の人は、「腸疲労予備軍」
4~6個の人は「やや腸疲労」
7個以上の人は「超腸疲労」
腸の状態を整えるには、上記の項目を一つでも改善するよう心掛けていきたいですね。

腸を回復する3つのポイント

腸の機能を回復するために大切なこと、腸疲労にならないために心掛けたいことをご紹介します。
1,善玉菌のエサ・食物繊維を摂る
まず大切なのは、腸内にいる善玉菌のエサとなる食物繊維を摂ること。ご存じのとおり、腸内には善玉菌と悪玉菌、そして日和見菌がいます。腸疲労にならないためには、善玉菌に元気に働いてもらうことが必要です。
食物繊維にも「水溶性」と「不溶性」の2種類があり、善玉菌がエサにするのは主に水溶性食物繊維。善玉菌は水溶性食物繊維を食べて、短鎖脂肪酸という成分を出します。短鎖脂肪酸とは、酢酸、酪酸、プロピオン酸をまとめた名称です。
これが、
腸の粘膜のエネルギーになる、
腸の蠕動運動を促進する、
免疫機能を高める、
といった働きをするのです。
食事がどのくらい腸の健康に影響しているかを示す、次のような報告があります。
食物繊維が多く低脂肪の食事が主のアフリカ人と、動物性たんぱく質・動物性脂肪の摂取量の多いアフリカ系アメリカ人を比べると、前者のアフリカ人では酪酸産生細菌が多く、後者のアメリカ人では胆汁酸代謝細菌の数が多いということが分かりました。胆汁酸代謝産物の一部には発がん性があることも示唆されています。こうしたことが分かったところで、この2グループの食事を2週間入れ替える実験を行いました。すると、腸内細菌叢とその代謝産物に変化が表れ、がんのリスクを示すバイオマーカーが、アフリカ人で高まり、アメリカ人で減った、という結果になりました。
水溶性食物繊維が多い食品は、大麦などの穀物や、こんにゃく、大豆、らっきょう、ゴボウなどです。
ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌やビフィズス菌も、腸にいい食品です。ヨーグルトの場合、使われている菌がさまざまで、合うものは人によって違います。どんな菌がどのくらいいるのかという腸内細菌の構成が人によって違うため、相性のいい菌、あまりよくない菌があるのです。どれが自分に合っているかを知るには、2週間、その食品を摂ってみて便秘などが改善されたかをみてください。改善した場合は相性のいい菌、そうでなかった場合は相性があまりよくない菌だと判断できます。

2,睡眠をきちんととる
腸内細菌が働くのは、主に夜中、副交感神経が優位になっているとき。睡眠が不十分だと腸内細菌が十分に働けず、腸内の状態が乱れてしまいます。
腸では、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質も作られています。セロトニンは精神の安定に関わっているもので、“幸せホルモン”と呼ばれることもあり、ドーパミンは“やる気ホルモン”ともいわれます。腸が健康でないと、これらのホルモンが作られなくなり、気持ちが落ち込んだりイライラしたりすることにつながるリスクがあります。また、セロトニンは“睡眠ホルモン”の原料となるもので、これが足りないと睡眠が乱れたりするという悪循環に陥りかねません。

3,運動で腸を刺激する
運動も効果的です。
ストレスをためない、
おなかを温める、
ことも心掛けたいですね。

大腸の働き

腸は大きく分けて小腸と大腸があります。
胃、十二指腸から続く小腸は「空腸」「回腸」からなり、栄養素の吸収が主な働きです。長さは約6mあります。小腸で吸収された食べ物の残りかすや吸収されなかった食物繊維は大腸に送られます。

小腸は我々の生命に重要な臓器のため、免疫が発達しており、他の臓器に比べて病気が少ないのです。小腸と大腸の境界に盲腸があります。

大腸は「上行結腸」「横行結腸」「下行結腸」「S状結腸」「直腸」からなり長さは約1.5m前後。上行結腸では内容物は水様ですが、徐々に水分が吸収され横行結腸終末部から下行結腸では粥状に、S状結腸で初めて便の形状になりためられます。そして、食事等の胃結腸反射などにより直腸に下り、大脳から排泄指令が出て、肛門括約筋の働きにより排便されます。

