血は流れていなかった。
共同キッチンの隅。「配給品」と書きなぐられた、底の見え始めた段ボールから銀色のパウチに入ったゼリー飲料を取り出した。
カチリ。蓋を回し口に咥え、袋を軽く押せば、何とも言えない独特の味が口の中に広がる。もはや慣れた味だ。しかし何度飲もうとこれを美味しく感じることはない。眉間に力が入っていくのを感じた。
そもそもこれは嗜好品として作られたわけではないのだ——そう考えて精神を落ち着かせる。いかに安価で効率的にエネルギーを補給するか。それの研究により生み出された科学の結晶の一つだ