アモーレに捧げるジェノヴェーゼ
「バジルがいい!」
ホームセンターで、カラフルにずらりと並ぶ野菜と果物の種をまじまじと見つめ、小2三女が選んだ種はなんと「バジル」だった。
そのセレクト、渋すぎんか……。
昨年、娘のリクエストでトマト、キュウリ、メロン、イチゴなど初めての家庭菜園に挑戦した。野菜は成功したけど、メロンは猛暑で殲滅。イチゴに至っては発芽さえもしなかった。
そのリベンジに燃えていた娘が選んだ種がなぜにバジル?
「バジルパスタが食べたいの」
……君がそんなオシャンティなもん食べてるとこ、見たことないで。聞いてみると、レトルトで食べたバジルパスタがとても美味しかったようだ。
バジルソースなんか作ったことないけど、果物より収穫後の楽しみがありそうだし、何よりオシャンティ。迷わずバジルの種を買った。
光作
暖かくなった5月。昨年から娘と約束していた畑作りを始めた。ガラ袋10杯分の土を一緒に掘り返し(ワイ9杯:娘1杯ぐらい)家庭菜園用の土に入れ替える。
土を馴染ませて一週間後に種を撒く。鮮やかな葉っぱの写真が印象的なパッケージからこぼれ落ちそうなスイートバジルの種。
忠実に第二関節までの穴を、いい感じの株間でテキパキ作っていく娘。何粒かの種をまとめて、ぽろぽろと撒き、水をかける。
太陽に照らされた真剣な横顔と、少し大きくなった娘の手を見て、一緒に過ごす時間の尊さを噛みしめる。
それから毎日畑とにらめっこすること2週間。
ようやくバジルがニョキニョキと芽を出した。
「やっと出たぁ!」
バジルの成長を奥さんや娘と喜んだのも束の間。
悲劇を我が家が襲った。
re・start
芽が出て数日後の朝、奥さんからLINEが来た。
それはまるで怪盗ルパンに盗られた宝石のように跡形もなく、すべて姿を消していた。
虫だとこんな一気食いはなそうだし、最近よく家の周りを飛んでいたヒヨドリかもしれない。
それを聞いた娘は、庭に走っていき、それはもう怒り、泣き散らかしたしたそうだ。
こんなアクシデントで娘の夢を壊すわけにはいくまい。種はまだたくさんある。盗難被害にあわないよう、次は鉢植えで栽培してみることにした。
「次、食べたら許さないんだからね」まだプンプンしている娘。もし次なくなったら、美味しいレトルトのバジルソースを買ってあげようと思う。
そんな心配も杞憂に終わり、鉢植えでも1週間ほどで子バジルが芽を出した。夜間、家の中に入れたこともあり、今回は順調に成長してくれた。
こんな感じで、ちょうど我が家がバジル栽培に熱を入れていた頃、姉夫婦とビデオ通話をする機会があった。
「今、娘と一緒にバジルパスタを食べるために、家庭菜園でバジル育てるんだよね」
なんて話していたら、バジルパスタなら俺に言わんかい。とドヤ顔の義兄さん。そう、義兄さんはイタリア人。しかもジェノバ出身である事を忘れていた。
ジェノヴェーゼ兄貴
バジルパスタに関しては、自家栽培しているバジルから作るほど、味にはうるさいそうで、作り方まで丁寧に教えてくれた。
バジルパスタ(ジェノヴェーゼ)を作ることになって、姉がカメラを回し始めたら、ノリノリで協力してくれたそうだ。
🍴 ジェノヴェーゼの歴史
🍴 食べごろのバジルの選び方
🍴 バジルペーストの作り方、保存方法
🍴 ジェノヴェーゼの作り方
丁寧に解説付きで、3分ぐらいの動画にまとめてくれている。手さばきもプロのそれのよう。
歴史を語る兄貴。カッコ良すぎるやん。
動画のお礼を伝えて、
「僕でも美味しいジェノヴェーゼ作れるかな?」
と聞くと
「それは無理だよ。ジェノバのバジルじゃないとこの味は再現できないよ」
なんでやーねーーん!!
こういう正直なところが、兄貴の好きなところでもある。
あとはバジルの成長を待つだけとなった。
jamboree バジルペースト
バジルは小ぶりのものが風味豊かで美味しいらしい。兄貴に写真を送ると⭕️印が返ってきた。やっとの収穫に娘の口元も緩む。
葉っぱの根元から茎と切り離し、できるだけ小さいバジルを丁寧に摘んでいく。
摘み取ったバジルは水で洗い、綺麗な布巾に包んだら、湘南の風をイメージしながらビュンビュンと布巾を振り回し、水分を飛ばす。
ah ~真夏のjamboree 🎵アモーレに水をかけまくって愛を深めよう。これには娘も大喜び。ここが一番大切なポイントだ。
松の実が一番いいそうだが、近所のスーパーになかったのでクルミ40g・ニンニク・オリーブオイル・小さじ1杯の塩を入れてミキサーでも、真夏のjamboree~🎵
ニンニクはひとかけ全部いれると、香りがキツくなるのでお好みでどうぞ。そこに湘南の風で乾燥させたバジルを入れ、オリーブオイルを5回まわし入れ、灼熱のjamboree 🎵もうええか。
娘と味見。うまっ何これ!
この時点でもう勝利を確信。
保存する場合は、密閉容器にオリーブオイルで蓋をして冷蔵庫へ入れるといいそうだ。
食べ盛りの5人の子どもたちと家族7人分。
こりゃ足りんかな…。
本場のジェノヴェーゼ
ここからは兄とのLive中継でいこう。
バジルペーストをパスタ用にさらにアレンジ。適量の牛乳と削ったパルミジャーノチーズ大さじ2杯を入れて混ぜ混ぜ。
茹であがったパスタにバジルソースをかけて素早くまぜまぜ。
パスタも近所に置いてなかったので、生パスタのフェットチーネに、最近ハマっているローストした豚野郎をのせ、追いチーズをして完成!
夏休みの豪華ランチに長女・長男も大喜び。
さぁ喰らえよ、アモーレ。
バジルの香りすごっ!
レトルトより全然美味しい!
しかし肝心の三女の顔が曇っている……。
どうした?
「つぶつぶのチーズがいらん。。」
そ、そこかぁ…。
思わず膝から崩れ落ちそうになった。
アモーレに捧げるジェノヴェーゼ
昼の反省を活かし、夜もジェノヴェーゼ作り。
チーズを少し控えめにしてみる。
これには三女も「美味しい!」と太鼓判。
本格的で旨っ!
バジル少なっ!
お昼いなかった奥さん、次女と1歳次男もモグモグ食べてくれた。姉と兄貴にも感謝を伝える。
「豚野郎のアレンジは驚きでしかなかったけど、めっちゃ旨そう」
兄貴もイタリアから健闘を讃えてくれた。
最後に娘に聞いてみた。
「レトルトとどっちが美味しかった?」
「……どっちも……」
ハニカミ笑いを浮かべる娘。
その直後、1歳次男が、口に溜め込んでいたパスタをブゥェェェーーと全て吐き出し、家に悲鳴がこだました。
子どもは正直でよろしい。
私たちの2か月間のチャレンジはこうして幕を閉じた。
次こそは、わんさかバジルを収穫して、アモーレに美味しいジェノヴェーゼを捧げたい(レトルトに勝ちたい)
また子バジルが芽を出した。
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