便が形成されるS状結腸・直腸で大腸がんの発症頻度が高いのは、特に便が形成されるこの部位に腸内細菌の数が多く、腐敗菌による有害物質の発生が多いからと考えられています。

指紋のように一人一人異なる腸内環境ですが、健康長寿をもたらす腸にするのか、病気を引き起こす腸にするのかは自分次第。
自分の食べるものが腸内環境をつくることを意識して健康長寿を実現する腸を育てましょう。             

おならや便の臭いが気になったことありますか?
その臭い、大腸の劣化を示すシグナルかもしれません。
おならや便はなぜくさくなるのか、なにが問題なのか、

臭いが示す腸内環境の悪化

もともとおならの成分は、その大半が食事中に一緒にのみ込んだ空気です。残りも大腸内の細菌が食べ物かすを分解してだす水素やメタンなど、無臭のガスで、おならは普通、あまり臭いがしません。

それがなぜくさくなるのか?
原因は、スカトールやインドールなど腸内でつくられた臭い物質。
それをつくり出しているのが腐敗菌の「ウェルシュ菌」など、いわゆる悪玉菌に分類された腸内細菌です。

ウェルシュ菌は、普段から腸内にいますがあまり活発ではないのです。しかし、いったん腸内での勢力が増すと臭い物質をどんどん作りだすようになる。つまり、おならや便がくさくなるのは、腸内細菌の勢力図が変化し、悪玉菌が優勢になったからといえます。

肉食化で悪玉菌が優勢に

悪玉菌は、どんな場合に優勢になりますか?!

もともと大腸にすむ腸内細菌の多くは、消化されずに大腸まできた食べ物の残りかすや食物繊維をエサにしています。一方、ウェルシュ菌など腐敗臭をだす細菌の好物は、たんぱく質や動物性の脂など。

こうしたたんぱく質や脂は、あまり大腸までやってきません。なぜならば胃や小腸で分解され、消化、吸収されてしまうためです。しかし、食事が肉食中心になり、たんぱく質や脂肪の摂取が過剰になると、消化、吸収しきれなかった残りかすが大腸に届きます。それがウェルシュ菌などのエサとなり、腸内環境を悪玉菌優勢にしていくのです。

食物繊維をエサにする細菌と、たんぱく質などが好物の細菌の大きな違いはなんですか?!

発酵と腐敗の違いでしょうか。
みそやしょうゆやお酒など発酵食品は、私たちにとって有益な栄養素などが含まれいい匂いがします。それと同様、食物繊維をエサにする善玉菌は、発酵で私たちの体に役立つ物質、短鎖脂肪酸をつくりだし、大腸や体の調子を整えてくれます。
たとえば離乳期前の赤ちゃんの腸内細菌は、そのほとんどが善玉菌の代表といわれるビフィズス菌です。赤ちゃんの便がほとんど無臭で、むしろちょっと甘酸っぱいいい匂いがするのはそのためです。

一方、腐敗とは文字どおりものを腐らせたり、人間にとって有害な毒素をだしたりすること。実際、ウェルシュ菌は、食肉など食品の中でも繁殖し食中毒をおこす原因になっています。悪玉菌が優勢な腸内環境は、大腸の劣化を招き、健康をそこなう可能性が高まるのです。

糖質制限ダイエットの落とし穴

肉食が中心の食事の場合、もうひとつ気がかりなのは肉そのものには食物繊維がほとんど入っていないということ。
意識して食物繊維をとらないと、悪玉細菌のエサを増やすだけでなく善玉菌のエサを減らしてしまうことになります。腸内環境悪化につながるし、食物繊維が減ることで慢性的な便秘体質になるかもしれません。

