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真珠



その火に触れた指先から化けていく花びらが
回りながら胸元で開く、
祈りのように結んだ
この両手に気づくことなく、
強く
信じて過ぎて行く光が
こぼしている
その形を覚えて、ほどけなくなる、
触れても崩れない瞬間を
思い出す涙が、日々の哀しみに食い込んで光る
美しい犬歯を真似ていた歪な
感情の手触り、雨の切れ間に
裂くような
光の外で乱反射する角度を
撫でていた指の背で、倒した
グラスから、過去へ
投げ出されていく気泡、
満ちていく虚空を消えながら
祝っている、留まろうとする光から放たれて、
惜しみなく 生まれて来た寂しさが燃えている
この日に
焚べる
 
あなたの言うことが
乱れてゆっくり狂いはじめるときにも
乱されることなく咲かせると決めて、何度でも
差し出す
最後の薔薇をもう一本 束ねる






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