梶間和歌〈「堀河百首」題に挑む〉
「堀河百首」。
その後の組題定数歌の規範として尊重された平安時代末期の和歌の企画なので、ご存じの方もいるかと思う。
その百首で扱われた百題についてきちんとした題詠をする、という試みを今年の4月に始めた。
ありのまま、各人の自由、個性やみずみずしい感性……といったあやふやなものを重視する現代短歌には違和感、不信感が拭えない。
たとえ新古今や京極派のような新風に惹かれようとも、私の志すのはあくまで和歌である。
その題が歴史的にどのように詠まれてきたか、「堀河百首」においてはどのように詠まれているか、
といったものを「堀河百首」での各16詠やその他先行詠に学び、トレースする、というやり方でこの題詠に取り組んでいる。
退屈すぎるくらいお行儀のよい、型どおりの詠み方ができてこそ、新古今や京極派のような新風の試みにも意味がある、というものだ。
トレースするといってもあくまで現在の私の解像度でのトレース、数年後には
「おいおい、トレースしたつもりでこの程度かよ」
と自身に苦笑されるだろうことも承知のうえ。
現在できる最大限を試みなければ、その先の成長も、据えるべき目標も見えてきようがない。
これに、まずはひとりで取り組み始めたのだが、数ヶ月したところで「ひとりではペースが心もとない」と判断、
自分への良い意味での強制力を働かすため、運営するFacebookグループで仲間を募ることにした。
「和歌はもちろん、短歌の方でもどうぞ」と呼び掛けたところ、短歌を始めて1、2年だろうか、歴の浅い方がすぐに手を挙げてくださり、
私が遅々と進めているあいだ、なんと100題詠み切ることを達成してしまった。
もちろんその出来は、和歌でなく現代短歌として見た場合でも難しい部分があるが、
その意欲や行動力に大変感銘を受けたものだ。
ともに挑戦する仲間を募った割に私の進みは速まらないのだが、
それでも、慣れない題について先行例を学びそれに倣ったり、詠み慣れていたつもりの題を改めて学び直したり、
ととても良い機会になっている。
まだまだ拙いものだが、グループ内でのみ公開している挑戦作の一部をこちらでもご紹介したい。
子日
いつしかと初音をまつと引かれける野べにかひなき春にこそあれ
早蕨
まだ焼かぬ野べに萌え出づるさわらびをかたみに摘まむ雪とくる比
喚子鳥
散りやらぬ花の山路の夕暮れにとまれと春を喚子鳥かな
苗代
賤のをが打ち返すを田の苗代に引く水ぬるむ春の夕暮れ
更衣
今朝かふる花の袂に立つ風にひとへに夏ぞ見ゆべかりける
この堀河百首チャレンジをしなければまず取り組むことのなかっただろう題から5首選んでみたが、いかがだろうか。
ご興味をお持ちくださった方とは、Facebookグループのほうでもご一緒できたらと思う。
チャレンジへのご参加はもちろん、読み専としてのご参加も随時歓迎している。
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三鷹古典サロン裕泉堂で毎月開催される「古典を読む会」の動画・資料を配信(2021年11月~2022年12月分、14回分)。また、「講座の内…
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