糖質制限ダイエットも注意が必要です。

摂取するカロリーを抑えようと糖質をとらないようにすると炭水化物全体を控えることになりがち。しかし炭水化物は糖質だけでできているわけではない。糖質と食物繊維の総称が炭水化物。つまり「炭水化物=糖質+食物繊維」。炭水化物の安易な制限は、肉食化同様、食物繊維不足を招くことを忘れてはいけません。

腸にやさしい。大腸を活発に。今は空前の「腸活」がブーム。
しかし、腸活ってそもそも何が目標なのでしょう。
どうなれば成功といえるのか。

大腸本来の機能を取り戻そう

・便秘をしない
・おならや便がくさくない
・おなかが張ってしまわない
そのためには、あるべき腸内環境を整えることが必要で、それが結果として全身の健康状態の向上や体質の改善にもつながります。

望ましい腸内環境とは。。。
腸内細菌の多様性が維持され、勢力バランスが崩れていないこと。
もともと大腸には、ビフィズス菌のように「善玉菌」といわれるものから、腐敗菌のウェルシュ菌のような「悪玉菌」まで、様々な細菌が生息しています。具体的な菌種は一人ひとりで異なりますが、ひとりのおなかのなかに、約1千種、数十兆~100兆個の細菌がいるといわれています。
最近は、極端なバランスの崩れがなければ、悪玉菌も含めより多くの細菌がいるほうが望ましいといわれています。研究が進むにつれ、悪玉菌とされた菌が役に立つ場合があったり、善玉菌と思われた菌が身体に良いの? と疑問視されたり、病気のひとの腸内フローラが、健康な人に比べ菌種が少ないと指摘されたりしているためです。腸内細菌も多様性が大切というわけです。

「短鎖脂肪酸」の多面的な働き

もうひとつ、注目を集めているのは「短鎖脂肪酸」。
酢酸、酪酸、プロピオン酸などの総称で、細菌が食物繊維を発酵させる過程で産出します。たとえばビフィズス菌は、酢酸を作り出します。
それがなぜ、注目されるのですか?
この物質が、体内で様々な働きをすることがわかってきたためです。たとえば大腸が蠕動運動をするときのエネルギー源になります。大腸の動きが活発になり、便秘を予防したり、腸管が水分やミネラルを吸収する働きを高めたりします。
大腸の免疫力を高め、病原菌からからだを守る働きもしています。大腸の腸管はムチンという粘液で保護されていて、病原菌や毒素の侵入を防いでいますが、短鎖脂肪酸はこの粘液をつくるのにかかわっています。
また、食べすぎや運動不足で余ったエネルギーが脂肪細胞に蓄積されるのを抑える働きもしていました。肥満を防ぎ、糖尿病など生活習慣病の予防につながるとみられています。

お酢を飲んだら、大部分は胃酸や胆汁・消化酵素の影響で酢酸の形では吸収しません。腸内細菌が食物繊維を発酵させ、酢酸など短鎖脂肪酸をつくり、その形のまま吸収されて全身に運ばれるので意味があるのです。人間と細菌との絶妙な共存関係です。

「大腸劣化」を食い止める

短鎖脂肪酸にしろ腸内フローラにしろ、その役割、大腸が果たしている機能が詳しくわかってきたのはこの10年ほどのことです。それこそ日進月歩で新しい腸内細菌の検査法の発見がつづいていて、大腸の果たす役割は再認識されてきています。それが近年の腸活ブームにもつながっています。
一方で、日本人の大腸は劣化が進んでいるのではないかと心配しています。たとえば善玉菌のビフィズス菌は、年をとると腸内で減少していくことが知られています。高齢化が進めば、日本人全体でみた場合、その腸内環境はおのずと悪化することになる。
さらに食の欧米化などが進んだことで、肉食が多くなり、穀物からの食物繊維の摂取が少なくなっています。腸内環境を整えるには、こうしたことを念頭におきながら、なにをどう食べたらいいのか考えていくことが大切。

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